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ニューヨーク連銀の景気後退モデルは今は役に立たない

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これから1-2年のアメリカは必ずしも強いインフレに苦しむだけではなく、むしろ急に景気が冷え込んでインフレが抑えられる展開もあると思っています。

だからこそ、最近の記事はインフレだけではなくどれだけ景気後退(≒不況)が迫ってきているのかにも触れています。

>>今後のアメリカは「インフレのち景気後退」となるか。

そして景気後退がどれくらい近いのかを調べていて、遅ればせながら気づいたことがあります。

私は過去の景気後退を高確率で当ててきたニューヨーク連銀の景気後退モデルを信頼していますが、今回の景気サイクルでは(少なくとも現時点では)あまり役に立たないかもしれないということです。

この記事のポイント

  • ニューヨーク連銀の景気後退モデルは過去の景気後退を高い確率で予想してきた有能なモデル。
  • 10年米国債と3ヶ月米国債の利回りの差がどれだけ小さくなったかで、1年後の景気後退の確率を予想している。
  • しかし、今回は政策金利の引き上げ(利上げ)が通常よりも大きく遅れている。そのために3ヶ月国債も利回りが低いままなので、景気後退の確率にいつもより低く出ている恐れがある。

ニューヨーク連銀の景気後退モデルとは


ニューヨーク連銀は今後の景気後退の確率を予想してホームページで発表しているのですが、これが過去の景気後退をかなり正確に言い当てています。

>>The Yield Curve as a Leading Indicator(ニューヨーク連銀)

下の図で景気後退に入った時期は灰色で縦に塗りつぶされているのですが、その時期はどれも予め予想していた景気後退確率が上昇しています。

現時点で発表されている最新の景気後退確率は2022年12月の6%なので、これを信頼するなら2022年内の景気後退に陥る確率はそれほど高くないと言えます。

ニューヨーク連銀の景気後退確率が今はまだ信用できない理由


過去の景気後退を正確に予測してきたこのモデルですが、今回は(少なくとも今のところは)まだ信用してはいけないかもしれません。

今回の景気サイクルではアメリカの中央銀行FRBの利上げがかなり遅れていますが、そのことが次のような仕組みでニューヨーク連銀のモデルに影響するからです。

  • 今回はFRBの利上げが通常よりもかなり遅れている。
  • 利上げが遅れると、3ヶ月米国債の利回りも政策金利に引っ張られて低いままにとどまる。
  • ニューヨーク連銀は10年米国債と3ヶ月米国債の差を使って景気後退の確率を計算しているが、この計算が狂ってしまう。

「計算が狂う」と言いましたが、もっと正確に言えば景気後退確率が低く算出されてしまう傾向があると思います。

具体的には2022年12月の景気後退確率は6%と算出されていますが、この数字は本来ならもう少し高い数字になっているということです。

私も最近までこの事に気づかずにどこかの記事で、「2022年12月の景気後退確率はわずかに6%だから、まだ心配はいらない」と書いてしまった気がしますが、少し安易な考えだったと反省しています。

じゃあどうしたら良いのか


ニューヨーク連銀の景気後退確率のモデルを過信してはいけないのは残念ですが、それなら他に何か手段はないのでしょうか。

実は景気後退が近づいているかどうかを調べる有名な方法には、次の2つがあります。

  • 10年米国債と3ヶ月米国債の利回りの差がゼロになることに注目する(ニューヨーク連銀はこちらを採用)
  • 10年米国債と2年米国債の利回りの差がゼロになることに注目する

そのうち、3ヶ月米国債は政策金利の影響を受けやすいのですが、2年米国債はその影響が小さいです。

なので、「10年米国債と2年米国債の利回りの差がゼロになったら、景気後退が近い」というのを1つのサインにすれば良さそうです。

そう思って、10年米国債と2年米国債の利回りの差をFREDを使って見てみると、最近は急激に低下しているのがやはり気になります。

10年米国債と2年米国債の利回りの差がゼロになったとしても、それから景気後退までは少なくとも数か月は時間があるはずですが、ゼロになる時期は2022年内にも訪れそうです。


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