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前FRB議長イエレン氏、0.25%の利下げ支持を表明に覚える感慨。

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4年前の利上げ決断は、今このときのために

10年ぶりにアメリカの政策金利の引き下げが予想されている7月30-31日のFOMの会合を前に、前FRB議長のジャネット・イエレンさんが0.25%の利下げを支持すると表明しています。

あのイエレンさんが利下げを支持するのは、少し感慨深いです。

というのも、前イエレン議長は2014年から2018年までの4年間FRB議長を務めましたが、イエレンさんの議長時代のFBRの主な仕事は、今とは全く逆で、金利の利上げのタイミングとペースをコントロールすることでした。その目的は、将来アメリカ経済が景気後退局面におちいるその時のために、金融政策の選択肢と余地を残しておきたいというものでした。

そのイエレンさんが利下げ支持したというニュースを聞いた時、今が2015年の利上げ局面で考慮していた「その時」なのかと自然と考えてしまいました。

思わず時代の変化を感じるニュースでした。

イエレン氏の利下げに対する考え方

0.25%の利下げ支持と同様に明らかになったイエレンさんの考えをまとめると次のようになります。

  • 世界経済の弱さ、アメリカ国内のインフレ率の低さを見るに、0.25%の利下げは支持できる。
  • アメリカは世界経済の一部なので、ヨーロッパやアジアで起こっていることはアメリカに影響を与えうる。
  • 2019年7月にの利下げは、今後状況が変わらない限り、緩和サイクルの始まりを意味するとは考えていない。

2点目と3点目については、少し説明が必要なので、補足します。

「世界経済の弱さ」を金利引き下げの理由にする新しさ

まず2点目についてですが、これをあえて発言していることは少し意味があります。

元々伝統的なFRBの目的は「アメリカ国内の雇用の最大化」と「アメリカ国内の物価の安定」です。なので、金融政策を決める際には、通常は失業率や物価などアメリカ国内の指標を最重要視して判断します。

しかし、2019年7月現在のアメリカは、インフレ率は目標の2%を下回るものの、失業率は記録的な低水準で利下げを意識する段階ではありません。しかし、イエレンさんは「世界経済の弱さ」も利下げの根拠になると、従来のFRBの基準に問わられない考え方をしています。(最近のFRBにはこの考え方のメンバーが多い気がします)

世界経済の弱さについての関連記事:2019年9月にはついに欧州も。世界の中央銀行は続々と緩和策の実施へ。

年3回の利下げを期待する市場の考えに釘を刺す

イエレンさんが主張した3点目の「7月の利下げが、今後の緩和サイクルの始まりを意味しない」とあえて言っている背景には、市場の7月利下げをきっかけに2019年内に合計3回の利下げを行うという期待があります。

FRBの何人かのメンバーは、7月利下げしても今後利下げを段階的に続けるとは限らないと発言していますが、イエレンさんもその立場のようです。

7月の利下げはほぼ既定路線ですが、7月以降の利下げについては、まだまだFRBと市場の期待の間に大きなギャップがあります。市場はすでに年数回の利下げを見込んだような値動きをしているので、もしも7月以降に利下げを実施しないようだと、どこかで株価が下落して調整が入る気がします。

参考記事:7月FOMCは10年ぶりの利下げを視野も、市場との認識で埋まらない溝。


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