過去20年間で最大規模の額でIT企業を買収
前回の記事に引き続き、IT化するマクドナルドに関する記事をお届けします。
【IT化が進むマクドナルド】音声認識を使ったドライブスルーの挑戦。
前回は、音声認識を使ったドライブスルーの取り組みを紹介したのですが、ほとんどの人が分別に最適化されたゴミ箱デザインの話しか覚えていないと思われますので、今回はそういうことが無いように真面目に記事を書きます。
さて、マクドナルドの株を持っていて企業の動きをチェックしている人は知っていると思いますが、2019年にマクドナルドは久々の買収をしました。買収した企業はレストランなどの食品関連会社でもなければ、物流の会社でもありません。
ダイナミック・イールドというIT企業です。買収にかけた金額は、3億ドル(330億円)で、マクドナルドにとって20年間で最大規模の買収だという点に、本気度がにじみます。
ダイナミック・イールドはディスプレイのメニューの表示を切り替える技術を持っています。そして、このIT企業の技術を使ってマクドナルドが目指しているのが、時間帯・気温・天気・売れ筋商品に合わせてディスプレイのメニューの内容、表示の仕方を変化させる「最適な商品を提案するメニューボード」の取り組みです。
最適な商品を提案するメニューボード
マクドナルドのCEOが最近事ある毎に、店舗に来るお客さんに新しくて楽しい顧客体験を提供したいと言っています。
ここ数年のビジネスの流行りとして、顧客体験(UX)を大事にする企業が増えています。以下の記事でその理由を触れましたが、マクドナルドもその流れに乗っていると見えます。
新しいユーザ体験UXとは何か。企業と株主がUXを追求すべき理由。
その新しい体験を生み出す一環として、アプリや前回の記事の音声認識を使ったドライブスルーなども取り組んでいるのですが、商品提案するメニューボードもその取組みの1つです。
マクドナルドが買収を発表したダイナミック・イールドが持つ技術を使えば、時刻帯・天気・店舗内の列の長さ・人気メニューの傾向に合わせて、メニューディスプレイに表示される商品と詳細情報をカスタマイズすることができるようになります。
例えば、寒い日にはホットコーヒーを全面に押し出し、暑い日にはアイスクリームの表示するなど、その日の状況に合わせて「最適なもう一品」の提案を自動的にやってのけるようになります。
賢くなるメニューボード
そしてここからが重要なのですが、このメニューボードの商品提案は使えば使うほど賢くなる人工知能の技術を搭載しています。
メニューボードで表示したおすすめ商品の情報と、その時にお客さんの購買データを組み合わせてた情報を大量に使って、提案の内容を自動で検証していく仕組みがあるのですが、ここで必要になるのは、検証のための大量の情報です。
その点、マクドナルドは世界で毎日6800万人の来店客を抱えており、メニューボードを賢くできる規模を持った企業として、マクドナルトほど最適な企業はありません。
既に、マクドナルドの最適なメニューボードへの取り組みは始まっており、2019年には米国のレストランのドライブスルーに展開し、その検証を行った後、世界のマクドナルドでの利用拡大につなげる予定のようです。
また、セルフオーダーキオスクやモバイルアプリなどの顧客接点にもこの技術を展開していきます。特にモバイルアプリであれば、個人の購入履歴も追跡できるため、普段よく食べている商品履歴から商品提案もできるようになるので、売上向上の効果が見込めます。
前回に引き続き、マクドナルドのITの取り組みを紹介しましたが、結構マクドナルドが攻めていることがわかったかと思います。
ただただ、毎日変わらずハンバーガーとポテトだけを淡々と提供するのがマクドナルドではないのです。
前回ご紹介した、音声認識で機械がお客さんの注文内容を聞き取るドライブスルーの挑戦記事はこちらです。
【IT化が進むマクドナルド】音声認識を使ったドライブスルーの挑戦。