アメリカ雇用統計が発表されましたが、10月の雇用はあまり良くなかったようです。
よく見るとそれほど悪くない点も見え隠れするのですが、失業率がじわりと上がっているところに少しずつアメリカは景気後退に向かっている印象を受けました。
この記事のポイント
- 10月のアメリカの雇用統計は多くの数字が予想を下回って低調だった。
- 失業率は0.1%ポイント上昇し、アメリカのリセッションの判断基準を来月にも満たす可能性が出てきた。
予想を下回った10月雇用統計
10月の雇用統計は悪かったようです。
注目度の高い「非農業部門雇用者数」「失業率」「平均時給」のどれもが予想よりも悪い結果となりました。
- 非農業部門雇用者数:+15万人(予想+19万人)
- 失業率:3.9%(予想3.8%)
- 平均時給:0.2%(予想0.3%)
一番目につきやすい雇用者数は、予想を少し大きめに下回って15万人でした。
いくつか行われているストライキが最近の雇用統計にどれだけ影響しているのかわかりませんが、下のグラフで雇用者数の前年からの伸び(赤線)の動きを見てみると下降線を描いているので、ゆっくりと雇用は弱まる兆候はずっと続いてると思われます。
わずかに良かったところは、前月に比べてフルタイム労働者が増えているところです。前月まではフルタイム労働者が3ヶ月連続で減少していたのですが、10月は久々に増加に転じています。
ただ、それ以外のデータはほとんどが雇用が弱まっていることを示していました。
(インフレを抑えるためには良いかもしれませんが)平均時給の伸びは予想を下回り、失業率はわずかに0.1%分だけ悪化しています。
失業率に景気後退の足音
今回の雇用統計で失業率が0.1%増加しましたが、このわずかな増加でアメリカのリセッション(景気後退)がぐっと近づいたように思います。
過去のアメリカでは、次のサームルールを満たした時にリセッションになっていることが知られています。
サーム・ルールによる景気後退期の判定
- 過去3ヶ月間の失業率の平均値が、過去12ヶ月間の失業率の最低値よりも0.5%ポイント上昇していたら、景気後退期と判断する。
このルールを今のアメリカに当てはめると、今のアメリカは過去3ヶ月の平均が3.9%超えたらリセッションと判断するのですが、この数字が今回で3.83%まで上昇しました。
アメリカのリセッションはあとわずかなところまでやってきています。具体的には次回11月の雇用統計で失業率が4.0%以上であれば、サームルールを満たします。
まだアメリカには余分な貯蓄があると言われているので、失業率がサームルールを満たしてもすぐに消費も景気も悪化しないかもしれませんが、新しい局面が近づいてきている印象はあります。
リセッションを控えている段階では、超長期の保有目的でない限り株の購入は控えたほうが賢明だと思われます。