コンテンツへスキップ

アメリカで今年5件目の銀行破綻

  • by

日本だけではなくアメリカでもほとんど話題になっていませんが、11月3日金曜日にアメリカでまた銀行が1つ破綻しました。

今のところ反応を見ていると、23年3月のシリコンバレー銀行の破綻時のような混乱は見られないと思われます。

ただ、金融引き締めが続いている中でこうした銀行の破綻は来年も増えていくはずです。アメリカの銀行の危機は終わっていないということを覚えておいたほうが良さそうです。

この記事のポイント

  • FDICは米シチズンズ銀行が破綻したことを告げ、破綻した銀行の一覧に追加した。
  • 2023年に破綻したアメリカの銀行はこれで5件目になる。
  • 金融引き締めが続く中では、今後も破綻が増えることが予想される。銀行危機はまだ終わっていない。

シチズンズ銀行の破綻

FDICという銀行の破綻時に預金を保護する組織が、アメリカのシチズンズ銀行の破綻を伝えています。

FDICの「破綻した銀行一覧(Failed Bank List)」というページを見ていると、11月3日にシチズンズ銀行がしれっと追加されていることがわかります。

アメリカでの銀行破綻件数について

このリストで確認すると、アメリカの銀行の破綻は今回の件で5件目になるようです。これが一体どれくらい多いのか(または少ないのか)、私はピンと来なかったので調べてました。

FDICのリストで遡れる2000年以降で、銀行の破綻件数がどれだけあったのかをグラフ化したのが以下です。

こうしてみると、あらためて2000年代後半からはじまった世界金融危機時で、どれだけ多くの銀行の破綻があったのかを思い知らされます。

2023年の5件という件数は、世界金融危機の時に比べるとまだ圧倒的に少ないと言えそうです。

しかし、何もない年にはこれほどの銀行の破綻は起こらないこともまた上のグラフから読み取れます。例えば、サブプライムローン問題が起こる前の好景気だった2005年と2006年の銀行破綻件数はゼロ件です。

また、世界金融危機も欧州債務危機も去って後にトランプ減税で好景気となった2018年も破綻件数はゼロ件で、コロナ後の経済再開で高成長を記録した2021年と2022年も破綻件数はゼロ件でした。

こうした好景気の後に景気が傾いて銀行が破綻し出すと、翌年もその翌年も破綻が続いている傾向も見られます。この過去の傾向が続くなら、恐らく2023年の5件の銀行の破綻はこれから数年で破綻が増えることの予兆のようになるのだと思われます。

シチズンズ銀行破綻の影響

シチズンズ銀行の破綻については、現時点では3月のシリコンバレー銀行の破綻ほど影響は大きくないのではないかと思います。

日本だけではなく、アメリカでの注目度もそれほど高くありません。

たとえば、Googleトレンドを見てもシリコンバレー銀行破綻の週は「Silicon Valley Bank」の検索数が100倍以上に伸びていました。

しかし、今回のシチズンズ銀行の破綻では「Citizens Bank」の検索数は通常の2倍にしか伸びていません。

今回のシチズンズ銀行は、7月28日にしれっと破綻していたハートランド・トライステート銀行のようにあまり投資家の注目を集めずに過ぎ去るイベントになる気がします。

では、完全に見過ごして良いイベントなのかというとそうでもない気がします。

金融引き締めが続く中でアメリカで破綻する銀行が増えれば、経営が下手だった一部の銀行の問題ではなく業界全体の問題に広がるリスクがあります。

破綻の連鎖がはじまる前にFRBが金融緩和策に転じるのか、それとも世界金融危機時にように銀行の救済を拒むのか(もしくは金融引き締めを続けるか)でアメリカの行く末は変わります。

破綻前に金融緩和に転じれば景気の悪化はおさえられますが、恐らく数年後に高い確率でインフレを招くことになるはずです。

一方で、銀行が破綻する中でも金融引き締めを続ければインフレは退治できるかもしれませんが、一時的にデフレの世界が待っている恐れがあります。


本ブログからのお願い

この記事は、読者が自由に記事の金額が決められるPay What You Want方式をとっています。

「役にたった」「面白かった」など、何かしら価値を感じた場合は、YUTA'S INVESTMENT TICKETをクリックして、価値に見合った金額をお支払い下さい。

価値がないと思った場合には、お支払いは不要です。同じ記事を読み返して、新しい気づきがあった場合には、1人で何回クリックしても問題ありません。