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中国で今年最大級のデフォルト。警戒すべきはデフォルトの連鎖。

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ウォール・ストリート・ジャーナルで中国で2019年最大級のデフォルトを伝える記事を報じています。

中国で今年最大級のデフォルトか、債務危機が深刻化(ウォール・ストリート・ジャーナル)

中国の複合企業が債務危機の深みにはまっている。保険や不動産、航空機リース業などを手掛ける中国民生投資集団(中民投、CMIG)は19日、8月2日に償還を迎える5億ドル(約540億円, 約35億人民元)の3年債について、元本や利子の支払いができないことを明らかにした。中国企業のドル建て債デフォルト(債務不履行)としては今年に入り最大規模となる。

タイトルからして刺激的ですが、上に引用した数文だけでも、「はてな」と思うところがあったので、色々と調べてみました。個人的に、気になったのは以下の3点です。

  • 中国民生投資集団とは、どんな集団?
  • 「債務危機の深みにはまっている」とは?今回のデフォルトが初めてではない?
  • 2019年最大規模のデフォルトとは、どのくらいインパクトがあるのか?

中国民生投資集団は、中国最大手の民間投資会社

中国で最大手の民間投資会社のようです。国が掲げる政策にも乗っかって、投資資金を集めているようで、返済残高総額は3兆円を超えるなど、結構な規模があります。

2019年で返済期限を迎えるものだけでも8000億円あるので、今回540億円のデフォルトはほんの一部のようです。

  • 2014年創業の中国最大手の民営投資会社。中国の「モルガン・スタンレー」とも呼ばれている。自称「世界有数の投資グループ」。
  • 中国の経済発展および広域経済圏構想「一帯一路」の関連投資に軸足を置く。
  • 「一帯一路」は、中国から中央アジアを経てヨーロッパへと続くシルクロード地域で、今後数十年かけて、インフラ投資、金融、テクノロジーへの投資を積極的に進め、産業活性化を目指す構想。
  • ブルームバーグによると中国民生投資集団の債務残高の合計は2320億元(約3兆8000億円)。
  • そのうち、2019年に返済期限を迎えるものが総額533億元。(8365億円)
  • 多数の中国民間企業が、中国民生投資集団の株主になっている。
  • 経営難に陥った理由については不明点が多いものの、元従業員によると同社は長期資産を支える資金を短期の借り入れでしのいでいるものの、資金繰りが苦しくなっていた様子。

「債務危機の深みにはまっている」の真意は

しかし、困ったことにどうも調べてみると、中国民生投資集団は今年1月29日に満期を迎えた債券でも、デフォルトをしていたようです。総額30億元(約486億円)で、今回の35億元(約540億円)を合わせると、1000億円規模になります。

中国で大型の支払い遅延、今月2件発生-関係者(ブルームバーグ, 2019年2月11日)

中国民生投資集団が2019年の1年間で返済しなければいけない額が、総額533億元(8635億円)と先ほどお伝えしましたが、今後もデフォルトが連鎖しないかどうかが、最大の懸念になります。

2019年最大規模のデフォルトとは、どのくらいインパクトがあるか

さて、最後に今回の中国民生投資集団のデフォルトがどれくらいインパクトがあるものなのか、グラフで見てみたいと思います。以下のグラフは、近年の中国のデフォルト金額を表しています。

なお、2019年のデータについては、S&Pが発表した年初来データを記載しています。S&Pによると2019年これまでに二十数社が合計約330億元の社債でデフォルトに陥っているようです。

こうしてみると2018年のデフォルト大きさよ!前年比4倍の約1200億元(約1.8兆円)とは。逆に、よく持ちこたえていましたね。

残念ながら、S&Pによる2019年の中国のデフォルトデータが何月分まで反映しているかわからないのですが、少なくとも最大規模と言われたいる中国民生投資集団の8月2日分の約35億人民元のデフォルト1件だけで、大きなインパクトがあるというわけではなさそうです。

先程もお伝えしましたが、怖いのは、むしろこうしたデフォルトが連鎖することです。S&Pによれば、2019年に中国で同様のデフォルトの件数が増加すると見ているようなので、2018年の1200億元の金額を上回って、年々増加が止まらないようだと、困ったことになると思います。


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