毎月はじめに発表されるISM製造業指数と呼ばれるアメリカの製造業の景気を確認してみたいと思います。
既にアメリカ製造業の景気は冷えこんでいるので、これ以上確認する点も多くない気もするのですが、毎月の景気のバロメータなのでサラッと目を通したいと思います。
この記事のポイント
- 5月もISM製造業指数は50を下回って、製造業の景気が悪化していることを示している。
- 新規受注などの先行きに影響するような数字も悪いが、雇用だけは前月よりも増加していることを示している。
- アメリカ全体の雇用の過熱が収まるまで金融引き締めを続けた場合には、製造業の景気は更に悪化する恐れがある。
さえない製造業の景気指数
5月のISM製造業指数ですが、前回よりもさらに下がっていました。
- 予想:47.1
- 結果:46.9
ISM製造業指数は50を超えていれば景気拡大してることを意味するのですが、既に2022年後半から長いこと50を下回る月が続いています。
また、新規受注を見ても低迷が続いているところを見ると、まだまだ改善の兆しは見えていないようです。
それでもアメリカが景気後退を免れているのは非製造業で景気拡大が続いていること、さらにアメリカ全体で雇用が強いことが原因と見られます。
既に見たようにISM製造業の数字は悪かったのですが、内訳を見てみると雇用はまだ50を超えていて採用を増やしているような印象を受けます。
なお、今の製造業にとってはインフレは問題にはなっていないようです。仕入価格指数は4月から9ポイントの大きな減少で44にまで一気に低下しています。
まとめると、アメリカの製造業は既に不調でインフレも鈍化している一方で、人手不足が起こっているからか雇用だけはまだいくらか強いという印象を受けました。
リセッション到来で製造業はさらに冷え込むか
FRBのスタッフたちが予想しているように、これから2023年後半にかけてアメリカは浅いリセッションに入ると言われています。
しかし、ISM製造業指数を見ていると、既に製造業の景気は弱い状態におちいっています。これからアメリカ全体がリセッションに入る頃には製造業はさらに今より悪い状態になっていると言えそうです。
もしも、アメリカ全体では浅いリセッションで済んだとしても、製造業は局所的に深いダメージを負うかもしれません。
そうした場合には株はどのようになるでしょうか。少し気になるのは、S&P500の一株利益はISM製造業指数と同じような動きをする点です。
上の話をしたように、まだISM製造業指数に復活の兆しが見えないことから、S&P500もまだしばらく苦戦するのではないかと思ってしまいます。