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IBMディベートAI、惜しくもチャンピョンに敗れる。

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AI vs 人間のディベート対決

とても、AIとは思えない白熱したディベートでした。

2019年2月12日、IBMの年次イベントThink 2019のweb公開イベントの中で、ディベートができるAI ”Project Debater”と2012年のヨーロッパ・ディベートチャンピョンでディベート勝利回数で世界記録を持つハリシュ・ナタラジャン氏(Harish Natarajan)が討論を行いました。「幼稚園・保育園での教育に助成金を支給すべきかどうか」について、AIが賛成側、チャンピョンは反対側の立場で、各自の論を4分で述べるファーストラウンド、4分で反論を行うセカンドラウンド、2分間で結論と論拠をまとめるファイナルラウンドの3つのラウンドで対決しました。

結果は、視聴者の投票でAIは破れましたが、十分に白熱した良い議論を展開しました。

AIは「助成金を支給すべき」という立場で、幼稚園・保育園の教育への投資が収入と健康への好影響と犯罪に巻き込まれる危険の減少に影響する研究データを引用して、論を展開していました。

一方、チャンピョンのハリッシュは、幼稚園・保育園などの就学前教育の助成金は貧困の根本的な解決にならないとして反論しました。加えて、既に教育を受けている可能性が高い中流階級への単なるお金の譲渡になるとの主張をしました。

また、チャンピョンは単に論を展開するだけでなく、話方に抑揚をつけたり、直前にAIが主張した内容を受けての発言をするなど、話し方の旨さも目立ちました。この話し方については、チャンピョンが完全に上だったと思います。

一方で、このAIが使えないかというとそれもまた違うと思いました。主張に対して膨大なデータから正しく論拠を持ってこれる能力は十分実用的で、企業の意思決定のスピードを上げる用途であれば、既に使えるレベルにあると感じました。

ディベートAIクラウド提供予定も広がる不安

将来、IBMはクラウドでディベートAIの機能を提供すると公言していますが、それにはまだまだ時間がかかるかも知れません。

なんせ今回のAIは、普通のノートPCの数十台分に当たるCPU28コア、768GBメモリを積んでいて、検索するテキストデータだけでも2TBと膨大な量を扱っているため、万人に公開するにはちょっと一工夫、必要そうです。

また、2011年にクイズ・チャンピョンを破った時のワトソンは、クラウドで機能を公開しても部品としての公開にとどまっていて、あの部品達をクイズチャンピョンを破るくらい成熟させるのは、一握りの天才による熟練の技が必要でした。(回りくどく言いましたが、つまりそんなことは不可能でした。)

今回のディベートAIもクラウドで提供される場合に、部品としての提供にとどまり、誰も使いこなせないものになると、宝の持ち腐れになりそうです。

弱小投資家ですが、ほんの一部でもIBMに投資している身としては、ディベートAIを公開してもエンジニアが使ってくれるものなのか心配事が続きそうです。この素晴らしい技術が万人にとって使いやすい形で提供されるよう、提供の仕方、価格、プロモーションなどのIBMが近年苦戦しているプロデュース能力が試されます。


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