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どうにも気になるアメリカの時給の伸び

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先日、11月のアメリカの雇用統計の話をしました。

>>11月の米雇用統計、予想以上に強かったがほころびも見られる。

上の記事では、(1)11月のアメリカの雇用が予想よりも強かった点、(2)その一方で陰りも見られるという2点を書きました。

ただ、どうも今回の雇用統計の平均時給の高い伸びがどうしても気になるので、今月の平均時給の伸びがどうマズイのかをもう少しだけ取り上げたいと思います。

この記事のポイント

  • アメリカの平均時給は3ヶ月連続で勢いを増している。
  • 1970年の代のアメリカのインフレ長期化の経験から、製造業の非管理職の平均時給は5%以下に抑えるのが望ましいが、11月は前月比・年率8%超えだった。
  • アメリカの景気鈍化が早々に訪れなかったり、平均時給の伸びが続けば市場予想を上回る利上げが起こる可能性は十分にある。

高いアメリカの平均時給の伸び

まず、先日発表された11月の平均時給の伸びを確認すると、前年比で5.1%でした。この値はコロナ前のインフレが2%だった頃に比べると、かなり高い水準に留まっていることがわかります(下図)

そして、インフレを抑える上で良くない兆候だと私は感じているのは、9月からの3ヶ月間で平均時給の伸びが加速していることです。

次のグラフは前月に比べて年率何%ペースで平均時給が伸びているのかを示したものですが、この数ヶ月は伸びが加速しています。

FRBが金融引き締めをしているのにも関わらず、こうした賃金上昇が起こっているのはかなり気になる点です。

製造業の非管理職の賃金も上昇

1970年代のアメリカの高インフレ時代を抑え込むためには、製造業の非管理職の平均時給を前年比+5%以下に抑える必要があったと書きました。(以下、記事)

>>アメリカのインフレ再燃を引き起こす鍵

そして、最近はアメリカ全体の平均時給と同じように、製造業の非管理職の平均時給の伸び(前年比)も再び上昇に転じ始めているように見えます。

さらに厄介なのは、最近3ヶ月の時給の伸びです。

前月比の製造業の非管理職の平均時給の伸びを年率になおしてみると、最近は年率8%を超えるペースで伸びていることがわかります。この伸びは2022年になってから最高を記録しています。

インフレを抑えるには賃金の伸びを抑える必要がありますが、要するに最近3ヶ月の賃金の加速はやや危険なペースだとわかりました。

小幅利上げでも、より高水準の政策金利に

FRBのパウエル議長の聞いていると、次回12月の利上げは0.75%ではなく0.50%に利上げ幅を縮小させるようです。

最近しばらく賃金の伸びが加速しているのに、利上げ幅を縮小してインフレが抑えられるのかと考えてしまいますが、どうもFRBは小幅な利上げを続けてより高い金利水準に引き上げて対応しようとしているようです。

そうなると次に気になってくるのは、FRBがやろうとしていることと市場予想の食い違いです。

市場の投資家は12月と2月に0.5%ずつの利上げをしたら利上げが止まると思っています。

この市場の予想は2023年2月までにアメリカの景気拡大が大きく鈍化して、利上げが止まると思っているのかもしれません。

ただ、景気鈍化がなかなか来なかったり平均時給の伸びが止まらなかったりする場合には、FRBが言うように小幅ながら利上げが続いて、市場の予想以上の金利水準に引き上げられる恐れもあります。

その場合には、株も国債も売られるはずなので、引き続きアメリカの景気と平均時給の伸びには注意していきたいと思います。


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