新しい月になり、先月のアメリカの経済の様子を表すデータが発表され始めているので見ていきたいと思います。
まず、この記事で触れるのはISM製造業指数です。
この数字が悪いと製造業だけにとどまらずアメリカの全体の景気が危ぶまれるのですが、今月は予想よりも景気拡大が鈍いことがわかりました。
ただし、「悪いニュースは良いニュース」と言わんばかりに米国株は大きく上昇しています。
この記事のポイント
- 9月のISM製造業は予想を下回って、50.9だった。景気悪化を示す50未満がいよいよ近づいてきた。
- ISMが50を下回ってしばらくすると、企業利益が悪化し、景気後退に入る恐れが出てくる。
- 景気悪化が懸念されて長期金利が下がって、米国株が上昇した。
景気悪化が迫っているアメリカ
ISM製造業指数はアメリカ企業に毎月景気のアンケートして、景気の強さを数値化したものが発表されます。
前月よりも景気が良ければ50以上、景気が悪化しているなら50未満の数字になります。
今月は50は超えたのですが、かなり低調な数字になりました。
- 予想:52.5
- 結果:50.9(前回52.8)
上のグラフを見てもわかるように、アメリカの製造業の景気は着実に50に近づき、今月はついに50台に突入しました。
また、内訳を見ても内容が悪かったです。新規受注は再び節目の50を下回って、前月よりも悪化している様子が見受けられます。
また、新規輸出受注も悪化していて、製造業編の需要は弱まっているようです。
その他、目についたものを取り上げると今まで高い伸びが続いていた支払価格指数は伸びが収まりました。これからアメリカのインフレは製造業のモノではなく、人件費が多くを占めるサービスが中心になりそうです。
一時的な株価上昇
製造業の景気ばかり書いていると、「アメリカの製造業の景気の強さを知ったところで、投資にどう活かせるんだ」と言われそうなので、これから少し投資家目線で話をします。
今回のISMのデータはかなり悪かったと思います。上のグラフで見たように、2021年からISM製造業指数が悪化してきましたが、ついに景気悪化の50割れが見えてきてしまいました。
投資家にとって問題なのは、この50を下回るタイミングで企業の利益の伸びがマイナス成長になる傾向があることです。
企業の利益が減れば、当然株価は下がりやすくなります。
先日書いたように現時点では1年後の利益は4%ほどしか調整されていませんが、景気後退が来るなら20-30%の低下が予想されます。
2022年は年始から株価が下がってきましたが、それは(実質)長期金利の上昇によるものでした。
2022年半ばから「企業利益が下がり始めれば、株価下落が大きく株価は下がる」と言ってきましたが、金利とは質の違う下落がISMの50割れとともにあと数ヶ月で始まるかも知れません。
株価上昇は一時的
「そうは言っても、ISMの悪いデータが発表された日に株価は上昇したじゃないか」という声もあがりそうなので、昨日の株価上昇についても書いておきます。
昨日の株価上昇は、「9月に株価が下がりすぎた反動」と「景気悪化になると下がってくる(景気悪化に備えて国債買いが起ったことによる)長期金利の低下」が原因だと思っています。
下のグラフを見てみると、最近は少し前まで急上昇していた実質金利にピークをつけた兆しが見られます。
現段階の米国株はまだ企業利益の減少が本格的に始まっていなく金利に反応しているので、このまま実質金利の低下が続けば短期的には株価は上がりやすいです。
しかし、それも企業利益が本格的に減少するまでの間です。
もしも、今後数ヶ月でISMが50を下回って企業利益が大きく減少するような展開になれば、その時は多くの景気後退でも見られたように大きく株価が下がるのだと思います。
今は株価が上昇していますが、数ヶ月以内にはまだ大きな下落が控えていると思っています。