今週はパウエル議長の講演(ジャクソンホール)が注目を集めていますが、それまでは少し時間があるので、今まで取り上げきれなかった企業の決算でも触れていこうと思います。
この記事で見ていくのは、1ヶ月前に発表されたマクドナルドの決算です。
今回のマクドナルドの決算は、良い点も良くない点も見られたマチマチな内容でした。
ただ、インフレが進んでいるはずなのに店舗のコストは売上よりも低い伸び率に抑えようとしていたり、丁寧な経営をしている印象があるのは良い点です。
この記事のポイント
- 4-6月期は売上が予想を下回ったものの、一株利益は予想を超えるマチマチな決算だった。
- ロシアでの営業停止で売上、利益ともに悪影響が出ている上に、インフレの対応も迫られている。
- しかし、物価が上昇している中でも、店舗にかかるコストはうまく管理できている印象。直近1年は売上成長より低く抑えている。
4-6月期の決算
マクドナルドの4-6月期の決算ですが、一株利益はアナリストの予想超え、売上は予想を下回る出来となりました。
- 調整後の一株利益:$2.55(予想:$2.47)
- 売上:$5.72B(予想:$5.81B)
ウクライナでの戦争を背景に、ロシアで店舗の営業停止にした影響が売上や利益に現れているようです。売上は残念ながらマイナス成長になってしまっています。
また、今回はロシアでの費用を計上しているために、営業利益が前年比で大きく下がってしまっています。
ただし、ロシアなどの費用がなかったものとして調整すれば、調整後の一株利益は前年比で+8%で伸びていたようです。
単位B:10億ドル | 22Q2 | 前年比 |
---|---|---|
収益 | $5.7B | -3% |
営業収益 | $1.7B | -36% |
一株利益 | $1.60 | -46% |
(調整後)一株利益 | $2.55 | +8% |
調整後の利益の結果だけ見れば、それほど悪くない内容だったと思います。
マクドナルドの好調・不調をはかるバロメーターの役割をしている既存店舗の売上成長率を見ても、アメリカでは成長が鈍化してやや苦戦しているものの、世界で見ればまだ高い伸びが続いています。
苦しい環境の中でのマクドナルド
今回のマクドナルドの決算ですが、直面している問題と規模の割には、決算の内容はそれほど悪くなかったようにも見えます。
直面している問題については、マクドナルドが決算発表で次のように今の現状を振り返っています。
わたしたちはヨーロッパでの戦争、40年ぶりの高水準に達しているインフレ、そして今まで見なかった規模での利上げに直面している。それら全てが消費者心理を冷やして、世界的な景気後退の可能性を高めている。
ロシアのビジネスでの損失や、消費者心理が冷えたのかアメリカでの売上成長の鈍化が見られることは確かですが、他の企業が苦しんでいるインフレには比較的うまく対処しているようにも見えます。
次のグラフは、マクドナルドの売上成長率と店舗関連の営業費用*の伸びを比べたものですが、最近のどの決算でも売上以上に店舗コストが上がらないような努力をしているように感じます。
(*店舗関連の営業費用とは「直営店費用」「フランチャイズ店費用」「その他レストラン費用」を足したものです)
マクドナルドだけにかぎらず米国企業を取り巻く状況は苦しそうですが、インフレに関してはマクドナルドは比較的うまく対処しているように見えます。