2020年も残り数ヶ月になり、世界を騒がせた新型コロナウイルスのワクチンの開発もかなり各社進んできました。
ファイザー社とバイオンテック社が共同開発するワクチンは、順調に行けば11月後半にもアメリカで緊急承認申請を行うと見られていて、いよいよワクチンの承認までカウントダウンに入ってきた印象すらあります。
>>ファイザーのコロナワクチン候補、11月後半の緊急使用許可申請目指す(ブルームバーグ)
しかし、それにも関わらず、株価の動きを見る限り、市場は有効なワクチンの誕生をまだ確信していないようにも見えます。
この記事のポイント
- アメリカでの新型コロナウイルスの感染再拡大が続いている。しかし、その米国株はこのニュースにはあまり反応していない。
- 「ワクチンの開発も進展しているため、感染拡大しても株価は下げていない」という意見も一部には見られるが、市場がワクチンの進展を見込んでいるかはやや疑問。
- ワクチンで恩恵を受けるはずの航空・ホテル・銀行などの株価回復がかなり遅いことを見る限り、市場は効果の高いワクチンの誕生を確信するには至っていないように見える。むしろ、本当にコロナを克服できるワクチンなのか、その誕生はいつになるのか見極めるために様子見を続けている印象すらある。
私はいつかは世界は新型コロナを克服できると思って、まだ市場がワクチンからの克服を確信していない段階から、航空・ホテル・銀行業界の株を買っています。
ただし、市場には私以上に賢い投資家が五万といるので、私の考えは楽観すぎで、簡単にはかつての日常は取り戻せないのかも知れません。その場合には、この投資はなかなかリターンを出せないものになる恐れもあります。
感染拡大が止まらないアメリカ
アメリカでの新型コロナウイルスの感染拡大が止まらないですね。
最近のアメリカで感染拡大が続いていることは、このブログでも既に頻繁に取り上げていますが、10月16日の新規感染者数は7万を超えるまでになっています。7万人を超えたのは、7月31日以来の2ヶ月半ぶりのことになります。
7月後半から9月半ばのアメリカは、かなり順調に新規感染者を毎日減らしてきていたのですが、この1ヶ月ほどで一気に逆戻りしてしまいました。
しかし、新規感染者が増えたといっても、それで米国株が下がっているわけではないようです。以下は直近1ヶ月のS&P500のグラフですが、好調ではないものの、感染拡大を受けて右肩下がりに株価が下がっているわけでもありません。
ワクチンの誕生をまだ確信していない市場
感染が再拡大しても、株価が大きく下げていない理由について、「新型コロナウイルスのワクチンが開発が進んでいるから、新規感染が増えても株価にそこまで悪影響が及ばない」というコメントをしているアナリストもいました。
ただこの理由には、少し疑問符がつきそうです。
新型コロナウイルスを克服するストーリーを信じて、航空・ホテル・銀行などのコロナで大きく利益が悪化した株を保有している投資家ならすぐにわかるのですが、これらの株価の回復はまだかなり遅いです。
以下のグラフで、米国株(S&P500)、金融業界ETF(VFH)、航空業界ETF(JETS)を比較してみましたが、金融や銀行業界の株価はまだまだ全然回復していません。
市場が有望なワクチンの登場する未来を描いているなら、もっと銀行株や航空株も株価を戻して良いはずです。しかし、それが起こっていないのを見る限り、市場はまだ有望なワクチンの登場を確信していないようです。
たぶん新型コロナウイルスの感染拡大で市場があまり下落していないのは、ワクチン開発の進展以外の別の理由(たとえば追加の経済支援策への期待が高まったなど)があるからです。
市場は新型コロナの有望なワクチンの承認にはまだかなり慎重なスタンスで、確かな証拠を求めているように見えます。
さいごに
この記事では、市場が新型コロナウイルスの有望なワクチンの登場をまだ確信していないのではないかという話をしました。
先日のジョンソン&ジョンソンのワクチン試験が一時中断した際に、株価が下げたことみると、市場はワクチンの登場を全く織り込んでいないわけではないようです。
しかし、コロナで深刻なダメージを受けた業界の株価を見る限り、「これを打てば大丈夫!」と言えるような有望なワクチンが出てくるかは、まだ自信がもてないようです。
投資家にとっては、コロナでダメージを受けた業界(ワクチンの登場で業績が回復する業界)に今のうちに投資しておけば、今後リターンが見込めるチャンスがまだあることを意味しています。
ただし、この投資は少しリスキーな面もあります。
本来ワクチンの開発は何年もかかるものなので、本当に効果が見込めるワクチンの登場にはまだ何年もかかるかも知れません。その場合には、業績が回復が見込めない長いこと株を持ち続けることになります。
「いつか業績が回復するなら、それでいい」と何年も持ち続けられる人なら良いですが、その場合でも投資の年率リターンは下がってしまいます。
業界全体で赤字だらけでの航空株では投資家の忍耐よりも先に、企業の現金が枯渇して、以前の業績には戻れなくなるかも知れません。
コロナからの回復を狙うこれらの株に大きく賭けるのではなく、一部投資するくらいで良いかも知れません。