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予想外に浮上した9月のアメリカの製造業の景気。まだ安心できない理由。

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私はアメリカの景気拡大のペースはこれからゆっくりになっていくと思っています。

しかし、昨晩ISMから発表されたアメリカの製造業の景気指数(景気の強さを数値化したもの)見ると、意外にも9月は前月よりも景気が上向いていました。

おやっと思ったのですが、よく中身を見てみるとやはり需要の伸びは鈍化しているようです。

私は「これからのアメリカは経済成長が鈍化する」という見方を維持したいと思います。

この記事のポイント

  • アメリカの製造業の景気指数は予想以上に上昇した。
  • ただし、景気指数を押し上げているのは供給遅延の拡大、雇用増加、仕入価格の上昇でどれも企業のコストやインフレ率の増加につながるようなものだった。
  • 製造業の需要はまだ強いものの、その景気拡大ペースは落ちている。

予想外に上昇したアメリカ製造業


このブログではISMから発表される製造業指数というデータを、わりと重要なものだと思って見ています。

この数字の強さを追いかけていくと「景気の好調不調」と「インフレ圧力の強まり・弱まり」がわかるからです。

今回発表された2021年9月のISM製造業指数ですが、予想以上に強い数字になりました。

  • 結果:61.1(予想:59.5)
  • 前回:59.9

私は前月よりも数字が悪化すると思っていたのですが、予想外に上昇しました。

上のグラフを見ると、8月も9月も景気指数が上昇しているなら、これからはアメリカの景気が強くなっていくのかとも思いますが、まだ安心できないことがあります。

需要の伸びは横ばいか減少

ISMのデータを詳しく見てみると、「新規受注」は横ばい、「新規輸出受注」と「受注残」は前月から伸びが鈍化するなど、需要の伸びが鈍くなっています。

項目 21年9月 21年8月 変化
新規受注 66.7 66.7 ±0
新規輸出受注 53.4 56.6 -3.2
受注残 64.8 68.2 -3.4

需要が弱まればモノが売れにくくなるので、これらは良くない兆候です。

じゃあ、一体何が今月のISM製造業の全体を押し上げたのでしょうか。

上昇した項目を見てみると、「供給遅延」「仕入価格」「雇用」が前月から伸びていることがわかります。

項目 21年9月 21年8月 変化
供給遅延 73.4 69.5 +3.9
仕入価格 81.2 79.4 +1.8
雇用 50.2 49 +1.2

実はこれらは、伸びていても(少なくとも投資家としては)それほど嬉しくないものばかりです。

供給遅延が増加すると部品の調達が遅れて生産・売上が減るだろうし、仕入価格が上がれば企業の利益は減ります。

また、雇用が前月から増加することは労働者としては良いのですが、投資家目線では企業のコストが増えることになり、両手をあげて喜ぶような感じでもありません。

それにこれら全てはインフレ圧力が強まっていることを表しています。

一旦ここまでをまとめると、今回の9月のISM製造業は全体の数字は良かったものの、細かいデータを確認すると「需要の伸びの鈍化」と「インフレ圧力の増加」が見られ、景気の鈍化とインフレの上昇が心配だなと感じました。

9月ISM製造業から読み取れること

  • 需要の伸びの鈍化:受注関連のデータの伸びが鈍化。この傾向が続けば景気拡大ペースは鈍化。
  • インフレ圧力の増大:供給の混乱(必要な物資の調達の遅れ)はまだ改善していない。高いインフレ率はまだしばらく続きそう。

中国の景気の強さと比較をしてみる

最後に、中国の景気はアメリカに先行して動いていると言われるので、アメリカと中国の最近の景気を比べてみたいと思います。

この比較は少しクセがあり、中国の製造業の景気の強さ(財新PMI)とアメリカのISM製造業指数を単純に比べても、あまり関連しているようには見えません。

しかし、少しだけ加工してみると、2つのグラフは似た動きをしていることがわかります。

中国の景気は4か月分アメリカよりも先行していると見て中国のグラフを4ヶ月分右にずらし、縦軸の目盛りを少し変えてあげると以下のようになります。

つまり、アメリカと中国は景気の強さ(縦軸の高さ)こそ違いますが、中国のほうが3-4か月先行して2つの国は同じような景気の好不調の波をたどっているようです。

それなら、最近の中国の最近の景気をみれば、アメリカの今後の景気を占うことができそうです。

もう一度先程のグラフを見てみると、中国の景気は一時的に浮上することはあっても、景気拡大は鈍化傾向であることがわかります。

これを見る限り、9月にアメリカの製造業の景気は回復しましたが、一時的な景気の浮上の可能性もありそうです。


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