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FRB追加支援策で株価上昇も、中長期的に注意したいデメリット。

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6月15日の米国株市場は最初こそ大きく下落していたのですが、中央銀行のFRBが個別企業の社債の買い入れを発表するなど追加の支援策を発表したことで、結局は前日比でプラスに転じました。

先週から大きく株が下落する流れがありましたが、FRBが何かしらの支援策を発表して、結果的に株式市場が回復するだろうというのは、ある程度予想通りの展開でした。

こんな展開が続くと「FRBが支えてくれるなら、何も考えず全力で株に投資すればいいじゃないか」という考えが生まれそうですが、FRBの政策もメリットばかりではありません。

コストのない政策はないです。

今のアメリカの企業は社債が歴史的な水準にまで高まっていますが、今回のFRBの支援策は「社債をより借りやすくなることのデメリット」も含まれているように思います。

この記事のポイント

  • 株式市場などのリスク資産が下落したところに、FRBは追加で支援策を発表した。その結果は、株価に大きな上昇が見られた。
  • FRBは発表した社債購入の追加策は、短期的には新型コロナウイルスで業績が低迷する企業を助けるメリットがある。一方で、既に高い米国企業の社債比率を更に高める恐れもあるので、中長期的には注意が必要。
  • 過剰な債務は企業の成長鈍化に繋がり、また次の債務危機の規模を大きくするデメリットがある。

追加支援策を発表したFRB


中央銀行のFRBは個別の米国企業の社債を買い取る追加の政策を発表しました。

FRBの支援策の中身はここで説明するよりも、ニュースサイトを確認したほうが正確なので、ここでは触れません。

>>FRB、広範な米社債買い入れ開始へ-緊急融資プログラムの一環(ブルームバーグ)

今回のFRBの発表については、次の3点を抑えておけば良さそうな気がしています。

FRBの追加社債購入

  • FRBは社債ETF(上場投資信託)だけ買っていたが、さらに個別企業の社債を購入して市場に資金を供給すると発表した。
  • 株式市場も社債市場も好感して価格が上昇した。
  • 米企業は社債を発行しやすくなる一方、既に高く積み上がった社債はさらに膨らみやすくなった

FRBの社債の追加購入のデメリット


今回のFRBの政策のメリットはわかりやすいです。

新型コロナウイルスで業績が悪化している企業でも社債が発行しやすくなるはずで、これは社債の投資家や株式投資家にとっても良い知らせです。

一方で、デメリットは少しわかりにくいかも知れません。一言でいうと、FRBの助けで借金がしやすくなって米企業が社債を増やすと、将来の利益が減ったり、将来の成長率が下がったりする恐れがあると思っています。

FRBの社債購入がもたらすデメリット

  • 2010年代の低金利の時代を背景に社債が膨らんでいた米国企業が、FRBの助けを借りて更に社債を増やしやすくなった。
  • 社債が多くなると、景気回復期に利益を出しても返済に当てて利益が減る。返済に当てた結果、将来の投資が減り成長率が鈍化する。
  • [企業の利益成長] > [社債規模の成長]なら問題にはならないが、新型コロナウイルスの景気低迷はしばらく続き、経済の本格回復は1-2年後と予想されているので、しばらく米企業の社債負担は増える恐れがある。
  • (今はまだその兆候はないが)もしも次に債務危機が訪れた時に、米国企業の社債規模が大きい場合は損失規模も大きくなる。

アメリカの社債規模はまだ新型コロナウイルスがピークを迎えていない2020年1-3月の段階で、かなりの高水準でした。

以下は、アメリカ企業の社債のGDP比ですが、既に2020年1-3月期で過去の景気後退(灰色の期間)の最悪期を超えています。

米国企業の債務GDP比は過去の景気後退時の水準を既に超えている

上記のグラフの最新版はこちら

企業は既に社債が多いことを知っていても、新型コロナウイルスで業績が不透明なので資金を確保するために、ただでさえ社債を増やさざるを得ない事情があります。

FRBが追加社債購入でこうした企業を支えるのは短期的にメリットが大きいですが、社債の増加を加速させることに繋がりそうです。

最後に

FRBの追加社債購入は中長期的に見た場合に、企業が社債を発行しやすくなって債務が膨らみ、米国企業の成長率鈍化や次に債務危機が起こった場合に損失規模が大きくなるなどの、デメリットもありそうです。

デメリットがあるからといって今すぐ株を売る必要は全くないと思っていますが、FRBが何でも助けてくれると思うと中長期的には痛い目にあうので、長期投資家ならいずれ遭遇するかも知れない問題として、米国株に投資を続けながら頭の片隅で警戒したいと思います。


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