アメリカの鉱工業生産指数が前年比マイナスになったことを受けて、景気後退のシグナルが点灯したという記事を2023年7月にかきました。
しかし、それから数ヶ月経ち、12月の鉱工業生産指数ではこの景気後退シグナルが消えたようです。
私はこのシグナルは一時的に消えただけだと思っていますが、12月時点では少なくともアメリカは景気後退から遠ざかったと言えるので、ここで触れておきたいと思います。
この記事のポイント
- 12月の鉱工業生産指数は予想以上に強いデータが示された。
- 12月の結果を受けて、鉱工業生産指数は前年比でマイナスからプラスに復活した。
- 景気後退期には鉱工業生産指数がマイナス成長になることから前年比マイナスは景気後退のシグナルとも言えたが、12月でシグナルは消灯した。
予想以上に強かった12月の鉱工業生産指数
アメリカの製造業や鉱業などの生産活動を数値化した鉱工業生産指数の12月データが発表されました。
前月比でマイナス成長の低迷が予想されていたのですが、予想に反して12月は好調でした。
- 予想:前月比マイナス0.1%
- 結果:前月比プラス0.1%
- 前回:前月比+0.2%から0.0%に下方修正
鉱工業生産指数なんて注目して何になるんだと思う方もいると思いますが、少し面白いデータがあるので紹介します。
鉱工業生産指数と景気後退の関係についてです。
景気後退のシグナルは消えたが
この鉱工業生産指数は前年比で見ると少し面白い傾向があります。
下の図でアメリカの景気後退期を灰色に塗りつぶしていますが、その景気後退期では鉱工業生産指数が前年比でマイナスになっています。
細かく見ると鉱工業生産はマイナスでも景気後退にならなかった時期はあるのですが、それでもアメリカの景気後退と鉱工業生産指数は無関係ではなさそうです。
よって、昨年2023年7月に鉱工業生産指数が前年比マイナス成長に転落したしたときに、このブログで「景気後退のシグナルが点灯した」と書いたのでした。
しかし、それからアメリカの景気は予想以上によく持ちこたえています。以下のグラフは過去1年間の鉱工業生産指数の前年比をグラフにしたものですが、12月に再び前年比プラスに返り咲いて景気後退シグナルは消灯しています。
これを見る限り、12月にアメリカは景気後退が遠のいたように見えます。
さいごに
さて、ここでは12月にアメリカの鉱工業生産は予想外の成長を見せて景気後退が遠のいたという話をしました。
12月についてのことなので既に過去の話にはなりますが、12月もアメリカ経済は底力を発揮した模様です。
少し気になるのでは、鉱工業生産指数は12月まで好調でしたが、1月に製造業を中心に景気は悪化したかもしれないということです。
もちろん、まだ1月の製造業の景気については(ニューヨーク連銀が調べたニューヨーク州だけの不調かもしれないなど)まだ不確かなことが多いので、これから他のデータでも確かめていかなければいけないところだと思います。
最後に蛇足になりますが、アメリカの経済の現況について思っていることを次に列挙しておきます。
- (少なくとも12月までは)鉱工業は悪いなりに耐え続けている。
- (パートタイムが増えてフルタイム雇用が減るなど)雇用は以前ほどの強さはないが、まだ崩れてはいない。
- 底堅い雇用に支えられて、消費の拡大もまだ続いている。
今のところ、変曲点になり得るのは今年5月頃までに起こるだろうと思われる「リバースレポの枯渇」と「アメリカの消費者がコロナ流行初期に蓄えた余分な貯蓄を使い切ること」で、これを経てジワジワと消費が減り、雇用も脆くなるのだろうと思っています。
だから、12月に鉱工業生産指数が前年比プラスに転じたと言っても、これが一時的な回復である可能性は十分あるのだろうと思っています。