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6ヶ月先の景況感のマイナスになると米国株は下落【NY連銀景況感】

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アメリカの小売は一見成長しているようにみえても、インフレで売上金額が伸びているだけで成長がなかったという記事を書きました。

>>6月も実質マイナス成長だったアメリカの小売売上

小売の実質的な低迷は6月の話です。一方で、7月に入ってからのアメリカの製造業の景気についても見ていきたいと思います。

7月上旬にとったアンケートの結果によれば、7月の景気はそれほど悪くないようです。ただ、企業は先行きをかなり暗く見ているようです。

今ほど企業が先行きを悪く見ている事も珍しいので、この記事の後半では先行きが悪くなると株価はどのように動くのかを調べてみました。

この記事のポイント

  • 7月のニューヨーク連銀による製造業の現況指数は予想を超えて、3ヶ月ぶりのプラスに転じた。
  • 一方で、アメリカの企業は見通しを急激に悪化させている。6ヶ月後の景況指数は急落してマイナスになった。これは2000年以降、わずか3回しかない。
  • 6ヶ月後の景況指数がマイナスになった過去2回を調べると、その直後に株価の急落して(一時的にしろ)回復するV字型を描く。

予想外に強かった7月の景気


数年に一度の景気サイクルの中で今はどこに位置しているかを判断するために、多くの投資家たちが毎月チェックしている数字にISM製造業指数というものがあります。

ISM製造業指数は企業にアンケートをとって景気が良し悪しを数値化しているものなのですが、注目度こそ低いもののISMと同じような調査をより早く発表しているのがニューヨーク連銀製造業指数です。

7月5日から7月11日にニューヨーク連銀が調査した結果が早くも公開されたので、これを使って7月のアメリカの景気を確認していきます。

  • 予想:-1.9
  • 結果:11.1

実は今月は予想よりもかなり良かったです。エコノミストは景気悪化を意味するマイナスを予想していたのですが、結果は3ヶ月ぶりの景気拡大のプラスでした。

NY連銀の数字が良かったので、来月にISMもおそらくはそれほど悪くない数字になるかも知れません。

急激に悪化したアメリカ製造業の先行き


今回のNY連銀景況指数で「あれ?」と思ったのは、6ヶ月後の景況指数(23年1月頃の景況感)についてです。

NY連銀の調査では、現時点での景気の他に6ヶ月後の景気見通しについても企業にアンケートをして聞いているのですが、この6ヶ月後の景況指数が急激に悪化していました。

  • 6ヶ月後の景気指数:マイナス6.2ポイント
  • 前月:+14.0ポイント

前月の14ポイントから今月のマイナス6ポイントまで、いっきにマイナス20ポイントも悪化しています。アメリカ企業は景気の先行きをかなり悲観的に見ていることがわかります。

6ヶ月後の景況感が表してるもの


「6ヶ月後の景気指数が悪いから、まだアメリカは半年も景気が悪いのか」というと、そうとも限りません。

下の図で過去のデータを見比べてみると「6ヶ月後の景気景気指数」は現況指数の6ヶ月後の姿を予測しているというよりも、どうもその時点の現況指数に大きく影響されているように見えます。

つまり、企業は「今の景気が悪くなってきているから6ヶ月先もきっと悪い」と考えているように見えます。そういう意味では、「アメリカ企業がどれだけ悲観的になっているか」を知るような数字になっています。

その証拠に、過去に6ヶ月後の景況感がマイナスになった時期を見てみると「2001年9月同時多発テロ」の時と「リーマンショック後の景気後退の終盤」が当てはまります。どちらもその時期がほぼ最悪期と呼べるようなタイミングです。

6ヶ月後の景況感と株価について


「6ヶ月後の景況感がマイナスになった時が景気の最悪期に近いなら、マイナスになった22年7月の米国株はこれから反発するの?」と期待するかも知れませんが、それも違います。

どちらかというと6ヶ月後の景況感がマイナスになった時というのは、最悪期の入り口に差しかかったことを意味するのかも知れません。

2001年も2009年も6ヶ月後の景況感がマイナスになった直後に、株価は急落する展開が待っています。

次のグラフは2009年の米国株S&P500の株価ですが、サブプライム・リーマンショック後の景気後退の終盤にさしかかった時期でNY連銀の6ヶ月先景気指数がマイナスになりました。

この6ヶ月先景況感がマイナスになった期間だけで、株価は30%下落しています。

朗報なのはこのマイナスの時期が終われば、株価は底をつけて上昇に転じたことです。

次のグラフは2001年9月の同時多発テロの頃の株価ですが、この時期はITバブル崩壊から始まっていた景気後退の中で、NY連銀の6ヶ月先景況指数がマイナスになりました。

先程と同様に6ヶ月先景況感がマイナスになった1ヶ月間で株価は15%下落し、わずか1ヶ月で景況感がプラスになってからは株価がV字回復しています。良くない知らせとしては、このV字回復が大底にならずに、翌2002年にかけて下落が続いたことです。

いずれにしても、NY連銀の6ヶ月先景気指数がマイナスになったその月から株価は下がりやすいようです。

その原因ですが、恐らく企業が景気悪化に備えて業績見通しを下方修正したり、配当や自社株買いなどの株主還元を縮小したりして株価に悪影響が出ているのだと思います。

この先行きの景況指数のマイナスが解消されたら、一時的にしろ株価は回復しやすいので、回復した時に更に大底をつけたかどうかを確認するのが良さそうです。

>>【関連記事】米国株の底値の見分け方


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