投資を続けていくと金銭感覚が変わったり、現金の価値が変わったり、不思議な感覚になることがあります。
この記事では、投資をはじめてから、投資スタイルとともに私の現金の価値観がどのように変わっていったかを書いていきます。
あらゆる投資家がここで書いているような現金の価値観の代わり方をするわけではなりませんが、「あ〜これはわかる」というポイントがきっとあると思います。
この記事のポイント
- 投資を始めたときには、手元の現金(預金)の額が全てだった。投資は売買で現金を増やすことが目的で、短期売買が中心だった。
- 安定してリターンを得るために長期投資に移行して運用資金が大きくなると、「生活資金」と「運用資産」で金銭感覚がズレはじめた。
- 運用がうまくいって現金のほとんどを投資するようになると、現金は買い物・納税・割り勘のためだけの決済手段になった。
- 株が大きく下落する局面を経験すると、現金はリターンがゼロで確定している資産だと思うようになった。それ以上資産が減らないことに価値があり、株の下落局面で資産を守る働きをする。
はじめは現金が全てだった
投資を始めたときには、手元の現金や預金の額が多くなることが何よりも重要だと思っていました。
そもそも投資の目的は「安いときに買い、高くなったら売り、結果的に現金を増やすこと」だと思っていたので、この時代は比較的短い期間でトレードをするような投資をしていました。
安値で買うことがこの時代の作戦のポイントなので、チャートの形はかなり重要でした。当時は真剣にやっていましたが、「勢いよく上がっているものを買って、そのまま上昇するのを祈る」か「下がっているものを買って、価格が戻るのを祈る」程度のことをやっていた気がします。
いくらが適正な価格なのか、今買えば上昇が期待できるかを考える投資とは無縁でした。
また、この時代は現金にこそ価値があると思っていたので、配当金や分配金はとてもありがたいものに見えていました。
生活資金と運用資産で金銭感覚がズレ始める
しかし、私の場合は「(比較的短期な)チャートの形を見て投資して、その後上昇するのを祈る作戦」はあまりうまく行きませんでした。
うまくいく方法を探すうちに、「何年も長期的に株価が上昇している米国株」や「何年も株価を上昇させているアップルのような株」に出会い、かなり長期的に続いているトレンドに乗れれば、短期的には変動があっても、時間をかけるうちに資産を増やせることに気づきます。
Googleならインターネットの利用人口(≒Google検索ユーザ)が増えれば増えるほど収益が増え、アップルなら世の中の人がiPhoneを使えば使うほど儲かる流れがあるなど、何年も続くトレンドに気づければ、それに長期的に乗るだけで株のリターンは増えるようになりました。
長期のトレンドに乗って資産運用がうまくいきはじめると、生活資金よりも運用資産のほうが規模が大きくなります。そうなると、生活資金と運用資産で金銭感覚がズレはじめてきました。
普段の生活ではお昼を100円でも安く済ませるのに、運用資産で数十万円変動しても何も感じなくなりました。
この頃から、現金は資産運用で増やすための”種(投資資金)”になり、投資の目的は「トレードで手元の現金を増やすこと」から「運用額を大きくすること」に変わりました。
現金は単なる決済手段
運用がうまくいって預金の多くを投資資金にするようになると、手元には数ヶ月生活できるだけの金額しか手元に残らなくなりました。
自分の中では自然な変化だったのですが、貯金はしないでほとんど投資していることを親しい友人に話して驚かれたので、たぶん世の中の普通の日本人とは感覚が違うのだと思います。
この時代から、現金はただの決済手段になったと思います。
現金はクレジットカードの支払い、納税、それにたまに行く外食の割り勘のためだけに使うものに変わりました。こうなると現金は、もはや自分に課せられた支払い義務をまっとうするための手段です。
配当金にも特別な価値を感じなくなる
思えば、このときから配当金・分配金に特別な価値を感じなくなりました。
「どうしても現金が必要なら、資産のほんの一部を切り崩せばいいのだろう」と思うようになり、株で重要なのは配当金ではなく、投資先の企業がどれだけ儲けられるか(どれだけフリーキャッシュフローを増やせるか)だとわかったためです。
企業が成長段階があるなら、儲け(フリーキャッシュフロー)を追加投資に回したほうが結果的に株主の価値を大きくできるし、企業の成長が止まっているなら配当金でも自社株買いでも株主に還元してくれればいいので、配当金を追い求めるのは本質的ではないと思うようになりました。
現金は確定リターンゼロの資産
投資がある程度わかるようになって、2020年3月に一時的に大きな株価下落を経験した時、現金には「確定でリターンゼロを得られる資産」という側面があることに気づきました。
2020年3月は1週間程度の短い期間でしたが、株も国債も、金や原油などの商品もあらゆる資産が売られる債務危機のような動きが見られました。
2020年、コロナショックで市場に起こっていたこと
渦中にいるときには気づけなかったのですが、今になって振り返ると一瞬だけ見られた「売れる資産は何でも売る動き」は、あと少しで債務危機につながる状態にあったのではと感じます。少し時間をおいた今だからこそ、2-3月の市場で何が起こっていたのかを振り返っておきたいと思います。
この時、世界中の投資家にとって最もリターンを上げていた資産は現金でした。あらゆる資産がこれからもっと下落すると多くの投資家が思っているには、リターンゼロですら価値があることを知りました。
現金にはそれ以上資産が減らないことに価値があり、株の下落局面で資産を守る働きをします。
この現金の価値観の変化があってから、株が割安か割高かを今まで以上に意識するようにもなったと思います。
株価が全体的に割高なら下落して調整する可能性もあるので、無理して株を保有する必要もありません。リターンゼロの現金のほうがリターンほうがマシの場合もあるので、株価下落を期待してほんの一部を現金で持っておくほうが良いかも知れないからです。
長年のデータを振り返ると、S&P500の価格は今後12ヶ月の企業利益の15倍の価格(PERは15倍)がついています。ジェレミー・シーゲル教授によれば、2020年のアメリカは歴史的な低金利で割高な株価でも許されるので、PER約20くらいが適正水準と言えるそうです。
しかし、2020年8月のS&P500のPERは23倍で、シーゲル教授が言っている水準よりもやや割高です。割高な株価が下落した場合に株を買えるように、今の私は資産の一部をリターン・ゼロの現金に振り分けて余力をもたせています。