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株高シナリオをおびやかすリスクを点検

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大きな視点で見ると、アメリカは既に2020年4-6月の歴史的な景気の低迷期を過ぎ、これから回復に向かおうとしています。

景気が回復するタイミングでは、一般的にはあらゆる資産の中で株がよく上昇するので、これからは株の投資を基本に考えるのが良さそうです。

11月に入ってからワクチン開発でもいくつか明るい材料が出てきているので、コロナ前の景気に回復するまでにかかる時間も短縮されること考えると、そろそろコロナでダメージを負った銘柄の回復を期待した投資もありだと言える状況になりました。

詳細記事:

しかし、ベースのシナリオでは株高を予想していても、今くすぶっている問題が大きくなったら、株高のシナリオも崩れる恐れがあります。

このブログでは以前から、株高のシナリオをおびやかすシナリオとして以下の5つをあげていましたが、この記事は2020年11月時点の5つのリスクを点検していきたいと思います。

株高シナリオを脅かすリスク

  • ワクチン開発が軒並み失敗に終わる。
  • 2020年秋冬にかけてウイルスが再流行して、大規模な都市封鎖が必要になる。
  • 企業に倒産の連鎖が起こる。
  • 今まで低い金利を背景に高い株価がついていたが、長期金利が上昇してしまう。
  • インフレ率が上昇して、金利を引き上げざるを得なくなってしまう。

結論を一言でいうと、まだ新型コロナウイルスによる都市封鎖で経済が再び落ち込む恐れは多少ありますが、それ以外はまだ心配するレベルではありません。

株高シナリオを意識しながら、引き続き異常がみられないか経過観察をしたいと思います。

ワクチンの開発は比較的順調

この記事を書いている2020年11月時点の新型コロナウイルスのワクチンの開発状況ですが、今のところ悪いニュースはそれほど多く流れていません。

既に多くの人が知っているように、ファイザー社やバイオンテック社が共同開発したワクチンは最終試験の一部のデータで、かなりの高い確率で感染を防ぐ効果があることが分かっています。

また、ファイザー以外にも最終試験で良好な結果を出しているという報道も出ているので、幸い、新型コロナウイルスのワクチン開発は当初想定していたほど実現が難しいものではないのかも知れません。

>>ファイザーの新型コロナワクチン、確率90%超で感染防ぐ暫定結果(ブルームバーグ)

>>ロシア国産コロナワクチンの有効性は「92%」、中国も治験順調と(ロイター)

これらのニュースを考えると、ファイザー以外の欧米企業が作っているワクチンの中からも、今後良好な結果が得られる可能性もありそうです。今後も注意深く様子を見ていきたいと思います。

ワクチン開発の状況把握ですが、私の場合はニューヨーク・タイムズのワクチン・トラッカーというサイトを定期的にチェックしています。

英語記事ですが、グーグル翻訳を使えばそれなりに内容がわかる日本語に変換してくれるので、参考になると思います。

ワクチンが市場に与える影響

投資家はワクチンがいつごろ承認されるかだけでなく、ワクチンが承認されたら市場がどう動くかもチェックしておいたほうが良いかも知れません。

ファイザーの良好な試験結果の報道があった日、まだワクチンが承認されたわけでもないのに市場は以下のように大きく動きました。

  • コロナでダメージを受けた銘柄:業績回復期待でホテル・航空・レジャー・石油・銀行などの株が大きく上昇。
  • コロナで恩恵を受けた銘柄:IT銘柄などで株価が下落。
  • 米国債:大きく売られて価格が下落(金利は上昇)。
  • ゴールド:下落(※金利が上昇すると下落する傾向がある)

シンプルに考えるなら、ワクチンの承認が得られた場合には、この日と同じような動きがより大きな規模で起こると思われます。

新型コロナウイルスはかなり深刻なペースで感染拡大中


この記事で取り上げるリスクのうち、一番心配なのはアメリカでの新型コロナウイルスの感染拡大です。もしも、2020年3-4月のように全米規模で大きな都市封鎖が必要になってしまうと、大きな景気の低迷が起こってしまいます。

11月15日現在では、アメリカの新規感染者数は急増中、ただしトランプ大統領は都市封鎖はしないというスタンスなので、3-4月のような全米での都市封鎖は今のところ無さそうです。

米国の新規感染者数は11月13日に18万人超え

※出典:Worldometers

今後、都市封鎖が起こるかどうかは予想が正直、わかりません。全米での一斉の都市封鎖はなくても、州や都市ごとに移動制限や外出制限が次々と出される状況になると思います。

こうした状況で株価が下落するのは、2020年3-4月同様にコロナで売上に悪影響を受けた銘柄です。ただし、ワクチン承認が迫っているなら、2021年以降の業績回復が見込めるので、この下落は積極的に買いに行くべき株価下落になりそうです。

企業の大きな倒産の連鎖は起こっていない


この記事を書いている2020年11月では、企業の大きな倒産は起こっていません。

JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOが「2020年末から2021年前半にかけては、貸倒れのリスクが高まると見ている」と発言していたように、3-4月から続くコロナの影響を受けて、低迷している企業の中に倒産する企業が出てきてもおかしくありません。

倒産が起こっているかどうかはニュースをチェックするよりも、貸倒れリスクがどれだけ上昇しているかを見たほうが早いです。

表示されるグラフは低格付け企業の社債のリスクを表したものです。(国債とジャンク債の利回りの差を計算したもので、貸倒れリスクが上昇するとグラフが急上昇します。)

2020年11月時点の米ジャンク債スプレッドは低位で落ち着いている

出典:FRED

11月時点では、貸倒れリスクは3-4月に比べて大きく下がっていて落ち着いています。

ちなみにこの数字が急上昇すると、最悪の場合は、社債だけでなく株も全般的に売られる信用不安につながる可能性があるのですが、今はその影を感じないほど落ち着いています。

ハイテク株投資にとっては気になる金利上昇

最後は、2つまとめて金利とインフレについて点検していきます。

金利は歴史的な低水準からは底打ちしわずかに上昇をはじめ、インフレはまだまだ中央銀行FRBが目標にする2%超えまで遠い状況です。

10年米国債利回りは底を打ち、直近数ヶ月は緩やかに上昇傾向にある

出典:FRED

米インフレ率は目標2%を下回る

出典:アメリカ・PCEデフレータ(みんかぶFX)

インフレについては全く気にしなくて良いと思います。2%を超えることが当面の目標なので、今はインフレは目標を下回っている状態です。

一方で、金利は少し注意して見たほうが良さそうです。

ITやハイテク企業など、2020年で大きく株価が上昇した企業では、2020年のコロナの影響もあまり受けず、むしろ金利が低くなった恩恵を受けて株価が目一杯高くなっていることがあります。(金利は低くなると、株価は上がりやすくなります)

こうした銘柄は少し金利が上昇しただけでも、大きく株価が下落する恐れがあります。

ファイザーの最終試験結果で良好な判断が出た日、長期金利は0.1%上昇しただけで、ハイテク企業中心のナスダック総合指数は1.5%下落しました。ワクチンが承認されれば、恐らくこれよりも大きな変化が起こるはずです。

さいごに

この記事では、株高の基本シナリオを脅かす5つのリスクについて、現状を点検していきました。

新型コロナウイルスの流行の拡大以外は、おおむね異常はなさそうです。金利もやや上昇傾向にありますが、上昇しすぎたハイテク銘柄でなければ、まだ金利上昇に耐えられる水準だと思います。

なので、不安材料やくすぶっているリスクはありますが、基本的にはコロナで低迷した銘柄の株高を期待する基本シナリオで問題ないはずだと思っています。


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