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S&P500が上昇した理由は、ドルの通貨安も要因か。

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3月後半から4月の2週目までS&P500が上昇したのは、株高だけでなくドルの通貨安の影響があったかも知れません。

3月23日以降順調に回復したS&P500

中央銀行FRBやアメリカ政府は新型コロナウイルスの対策のために、数兆ドル(数百兆円)規模の景気刺激策を打ち出していて、低金利かつ大量のドルが世の中に提供しているので、ドルが安くなりやすい環境があります。

昔から通貨の価値の源泉になっていた金(ゴールド)を基準に考えると、最近のドルはゴールドに対して下落、米国株も上昇しているもののゴールドに対しては上昇が緩やかになっています。

3月23日から4月2週目まで見られていた米国株の上昇は、FRBや政府の景気刺激策を好感が上昇理由だと思っていましたが、ゴールドを基準に考えると、ドル安のせいで株価が大きく見えたことも影響しているのかなと思い始めました。

この記事のポイント

  • アメリカの中央銀行政府は大規模な景気刺激策を打ち出して、低金利で世の中に多くのドルを供給しているため、今後はドル安になりやすい状況にある。
  • 3月23日から4月9日までのS&P500指数は25%上昇したが、これはドルの通貨による影響も考えられる。試しに、S&P500 を金の価格で割った値を調べると、同じ期間で12%しか上昇しなかった。
  • ドルの通貨安が見られているなら、株の投資資金を現金で待機しているのは、良くない作戦かもしれない。現金だけでなく、金(ゴールド)や少量の商品(コモディティ)なども含めて、待機している投資資金の退避先を考える必要がある。

ドルが安くなっている


3月23日からドル安くなっていると言っても、多くの反論があると思います。為替レートを見ていても、大してドルが安くなっているように見えないからです。

ドルと円の動きを追いかけている人は、「3月23日の1ドル110円から4月2週目の107円まで3%弱しか変わってないぞ」と思われる人かも知れません。

通貨安を確認する方法は少し難しいです。ドル円で見ても、日本も日銀や政府が大規模な経済対策をしていて円の通貨安が進んでいるはずなので、ドル円だけではドルの通貨安が起こっているのか確認しづらいです。

そこで大昔から通貨の価値の基準にもなっていた金の価格の変化を見てみることにします。

金の価格を見てみると、金1オンスあたりの価格(ドル)は上昇していることがわかります。

金の価格が上昇しているということは、ドルが安くなっているのです。

金を価値の基準にすると、S&P500はそれほど上昇していない


ドルや円などの国の通貨は通貨安が起きているかも知れないので、これからはゴールドを価値の基準にして、S&P500の価格を考えてみます。

具体的には、通常のS&P500の価格を金の価格で割り算をして、金1オンスあたりのS&P500の価格を算出します。

すると通常のS&P500では3月23日の直近の底値から急上昇していたはずのS&P500のチャートは、金の価格を基準にすると3月から4月にかけての上昇は、比較的緩やかになっていることがわかります。

底値からは確かに12%上昇していますが、3月8日以降はほとんど横ばいが続いている状態です。

比較のために、普通のS&P500のグラフを以下に掲載しましたが、通常のS&P500では3月23日から25%も急上昇していました。

もともとS&P500は25%上昇していたのですが、金の価格を基準に考えると12%しか上昇していなかったことから、実はこの時期の株高は半分以上がドル安によるものではないか、と思えてきました。

3月23日から株が上昇した理由


3月23日から4月9日の間に株価は順調に上昇しましたが、アメリカでは新型コロナウイルス対策の都市封鎖で、大量の失業者が発生していました。

歴史的な失業者の増加のニュースが毎週報告されている中で、なぜ株価はそれを無視して上昇を続けるのか疑問だったのですが、FRBや政府の景気刺激策を好感しただけでなく、ドルの通貨安が株の上昇を支えていたのかもしれません。

>>【参考記事】急増が止まらない失業者、それでも上昇する米国株。

3月後半からの株の上昇要因をまとめておきます。

3月後半から4月上旬にかけての株価上昇理由

  • 株式市場が、中央銀行FRBとアメリカ政府の経済支援策を好感した。
  • 2020年2-3月中旬までの急激な株価下落で弱気派は既に多くの株を売ったので、悪材料に反応しにくくなった。
  • [NEW]ドルの通貨安のおかげで、株価が大きくなったように見えた。

ドルの価値が減ると予想するレイ・ダリオ


FRBが世の中に大量にドルを供給すると、ドルの通貨安が起こると言っているのは、私だけではありません。投資家のレイ・ダリオ氏も同じことを言っています。

>>ダリオ氏、「現金はごみ」と再度主張-リフレ時にはマイナスリターン(ブルームバーグ)

上記の記事の中でレイ・ダリオ氏は、FRBがドルを大量に供給する世の中では、ドルの価値が減り、金や一部の株の価格が上昇する現象が起こるといいます

問題は投資資金の保管先


本当にドルの通貨安が進んでいるなら、私のように株の追加投資の資金を現金で持っている人間にはとても不都合です。保有しているだけで、価値が減るので、手元にある投資用のドルをどのようにして守るかが、課題になります。

また、ドルを円に替えたところで大きな差はありません。ドル円のレートが大きく変わっていないことをみると、恐らく円も安くなっているからです。

前回の記事で書いたように株はまだ下落をする可能性があるので、手元のドルで早々に株を買ってしまうのはリスクがあります。

不動産REITなども新型コロナウイルスの影響を受ける分野なので、ドルを逃がす先としてREITはまだ早いです。

その他の資産では、金・商品(原油などのコモディティ)は投資資金のドルの逃避先になりえるかも知れません。ただし、金も商品も価格の変動が大きいので、現金を残しつつ、金・商品も組み合わせる必要があります。

また、ドルの通貨安が一時的な減少なのか、それともトレンドなのかはこれからも注意深く見守る必要がありそうです。

今のところ、アメリカのインフレ率調整後の長期金利(10年国債の実質利回り)は低下してマイナスになっているので、理論的には金が買われてドルが安くなる傾向にあるようです。

>>最新の米実質金利のグラフはこちら


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