11月のアメリカの金融政策を決める会議(FOMC)が行われました。
この会議で決まったことについては取り上げるほど内容があったようには見えないのですが、その後のFRBのパウエル議長の会見では少し気になる点があったので取り上げたいと思います。
この記事のポイント
- FOMCでは事前の予想通り政策金利が維持されることが決まった。
- FOMCでは利下げについて全く検討されなかったが、FOMC後の記者会見では利上げの終わりを意識させるような発言をパウエル議長が行った。
- パウエル議長は銀行救済プログラムの延長を否定。2023年3月以降に銀行が流動性で困らないかが注目になりそう。
11月FOMC
11月のFOMCでは政策金利は維持が決まりました。これ自体は多くの人が予想していたことなので何も驚きはありませんでした。
また、今回のFOMCの声明文には大きな変更点はほとんど何もありませんでした。前回からの変更点は冒頭に数行だけ書かれたアメリカ経済の強さについてのコメントに集中しています。
変更点の多かった段落は、要約するとアメリカ経済が強かったということを言っています。特に最近発表された第3四半期のGDP成長率はとても高かったので、それらについてコメントしているようです。
最近の経済指標は、第3四半期に経済活動が力強いペースで拡大したことを示しています。雇用の伸びは年初から緩やかになっていますが、堅調で失業率も低いままです。インフレは依然として上昇しています。
ただ、アメリカの景気の強さがこれからも続くのかについては投資家は疑問に思っているようです。
このFOMCが終わる数時間前にADP雇用統計やISM製造業指数が伝えられると、景気が悪くなると買われる米国債が買われました。
昨日の投資家はFOMCで話される金融政策よりもアメリカの景気鈍化のニュース(予想に届かなかったADP雇用時計や雇用悪化を示したISM製造業指数)に反応しているようにも見えました。
アトランタ連銀の第4四半期のGDP予想モデル(GDPNow)を見ても、ISM発表後に急低下していることからアメリカの景気についてはそれほど楽観視しないほうが良さそうです。
パウエル議長の発言
今回のFOMCでは金融政策の変更点はありませんでした。そして、そのような政策変更の時期にはまだ遠いようです。
それはFOMC後に記者会見を行ったパウエル議長の発言からもわかります。
我々は利下げについて考えてもいないし、話し合ってもいない。(中略)バランスシートの縮小させるペースを変えることも考えていない。
ただ、利下げまでは遠いとしても、利上げ終了の時期は近いことを次のようにほのめかしています。
今回の利上げサイクルはかなりのところまで来た。この利上げサイクルの終わりは近づいている。
昨日はこの発言で米国債が買われる動きが加速したと思われます。以前にも話ましたが、利上げが停止されれば、基本的には短期債も長期債も米国債が買われて安くなるからです。
上のグラフはコロナ前の2010年代後半の利上げ停止時の様子をグラフにしましたが、利上げ停止少し前から米国債が買われ始めて利回りが低下している様子がわかります。
気になった点
ちょっと気になったのはバンクタームファンディング(BTFP)という制度についてのパウエル議長の発言です。
BTFPは今年の3月に銀行危機が起こった際にFRBが作った銀行救済制度です。これを利用すれば銀行は国債を担保に(国債が値下がりしていても額面どおりに)資金を借りられます。
制度が始まった時期から資金を借りられる期限は1年だったのですが、どうもこの制度の延長されない模様です。
我々はBTFPプログラムを延長させることについて考えたことことは本当に一度もない。
この制度がはじまった3月の時点から、私は勝手にこの制度はどうせ延長されるものだろうと思っていました。もしもこのプログラムが延長されないなら、来年3月から銀行は借りていた資金を返済しないといけなくなります。
現時点でこのプログラムを利用して1100億ドル(15兆円)が借りられているので、銀行は来年3月以降この返済をしなければならないとなると結構な負担になると思われます。
前から銀行の危機はまだ終わっていないという話をしてきましたが、次にその時期が来るとしたら来年3月前後がどうも怪しそうです。