この記事を書いている前日に、1月のアメリカの雇用統計が発表されたので触れておきたいと思います。
個人的には最近の雇用のデータで気にしている点は平均時給の1つだけです。
この平均時給が高い状態が続いている限りインフレは続き、それを抑えるためにFRBの金融引き締めも続くはずなので、この数字に注目しています。
1月のアメリカの平均時給も勢いよく伸びていました。これはインフレがまだ収まりそうもないこと、FRBによる利上げも進みそうなことを意味していて、どちらも投資家にとってはそれほど良いニュースではありませんでした。
この記事のポイント
- 1月のアメリカの平均時給は前月比+0.7%(年率+9.2%)で、前月よりも伸びが加速した。
- これだけ大きく賃金が伸びていれば、インフレを抑えるためにFRBは利上げを着々と進める必要が出てくる。
- 投資家は雇用統計の結果を利上げを警戒して、米国債が大きく売られた。
強かった22年1月の雇用データ
1月のアメリカの雇用データは、雇用の強さを示すような数字が並びました。
- 非農業雇用者数:+46.7万人(予想:+15万人)
- 失業率:4.0%(予想:3.9%)
- 平均時給:前月比+0.7%(予想:前月比+0.5%)
冒頭でも触れたようにこの中でも、私は平均時給の伸びが一番の注目に値する数字になっていると思います。
「平均時給(賃金)の伸びが、前月比+0.7%」と言っても、どれくらいか感覚がつかみにくいと思いますが、このペースが1年間続いた場合の賃金の伸び(年率)は9.2%になることを意味します。
年収500万円の人が、みな一様に1年後に年収546万に増えるイメージです。
賃金が伸びない日本人からすると羨ましく見えますが、多くの国民がそのペースで賃金が伸びているなら物価の急上昇(インフレ)も避けられないと思います。
今のアメリカの中央銀行FRBはインフレ退治を強く打ち出していますが、現時点のアメリカはインフレが過熱しやすい環境の真っ只中であることが今回の雇用統計からわかります。
金融引締を警戒する投資家
賃金の伸びを見て今のアメリカがインフレが過熱しそうな環境であることがわかり、FRBもインフレへの警戒をさらに強めたはずです。
「FRBはインフレを抑えるために、2022年は早いペースで金融緩和を縮小するかもしれない」と投資家たちが警戒を強めたのか、今回の雇用統計の発表後に金融緩和のおかげで大きく買われていてた米国債が大きく売られました。
10年米国債(長期金利)も大きく売られたので、その利回りは大きく上昇しています。
私は10年米国債利回りが2%を超えるところまで、2022年は米国債が売られるという予想を前からこのブログに書いているのですが、少しずつその値が近づいてきたように思います。
ちなみに、雇用統計があった2月4日は米国債は大きく売られたものの、米国株は売られませんでした。
しかし、10年米国債が売られれば(10年米国債利回り(長期金利)が上昇すれば)、米国株も売られやすくなるので、まだ2022年1月のように米国債の動きに合わせて株も一時的に売られる恐れはあるかもしれません。
不況の前兆の点灯に少し近づく
ここまで雇用統計の結果を受けて、金融引締を警戒した投資家が米国債を売る動きが見られたという話をしました。
最近の傾向ですが、米国債が売られる場合でも短期債のほうが長期債よりも売られるという、不況に向かっていく時に見られる売られ方が起こっているのが気になります。
その結果、10年米国債と2年米国債の利回りの差は少しずつ縮まっているようです。
上のグラフがゼロになってしばらくすると不況(景気後退)が訪れる可能性がかなり高いことがわかっています。
ゼロになるまでは少なくとも半年以上は時間があると思うので、今からすぐに資産を景気後退に向けて準備する必要はないと思いますが、投資できる時期がかなり限られてきた印象はあります。