前回に引き続き、先進技術がいっぱい乗っているガートナーのハイプ曲線2019を見ていきます。
ハイプ曲線の見方と前回の取り上げた自動運転に関する記事はこちらを参照:
自動運転を阻む規制の壁〜ガートナー先進技術ハイプ曲線2019を読む。
今後5-10年後に流行るARクラウド
ガートナーが発表した2019先進技術ハイプ曲線で、紹介されているものの中で、私が注目している1つが「ARクラウド」です。
ガートナーのハイプ曲線では、まだまだ「黎明期」に位置していて、本格的に世の中に広まるまでには5-10年かかりますが、将来性があります。
ARというと、どうしてもポケモンGoなどのゲームの印象しかありませんが、このARクラウドの登場によって、ゲームなどのエンターテイメント以外に活躍の場を広げると見られています。
そして、より重要なのはこのARクラウドの実現でARはゲーム以外にマネタイズの方法を手に入れることです。もっと具体的に言うと、ARクラウドを使えば広告ビジネスでお金儲けができるようになるので、企業が力を入れる分野になります。
そもそもARとは
ARクラウドという言葉を知っている人はそんなに多くないと思います。この言葉が流行りだしたのは、2016年頃と比較的最近だからです。
この言葉を理解する前にAR(拡張現実)について、少しおさらいしてみます。ARとはリアルタイムの現実の映像に、CGを重ね合わせる技術です。ポケモンGoをやっている人はイメージしやすいと思います。街中にポケモンが出現しているように見えるアレです。
Google MapもARを使ったナビゲーションを提供して提供して話題になりましたが、これもARです。
参考記事:グーグルマップARテスト開始。2020年は次世代通信開始でAR/VRが加速。
ARクラウドはAR空間の情報共有
従来のARの空間は1人のユーザ毎に存在してるか、もしくはせいぜい近くにいる数人とAR空間を共有する程度にとどまっていました。
でもARクラウドを使えば、ARの空間を世界中の人と共有して、データのやり取りができるようになります。
ARクラウドの活用例
例えば、街を歩いている時にレストランを見つけたとします。今までそのお店の口コミを調べるには、お店の名前で検索して食べログなどのサイトを表示してから、点数や口コミを確認する必要がありました。
しかし、ARクラウドの技術を使えば、歩いてレストランが視界に入った瞬間に食べログの点数や代表的なコメントが表示可能になります。また、レストランで食べ終わった後にレストランのコメントを残せば、今後は自分がAR空間に残した点数やコメントなどの情報を、他のユーザが見れるようになります。
その他、昼に海にでかけた時にAR空間上で別のユーザが上げた朝焼けの海や、夕焼けの海の写真や動画を表示させたり、観光スポットの場所に「いいね」をしたり、「江戸時代にこんな出来事があった場所だ」などのその観光スポットを紹介するテキストを入力することも出来ます。
今見えているものをキーワードに検索ができるようになり、自分のコメントを残せるSNSとしての機能を持つようになるのがARクラウドです。
ARクラウドと広告ビジネス
食べログの例をみるとわかるように、ARクラウドはコメント・いいね・点数などの情報を収集できるSNSとしてARが使われるようになります。するとSNSには数多くのユーザをまきこむことになるので、広告ビジネスが成り立つようになります。
このARの広告ビジネスが面白いところは、「広告を打ち出せる空間が無数にあること」。また、視界の中に広告のCGが大量にあると邪魔でしかないので、「視界の中に表示できる広告に限りが有ること(人気の高いスポットでの広告単価が高いこと)」です。
AR広告が確立できれば、インターネット広告の新たな収益源になることが予想されます。
ARクラウドは将来のデジタル広告を担う
インターネット広告(デジタル広告)は2018年時点で年率22%で成長している成長分野です。
ただ、永続的にこのペースで成長するのは難しいです。そこで5-10年後にデジタル広告の成長を牽引する役目を担うと言われているのが、ARクラウドです。
この10年間はデジタル広告の中でも、スマホへのモバイル広告が急成長を上げてきましたが、このスマホ広告の次の存在としてAR広告に期待が集まっています。
デジタル広告プレイヤーとARクラウドプレイヤー
現時点のデジタル広告の主要プレイヤーはGoogle,Facebook, Amazon, Twitter, Snap, Pinterestです。
しかし、ARクラウドはまだまだ黎明期の初期の段階なので、これらの大手ITは直接開発を手掛けるのではなく、ARクラウドを開発するスタートアップへ投資をする程度の関わりしか持っていません。
そして、2019年時点でARクラウドを開発する多くの企業は株式非公開なので、個人投資が投資することが難しいです。
ちなみに、GoogleはARクラウドに興味を示しており、スタートアップのBlue Vision Labへの投資を行っていました。(が、その後にLyftによってBlue Visionが買収されています)
以上まとめると、まだまだARクラウドの流行には時間がかかるものの、5-10年先の広告ビジネスを担う可能性がある興味深い技術だといえます。
今の段階で、ARクラウドをテーマに投資をするのは早すぎると思いますが、デジタル広告の限界がARクラウドによって突破されることを見越して、Google, Facebookなどの企業に分散させながら、デジタル広告をテーマに投資をするのも面白いと思います。