2021年になってから、遅ればせながら気づいたことがあります。
この数年でヨーロッパ・アメリカ・中国などの大国が二酸化炭素排出をおさえるために、にわかに脱石油や脱石炭を進めようとしていますが、それが長期的に原油価格を押し上げる可能性があると言うことです。
「世の中が脱石油に舵を切るなら、石油の需要が減って原油価格は下落するのかな」と以前の私は思っていましたが、今では反対に原油価格が上昇する可能性もあると思っています。
もしもこの読みが正しく、これから10年や20年で原油価格が上昇するなら、長期的には原油などのコモディティ(商品)や関連する企業の株を買っておけば良いことになります。
この記事のポイント
- 二酸化炭素の排出削減のために石油や石炭の消費量を減らしても、一部で根強い石油の消費が残り続ける。
- この現象はタバコにも似ている。消費量は減っても完全には無くならず、一部で根強い需要が残り続けた。
- このような状況でタバコは毎年のように値上げができた。石油も長期的に同じことが起こる可能性がある。
石油・石炭への根強い需要
この数年でやたらと「SDGs」「ESG」「脱炭素」という単語を聞くようになりました。
前から関心が高かったヨーロッパはまだしも、かつては消極的だったアメリカや中国も加わって、(少なくとも現時点では)世界的な流れになっているのを感じます。
「もしも二酸化炭素の削減のために石油の消費量が抑えられるなら、需要が減る原油価格は下落するのかな」と思っていましたが、そうとも言えません。
消費量は減るかも知れませんが、石油が多少高くなっても買いたいという根強い需要があると思うからです。
再生可能エネルギーはコストが高かったり、安定した大規模な発電が難しかったりするので、2021年の世界経済はどうしてもまだ石油・石炭に頼らないといけない構造になっています。
最近では、石炭の燃料にした火力発電の使用を制限した中国が深刻な電力不足に陥る出来事がありました。これはまだ石炭などの化石燃料を必要としている証拠です。
>>中国電力不足問題に関する考察(三井住友DSアセットマネジメント)
大手石油会社は石油の増産に消極的
また、大手石油会社は政府や世の中の脱炭素への関心の高まりを気にして、再生可能エネルギーへの取り組みを進める一方で、石油の増産には積極的に動きづらいように見えます。
世界の経済は安価な石油・石炭のエネルギーがまだ必要で需要があるのに、石油会社は増産に踏み切れないので供給は増やしづらいです。
この需要と供給の動きを考えると、世の中が脱石油や脱石炭に向かうほど、原油や石炭の価格が上昇する可能性があります。
原油をめぐる状況はタバコに似ている
「そうは言っても、長期的な脱炭素の動きが続けば石油の消費は減り、原油価格は下がるのでは?」という考えもあると思います。
ただし、少し世の中を見回してみると、消費が減っても価格が順調に上がり続けているものが身近に存在します。
タバコです。
アメリカではもう50年近くも喫煙率は下がり続けて、消費は減っています。(当然、生産量も減っています)
しかし、タバコには多少高くても買いたい一部の根強い需要があったので、タバコ会社は消費が減る中でも売上を確保するために値上げをし、価格は長年上昇を続けました。
つぎのグラフは1965年からのアメリカの物価の推移を図にしたものですが、タバコの価格の上昇は、アメリカの物価の上昇を大きく上回っています。
タバコのような長期的な価格の上昇が、原油や石炭でも起こるかも知れないと私は考えています。
脱炭素で石油の消費量が減るなら、石油会社は産油国は売上を維持するために減産して原油価格を高くしようとするはずです。
そして先ほど中国の停電の例でも見たように、世界の経済はまだま油による安価なエネルギーを必要としているので、多少高くなっても原油を買うだろうと思っています。
この動きは1年や2年とかではなく、上のタバコのように少なくとも数十年かけて進み、長期的に見てみると他の物価よりもずっと高い伸びを見せる気がします。