3月のアメリカの金融政策を決める会議FOMCが終りました。
今回は「利上げは行われるか」、「量的引き締めの政策に変更はあるのか」、「経済見通しに変更はあるのか」など注目点が目白押しだったはずなのですが、終わってみたらどれも無難な結果にまとまっています。
ほとんどの決定は市場の予想通りか、変更なしでした。
投資家としてはどう動くのが良いのかわかりにくいところですが、FRBも市場も残された利上げは1回あるかないかで利上げが最終段階に来ているという点では一致しているようです。
この記事のポイント
- 政策金利は予想通り0.25%引き上げられた。パウエル議長は年内利下げを否定したが、市場は相変わらず利下げを予想。
- 量的引き締めは継続。変更については議論もされなかった。
- 2023年の経済見通しも大きく変わらなかった。失業率は2023年に悪化が始まると予想しており、景気後退が起こることを示している。
政策金利について
銀行業界で緊張が強まってからは、ゴールドマン・サックスなどの一部の人たちは「3月は利上げをしないのでは」と予想していました。
>>今月の米利上げ予想せず、銀行セクターストレスで=ゴールドマン(ロイター)
万が一にも利上げがない可能性もあるかと注目を集めた今回のFOMCでしたが、結果は市場の予想取り0.25%の利上げで無難な内容にまとまっています。
結果を見て「何だ、つまらない」と思った投資家もいたはずです。私も利上げ停止を期待していたわけではありませんが、代わり映えのない結果に少しがっかりしました。
まもなく利上げ停止
でも、今回のFOMCで着実に1歩進みました。そのおかげで利上げ停止は早ければ次回FOMCの5月か、その次の6月にも起こると見られています。
市場の投資家は次回FOMCで利上げが起こる確率は50%、利上げが起こらない確率も50%とちょうど半々で意見が割れています(下図)。ただ、どちらにせよ、利上げは多くてあと残り1回というところまで来ました。
過去の利上げが止まった局面では長期金利は下がり(国債の価格が上がり)、景気後退が迫っていないなら株も上昇する動きが見られたので、利上げ停止で投資家が一息つける時期は近づいているかも知れません。
>>【詳細記事】利上げ停止による金利と株価への影響について(2022年10月24日)
利下げについて
利上げが停止した後の注目は「いつ利下げが始まるか」です。
FRBのパウエル議長は「年内の利下げはない」と言っていますが、私は数ヶ月も待たずに2023年のうちに利下げが始まると思います。
下のグラフは市場の投資家の政策金利予想ですが、7月に利下げが始まったら毎回のように次々と利下げが起こると予想されています。
今までFRBは市場の投資家の予想通りに金利を動かしてきたので、このままなら2023年7月にも利下げが始まるはずです。
これから起こる経済の減速の影響を受けず、利上げ停止や利下げで恩恵を受けられる米国債やゴールドを保有するには、既に良い時期が来たと思っています。
その他
長くなってしまったので、今回のFOMCで他に気になったことを2点ほどさらっと触れておきます。
- 量的引き締め(FRBのバランスシートの縮小)は継続される
- 2023年の経済見通しは大きな変更なし。
3月半ばから銀行救済のために、FRBは銀行への貸出しを大きく増やしてドルをバラまいているという話をしました。
量的引き締めでドルを吸い取りながら、銀行への貸出してドルをバラまいているようにも見えるので、量的引き締めもそろそろ停止される議論が出てくるのかと思いました(下記事参照)。
しかし、今回のFOMCでは量的引き締めをやめる議論は何もなかったようです。
また、今回はFOMC参加メンバーによる経済見通しが発表されましたが、2023年はほとんど何も変わらず、2024年はGDP成長率を引き下げただけでした。
2024年のGDP見通しを引き下げたのは、恐らく最近の銀行不安で企業への貸し出しが減って、経済成長が減速するためでしょう。
また、2023年の見通しに目立った変更点はありませんでしたが、相変わらず失業率が12月までに4.5%に上がるという予想しています。
なお、1年以内に失業率が0.5%上がれば、たいていは景気後退です(詳細記事)。2023年1月の失業率は3.4%だったので、FRBの予想通りに2023年末までに失業率が4.5%に上がればアメリカは景気後退ということになります。
FOMCメンバーは口では景気後退になるとは決して言いませんが、相変わらず2023年内の景気後退を予想しているように見えます。