リセッション突入の判断基準の一つに、失業率が一定以上増えるというものがあります。
しかし、失業率は月に1回しか発表されないので、投資家が機敏にアメリカのリセッション突入を感じ取るにはスピード感が足りません。
月1回の失業率の代わりに、毎週の発表される新規失業保険申請件数を見るという考えもありますが、それでは新規失業保険申請件数がどうなればリセッション突入と言えるでしょうか。
この記事のポイント
- 1990年代以降のアメリカのリセッション突入時には、新規失業保険申請件数は35万人前後を記録していた。
- 現時点で新規失業保険申請件数は(4週間平均で)24万人。リセッションまでにはまだしばらく時間がかかりそう。
アメリカのりセッション入りを判断する材料について
アメリカがこれからリセッション(景気後退)に入るかどうかの判断基準になるのは、失業者がどれだけ増加したかだと思います。
アメリカでは失業率が過去12ヶ月の最低値から、0.5%ほど上昇すると大抵の場合でリセッションに突入していることは、過去のブログでも書きました。
ただ、失業率は月1回しか発表されないので、もう少し頻繁に公開されているデータで何か判断材料になるものがほしいです。
そこで注目を集めるのが、毎週木曜日に発表される新規失業保険申請件数です。
最近の新規失業保険申請件数を見てみると、どうも底打ちして上昇トレンドに入ったように見えます。
あとはこのトレンドが継続して失業率が底から0.5%分上がるまで雇用が悪化すれば、アメリカはリセッション入りするのだろうと思います。
新規失業保険申請件数の見方
さて、問題は新規失業保険申請件数がどれくらい上昇すれば、アメリカはリセッションに突入したと判断できるでしょうか。
ちょっと試行錯誤してみたいと思います。
新規失業保険申請件数の上昇率で考える
まずは手始めにこの1年間の新規失業保険申請件数の底値から、現時点は何%上昇しているのかを調べ見ました。
下の図の通り、現時点でのそれは25.9%だということがわかりました。
この25.9%が大きいのか小さいのかよくわからないので、過去のリセッション時のデータと比べてみます。
下の表を眺めると、新規失業保険申請件数は18%から40%ほど上昇したタイミングで景気後退に突入している様子が見えてきます。
新規失業保険申請件数 | 底値から何%で景気後退入りしたか |
---|---|
1990年7月(湾岸戦争) | +26.0% |
2000年3月(ITバブル崩壊) | +40.2% |
2007年12月(世界金融危機) | +18.8% |
今回 | +25.9% |
ただ、このデータだけ見ると、現時点で新規失業保険申請件数が底から25%も上昇しているなら、リセッションがかなり近いことになってしまいます。それに、「18%から40%ほど上昇したタイミングで景気後退に突入」という過去のデータはバラツキが大きすぎて、判断基準としては使いにくいです。
また、アメリカのリセッションはそれほど差し迫っている感じはありません。月1回の失業率の上昇を見ても、まだ底から0.1%しか上昇していないので、リセッション入りはまだしばらく先だと思われます。
ここまでで新規失業保険申請件数が底から何%上がったかという見方だけでは、リセッション突入のタイミングを測るのは難しいことがわかりました。
新規失業保険申請件数の絶対値で考える
もっとシンプルに考えて、過去のリセッション突入時に新規失業保険申請件数が何万件あったのかを調べてみたのが以下です。
リセッション突入時期 | 新規失業保険申請件数 |
---|---|
1990年7月(湾岸戦争) | 36万人 |
2000年3月(ITバブル崩壊) | 37万人 |
2007年12月(世界金融危機) | 34万人 |
現在 | 24万人 |
これを見ると、新規失業保険申請件数が35万人前後になったときに、アメリカはリセッションに突入してきたことがわかります。
現時点ではまだ24万人なので、リセッションが差し迫っていない様子もこれでわかります。私としては、次のリセッションの判断基準も新規失業保険申請件数が35万人を超えるかどうかという見方で良い気がしています。