最近、米中貿易協議で悲観的なニュースが入ってきても株価は上がっています。まるで、市場は米中協議がまとまることを確信しているのか、もしくは全く気にしていないかのようです。
「なんで米中貿易協議のニュースに何も反応しなくなったんだろう」と不思議に思っていました。
ただ、市場の動きをよく見ると、このニュースに全く反応していないわけではなさそうです。国債の動きを見ているとわずかに米中協議のニュースに反応している傾向はあります。どうも、株には貿易協議以上に、プラスの影響を受けているものがありそうです。それが中央銀行のFRBの金利引下げではないかと考えています。
この記事のポイントは、「シンプルに金利引下げって効果大きいですね」ってことです。なんでそんな話になるかを順に追うと、以下のような箇条書きになります。
- CNCBは中国政府関係者から、貿易協議の部分合意に悲観的になっていると報道。
- それで米国株は連日は上昇している。
- 協議停滞のニュースの悪影響がないわけではない。安全資産の10年米国債に資金が逃げる動きは少し出ている。
- 今の株価は協議の停滞以上に反応している好材料がある様子。おそらく、FRBの金利引下げと資産購入の影響。
中国は米中貿易協議に悲観的
11月18日、CNBCの記者は中国政府関係者からコメントを得たとして、こんなツイートをしています。
Mood in Beijing about #trade deal is pessimistic, government source tells me. #China troubled after Trump said no tariff rollback. (China thought both had agreed in principle.) Strategy now to talk but wait due to impeachment, US election. Also prioritize China economic support.
— Eunice Yoon (@onlyyoontv) November 18, 2019
英語だと読みにくい上に背景を知らないと理解が追いつかないので、箇条書きで少し補足します。
- 中国政府関係者はCNBCに「中国は貿易協議で悲観的になっている」と伝えた。
- 約1週間前、トランプ大統領は関税を撤回することに同意していないと発言があり、既に同意したと思っていた中国は落胆した様子。
- 中国は協議は継続するが、中国経済を支えることを優先して、トランプ大統領の弾劾裁判(大統領を辞めさせる裁判)や2020年の大統領選の行方を見守る体制に移っている。
トランプ大統領が既に発動した関税の撤廃について、同意していないと発言したことの詳細はトランプ大統領、全ての関税の撤廃は「合意していない」をご覧ください。
貿易協議停滞のニュースでも上がる米国株
ただ、中国政府の合意に悲観的なニュースが流れても、S&P500は上昇しています。
もはや株が強すぎです。
貿易協議停滞のニュースでも上がる米国株
じゃあ、市場はまったく貿易協議の悪いニュースに反応しないのかというと、そうでもないようです。実は、トランプ大統領が「関税撤回に合意していない」と発言した11月8日から、安全資産の10年国債が少しずつ買われ始めています。
以下の、グラフは米10年国債利回りのグラフですが、グラフが下がるほど国債が買われていることを意味します。つまり、トランプ大統領の発言を受けて11月11日(月)週から、国債は買われているのです。
金や国債などの安全資産は、ざっくりいうと何かリスクが有るときに買われます。なので、市場は少しだけ警戒をしているように見えます。
市場に与える影響について
市場は確かに米中貿易協議は難航することに反応していますが、「じゃあなんで株が上がっているの?」という疑問が出てきます。おそらく、米中の貿易協議以外に株価にプラスに働く要因があるからです。そして、それで思いつくのは2019年夏から実施した中央銀行FRBの利下げです。
今一度、貿易戦争と金利引下げの短期的な影響をまとめてみると。利下げのほうが影響が大きいことがわかります。
- 【米中貿易戦争の影響】:直接的には貿易にのみ影響。アメリカは中国とは大幅な貿易赤字なのでGDPの貿易だけにフォーカスするなら、中国との貿易が縮小すればGDPが上昇する。ただし、製造業の設備投資が大幅に冷え込むなど間接的な影響が大きい。
- 【金利引下げの影響】:常に全ての資産(株、国債、金、商品)の評価価値に直接影響を与える。株は金利が下がれば、評価価値が見直されて上がる。また、企業や個人はお金が借りやすくなってお金を使うようになるので、実体経済が上向く。特にアメリカのGDP7割を占める個人消費が上昇する効果が大きい。
あらためて考えてみると、米中貿易よりもFRBの金利引下げのほうが影響が大きいというのはかなり自然な事かもしれません。
ただし、貿易戦争が2-3年長引いた場合には、貿易戦争の本当の脅威が現れます。世界中の製造業の景気を冷やし、世界中の国に景気減速が広がることです。もしも、そこまで拡大した場合には、グローバル企業を多数抱えるアメリカ企業の業績が冷え込んで、アメリカ全体の景気も減速する気がします。
ただし、そこまで至るには時間がかかるので、今はFRBの金利引下げの良い効果が株価を押し上げているように見えます。