コンテンツへスキップ

またしても一見強く見えるアメリカ雇用統計

  • by

1月のアメリカの雇用統計が発表になりましたが、大方の予想を裏切り、とても強いものになりました。

ただ、今月もデータをよく見てみると雇用は数字ほどの強さを感じないものになりました。

この記事のポイント

  • 2024年1月の雇用統計は主な3つの数字が全て予想を上回って、一見すると雇用が強い様子が見られた。
  • しかし、今月もフルタイム労働者を削減してパートタイム労働者を雇っている様子が見え隠れする。
  • 平均時給の伸びは高いが、民間企業が労働者に払っている賃金総額を調べてみると伸びは1月に鈍化しているので、インフレ再燃の心配も今はない。

またしても一見強く見えるアメリカ雇用統計

雇用統計では農業を除く雇用者の前月からの伸び(非農業部門雇用者数)、失業率、平均時給の3つが注目を集めます。

1月のアメリカ雇用統計では、この3ついずれもが予想を大きく上回りました。

  • 非農業部門雇用者数:35.3万人(予想18.0万人)
  • 失業率:3.7%(予想3.8%)
  • 平均時給:0.6%(予想0.4%)

これを受けて、投資家は「アメリカはかなり雇用が強く、景気の伸びが加速している」という考えが投資家の中で生まれたようで、金利はどの年限も大幅に上昇して、景気がいい場合に恩恵を受けやすい株は価格を大きく上昇させました。

特に非農業部門の雇用者数の増加は大きく、多くの人は驚いたはずです。

雇用増加の中はパートタイム

ただ、今回の雇用統計も主要な数字が強かったからといって、アメリカの景気が良いということにはならないと思います。

前回ほどではないですが、今回も雇用統計で増加したのはパートタイム労働者で、フルタイム労働者は減っています。

本当に景気が良いならこのような人の増やし方はしません。

時給が伸びてもインフレ再燃は起こらない

また、今回は平均時給が前月比0.6%(年率6.8%のペース)と高い伸びを示していますが、それでもインフレは起こらないと思います。

理由は企業が労働者に支払っている賃金総額の伸びはむしろ低下してるからです。

次のグラフは民間企業が労働者に払っている賃金総額の伸びを示したものですが、1月はグラフが下がっています。

賃金の支払いが伸びていないなら、賃金インフレは起こりません。それなら、また米政府がお金でも配らない限りいずれ消費が細って、雇用も悪くなるだろうと思われます。

さいごに

アメリカの1月雇用統計は予想以上に強かったと言う評価が多いですが、よく調べてみるとやはりフルタイム労働者を削って、パートタイム労働者を雇っていて、数字ほどのアメリカの景気の良さを感じませんでした。

安い賃金に抑えようとしてるところは、民間企業から労働者へのお金の流れを見ても言えます。民間企業が支払った賃金の伸びは低下しており、これではいずれ消費の伸びも鈍化するだろうという内容になっています。

よって、インフレの懸念はなく、今はまだ良い消費もいずれ落ち込むのだろうと推察できます。(問題はいつ不況がやってくるのかがまだ見えないことです。これは本当に頭の痛い話ではあります。)

また、今回の雇用統計を受けてFRBの3月での利下げが遠のいたという見解をよく見聞きしますが、アメリカ経済がそれほど強くないのに高金利が長引けば、その後のハードランディングの確率が上がると思われます。


本ブログからのお願い

この記事は、読者が自由に記事の金額が決められるPay What You Want方式をとっています。

「役にたった」「面白かった」など、何かしら価値を感じた場合は、YUTA'S INVESTMENT TICKETをクリックして、価値に見合った金額をお支払い下さい。

価値がないと思った場合には、お支払いは不要です。同じ記事を読み返して、新しい気づきがあった場合には、1人で何回クリックしても問題ありません。