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マネーサプライがマイナスの時代には何が起こったのか

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アメリカのマネーサプライ(通貨供給量、M2)について、このブログではたびたび「2022年から始まっているM2の急減はマズいのではないか」と書いてきました。

2023年4月時点でアメリカはM2の前年比は統計開始以来で過去最低を記録してます。

具体的にどんなマズいことが起こりそうなのかがピンと来ないので、今回少しだけ調べてみました。

統計開始前にM2に相当するデータが現在と同程度にまで落ち込んだ時代に何が起こったかを見てみると、いずれでもデフレが起こり、株価は急減しているようです。

この記事のポイント

  • 2023年4月時点でアメリカのM2は前年比マイナス4.6%を記録。1960年の統計開始以来で最低。
  • 統計開始前にM2が現時点と同程度までマイナスに落ち込んだと推計されるのは、1900年代で2回あった。いずれもデフレと株価急落を招いた。

2023年4月現在、M2は急減している

2020年にアメリカは新型コロナで落ち込んだ経済を立て直すために、ドルを大量に世の中にばらまきました。

影響でインフレが起こってしまったので、2022年からはドルを回収するために歴史的にハイペースな金融引き締めをしています。

金融引き締めの効果は大きく、世の中のドルの量を表すM2の伸びは1960年の統計開始以来で最低の伸びを記録しています。

ところで、前代未聞のペースでM2の急減すると次に何が起こるのでしょうか。

「2020年にM2が急増してから2年後にインフレが起こった。それなら、M2が急減したらこれからアメリカはデフレにならないのか」と考えるのが自然です。

そして、過去のデータを見てみると、どうもそれは当たっているように見えます。

M2前年比マイナスを記録した後はデフレへ

今のM2は統計開始が1960年なのですが、1960年よりも前の時代でも他のデータからM2を推計することはできるようで、ネットを検索しているとそういう推計をしてくれている人を何人も見つけることができます。

ここではWikipediaに乗っていたデータを借りて見てみましょう。

上のグラフを見ると、1960年以前にM2の前年比(緑の線)がマイナスになったのは、「1920年」と「1929年から1933年」の2度あったようです。

そして、その2つの時代の消費者物価を見てみると、両方ともデフレ(消費者物価の前年比がマイナス)になっていることがわかります。

先程、「2020年にM2が急増してから2年後にインフレが起こった。それなら、M2が急減したらこれからアメリカはデフレにならないのか」と書きましたが、この予想は当たっていたようです。

1920年の資産価格

ちなみに1920年の株価を見てみると、1919年から1921年にかけて30%の下落を経験しています。

また、1929年は知っている人も多いと思いますが、世界恐慌につながる株価下落があって1929年から1932年までで85%ほど下落しています。

もちろん1920年代は金本位制を取っていたはずなので、今と金融システムが全く違います。

今であれば、(のちのインフレを気にしなければ)デフレになったとしてもいくらでも金融緩和できるので、1929年のようなデフレと株価が暴落は防ごうと思えば防ぐことができます。

しかし、FRBが「まだインフレは目標の2%に向けて下がっていない」と言い続けて対応が遅れば、インフレは2%を大きく下回って一時的にデフレになる恐れになり、株の下落を招く恐れもあることは知っておいて損はないと思います。


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