2021年で米国株の投資家の話題にのぼっているのは「(1)アメリカの中央銀行FRBがいつから国債の購入を縮小するのか」、「(2)FRBいつから政策金利を引き上げるのか」、「(3)インフレ率がどこまで上昇するのか」などです。
しかし、少し考えてみると、使っている言葉は違うのですが、実はこれらはすべて「米国株が国債よりも割高かどうか」を心配していることに気がつきます。
ここまで書いて「どういうこと?」と思う人も多いと思うので、少し言葉を足してこの記事で説明していきます。
この記事のポイント
- FRBの国債購入の縮小、政策金利引き上げ、インフレ率の上昇のどれが起こっても米国債が売られやすくなる。
- 今までは「買われ過ぎでリターンがない米国債に比べれば、米国株はまだマシ」という理由で買われて上昇してきたが、米国債が売られれば、米国株も売られることになる。
- 金融政策やインフレ率を追いかけるのも良いが、国債に対して米国株がどれだけ割高になっているかを追いかけるのが本質的だと思う。
2020年から米国株が買われた背景
少し話をさかのぼって、2020年から米国株が買われてきた背景を振り返っておきます。
2020年は新型コロナウイルスの流行で悪化した景気を浮上させるために、FRBは政策金利をゼロにして、毎月アメリカの国債を大量に購入し始めました。
この金融政策で国債は買われすぎの状態になり、「国債を買ってもほとんどリターンが得られないけど、国債に比べたら米国株は割高でもまだリターンが得られる」という理由で米国株も急上昇しました。
【なぜ株高になったか】投資家目線で見る、新型コロナウイルスが変えた世界。
2020年の投資家は、新型コロナウイルスに影響を受けざるを得ませんでした。このパンデミックを理由に大きな不況に陥ったことで、企業の業績も、金利も、株価もさまざまなものが変わってしまったからです。この記事では新型コロナウイルスの影響を受けて、この1年間に何が変わってしまい、そしてどうして株高になったのかをまとめます。
国債の売りを警戒する投資家
米国株が買われた背景に「価格が高すぎで(利回りが低すぎで)投資しても儲けがない国債よりは、米国株が良い」という考えがあることが理解できると、もしも今後どこかで国債が売られ始めたら、米国株が売られやすくなる恐れが出てきます。
投資家の多くが心配しているのは、2021年にも始まるとも言われている「(1)FRBの国債購入の縮小」、そして2022年後半から予想されている「(2)政策金利引き上げ」です。
2020年までは国債の買われ過ぎを招いてくれたFRBの2つの金融政策が、これから1-2年で逆回転を始めると見られています。これで国債が売られれば、株も売られるという流れは先ほど話しをしたとおりです。
インフレ率が上昇すると国債が売られる
なお、2021年はアメリカで上昇し続けるインフレ率が注目を集めていますが、インフレ率の上がり過ぎは2つの点で米国債の売りに繋がります。
- 国債はインフレで価値が減る資産(インフレに弱い資産)なので、インフレが強まると米国債が売られる。
- インフレが止まらなくなれば、インフレを抑えるために金融緩和を急いで縮小させる必要があり米国債が売られる。
そして、先ほどから話しているように米国株も売られれば、今は米国株も売られやすくなります。
まとめると、2021年の投資家は(1)FRBの国債購入の縮小、(2)政策金利の引き上げ、(3)インフレ率の高止まりを警戒していますが、それら全ては米国債の売りにつながる共通点を持っています。
国債が売られれば、「買われすぎて割高で投資の儲けが出ない(利回りが低い)米国債に比べたら、かなり割高でも米国株のほうが儲けが期待できる」という今まで見られていた米国株の購入理由はなくなり、下落しやすくなることを投資家は心配しているように見えます。
さいごに
金融政策やインフレ率など、2021年の米国株投資家は注目するべきニュースが多いようにも感じますが、結局のところ大事なことは「米国株が米国債に比べて割安な状態が続いているかどうか」だと思います。
世の中に変化が起こって国債が売られてしまえば、「割高な米国債に比べれば米国株はまだマシ」という考えで株が買われる流れが弱まってしまいます。
米国株が国債に比べてどの程度割安な状態が続いているかをチェックすることが良さそうだということが見えてきましたが、以下のようなグラフを月1回程度確認しておくと良いかも知れません。
このグラフはS&P500が10年米国債に比べてどれだけ期待できるリターンが高そうか(超過CAPE利回り)をグラフ化したものです。
上のグラフで2021年8月現在の様子(3.09%)を見てみると、金融引き締めに耐えられなくなって米国株が下落した2018年(1.51%)や、世界金融危機前の2007年(1.20%)のような米国株の割高な状態ではないようですが、これらの水準に近づいてきたら黄色信号だと思って注意してみています。