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「ITは今後も使われ続けるから、ハイテク株はいつでも買い」なのか。

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「ITは今後も使われ続けるから、ハイテク株はいつでも買い」
「P&Gやマクドナルドは世界の人口が増えて買われ続けるから、株はいつでも買い」

投資をしているとこういう話を聞いたことがあると思います。ひょっとすると、私も何年も前にどこかで言ったことがあるかも知れません。

この考え方は、10年以上の長期で見た場合には、そこそこ間違っていないはずです。恐らく10年以上投資していれば、現金で持っている場合よりは投資でリターンを出している確率のほうが高いと思います。

ただし、多くの投資家は10年よりもずっと短い期間でリターンが出ることを望んでいます。

その場合、「サービスや製品が使われ続けて売上が伸びつづける」という理由だけで株を買っても、すぐに投資でリターンがでるかどうかはわかりません。

この理由だけは、「割高かどうか」や「期待リターンが十分あるか」という視点が足りないからです。割高な状態の株を掴んでしまうと、かなり長い期間でリターンを出せずに苦しむことになりかねません。

この記事のポイント

  • 「製品・サービスが使われ続けるから、この銘柄は買い」という考え方だけでは、投資でリターンを出すのに十分ではない。
  • 賭け事ではあまりに人気があるとオッズ(期待リターン)が下がるように、株式投資でも人気があると割高になり期待リターンが下がる。もしもあまりに割高な株を買ってしまった場合には、リターンどころか損を出す。
  • 2020年の米国株は過去10年で最も割高。ただ、金融緩和のおかげで米国債のほうがもっと割高で、国債から株に資金が向かっているため、株価は高値でも崩れていない。

オッズ(期待リターン)という視点


競馬やToToなどの賭け事の世界では、あまりに人気があるとオッズ(当選した場合の配当金の倍率)が下がって、期待リターンが下がってしまいます。

株にもこのオッズと似たような仕組みがあります。

「この企業のサービスは使われ続ける」と思える強みがある企業でも、あまりに人気が出て株が買われ続ければ割高になってしまい、株を買っても期待できるリターンは小さくなってしまいます。

つまり、投資は「どの企業を買うか」を選ぶだけでなく、「期待できるリターンが高い状態で買うか」も重要になってきます。

以下の記事では、株の投資には「何を買うか」と「いつ買うか」が重要だと話をしましたが、「何を買うか」で良い銘柄を選択したとしても、買うタイミングで割高なものを掴んでしまった場合には、それほど儲けは得られなくなります。

割高に見える2020年の米国株

2020年はハイテク銘柄が株価を上げていて、このまま行くとITバブルになるのではないか、既にバブルに入っているのではないか議論されることがあります。

ハイテク株だけがバブルならIT銘柄を避けて投資すれば良いだけなので話は簡単です。

しかし、ハイテク株ほどではないにしろ、そもそも米国株全体が買われすぎて割高になり、期待リターンが低くなっていることは、個人的にはかなり心配しています。

2020年11月時点の米国株S&P500の割高度(Forward PER:株価を1年後の予想一株利益で割った値)を見てみると、過去10年で今年はもっとも高くなっています。

(1÷Forward PER)を計算すると、S&P500のだいたいの(インフレ調整後の)期待リターンが得られるのですが、過去10年間の平均ではS&P500の期待リターンは6.4%ほどあったのに、今では4.6%に減っているのはかなり気になっています。

ハイテク銘柄と非ハイテク銘柄にわけると、明らかにハイテク銘柄は割高ですが、例えば、私が保有しているマクドナルドやP&Gを見ても、過去数年間で最も割高になっていて米国株全体に割高感が広がっています。

なんで割高なのに米国株に投資しているのか

「じゃあ、割高だと分かっていてなんで、米国株に投資しているの?」という疑問が湧くかも知れません。

(1)米国株以外に魅力的な投資先がないから、(2)アメリカが金融緩和を続けている間は割高でも株価が下がりにくいからというのが、その理由です。

先程から2020年は米国株が割高だと話をしてきましたが、米国債はもっと割高です。米国債は中央銀行のFRBが大量に購入して、期待リターンが大きく下がってしまったので、インフレ率を差し引くとマイナスのリターンになるほど事態が深刻です。

「リターンが確実にインフレ率に負けて実質マイナスリターンになってしまう国債」と「4.6%のリターンが得られる米国株」なら、投資家は割高だと思っていても米国株に資金を置いておこうとするはずです。

これがFRBの国債大量購入やゼロ金利などの金融緩和が続く限り、株高が維持される仕組みです。

さいごに


途中でだいぶ脱線したので、ここまでの話をまとめます。

「〇〇は使われ続けるから、この株は買いだ」という視点で投資先を探す場合、良い企業は選べているかも知れませんが、それだけでは割高な状態で投資してしまい、低リターンに苦しむことになるかも知れません。

投資でリターンを出すには「良い投企業」を探すだけでなく、「できるだけ安い価格」で買うことが必要だからです。

次なる疑問は、2020年の米国株は買いか否かですが、これは判断が難しいです。過去10年に比べるとハイテクはもちろん、ハイテク以外の株も割高になっていて投資するタイミングとしてはあまりよろしくない様子です。

私は2019年の半ばまでは100%米国株に投資していましたが、2020年では約50%までしか米国株を保有していないのも、米国株の割高を警戒していることが背景にあります。

しかし、「金融緩和が続いている限り、株の大きな下落は起こりにくい」という上の文章で話した説が正しいなら、まだもう少しだけ株を持っていても良いかも知れません。

その場合の購入銘柄は、コロナでダメージを受けた銘柄が候補になるかも知れません。2021年からワクチンが効果を発揮してコロナが収束するなら、コロナでダメージを受けたまだ割高ではない株(評価が著しく低い株)なら、投資でリターンを得られる可能性がまだあります。

タイトルにある「ITは今後も使われ続けるから、ハイテク株はいつでも買いなのか」については、個人的には今は買いではないと思っています。

それどころか、普段ならあまり割高にはならない歴史ある大企業(P&G、マクドナルド、ウォルマート)ですら、積極的に買いにいくのはやや難しいです。

コロナでダメージを受けた銘柄や一部の低迷している株など、割高なものをさければ米国株でもリスクに見合ったリターンが期待できるものはわずかに残っているという状況だと思っています。


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