7月中旬から米国企業の決算発表が数多く行われてきましたが、それも最近になってようやく落ち着きました。
決算を見たいと思っていた企業はたいてい見てきたのですが、P&Gについてまだ何も触れていなかったので、遅ればせながらこの記事で扱いたいと思います。
P&Gの21年4-6月期は予想よりも業績は良かったです。しかし、新型コロナウイルスで在宅時間が増えて生活必需品の売上が増していた2020年に比べると成長率は鈍化しているようです。
この記事のポイント
- 21年4-6月期のP&Gは売上も一株利益も予想を超える内容だった。
- しかし、絶好調だった2020年に比べると成長率は鈍化している。2020年の新型コロナウイルス流行時の好影響は効果が薄くなっている。
- 2020年に好調だった企業は既にほとんどの企業でピークをつけている。反対に、2020年にコロナの影響で業績が急激に悪化した企業は21年4-6月に大きな成長を見せている。
予想以上の業績を残したP&G
21年4-6月期(21年度第4四半期)のP&Gは予想されていたよりも、業績は良かったです。売上も一株利益もともに予想を上回りました。
- 売上:189.5億ドル(予想184.1億ドル)
- 一株利益:1.13ドル(予想1.08ドル)
単位B:10億 | 21Q4 | 前年比 |
---|---|---|
売上 | $18.9B | +7% |
営業利益 | $3.45B | +2% |
一株利益 | $1.13 | -3% |
売上の成長率は前年比+7%なので、例年のP&Gに比べたらまずまずの好調ぶりです。
しかし、以下の営業利益のグラフを確認してみると、絶好調だった2020年から成長率は減速していることが見えてきます。
オーガニックグロースについて
P&Gの業績の好調・不調を判断するには、買収や為替の影響を除いた売上(オーガニックセールス)を確認すると良いとよく言われます。
今期のP&Gのオーガニックセールス成長率は+4%と、前期と同じペースを維持しました。
しかし、営業利益と同じ様に絶好調だった2020年の売上成長率と比較してみると、少しずつ当時の勢いは失われていることがわかります。
2020年は新型コロナウイルスの影響で在宅時間が伸びて、生活必需品を多く扱うP&Gの製品がよく売れましたが、その効果も薄れてきているようです。
決算発表では今後1年間のオーガニックセールス成長率の見通しが発表されましたが、+2%から+4%で例年通りのP&Gの成長率に戻るようです。
製品カテゴリ別売上を確認してみると
先ほど新型コロナの流行時に見られていた恩恵の効果が薄れているという話をしましたが、そのようすは売れている製品からも垣間見えます。
P&Gの製品カテゴリ別の売上を見る前に、どの製品がどのカテゴリに入っているのかを簡単におさらいします。
P&Gの製品カテゴリ
- 美容:ヘアケア(シャンプーやスタイリング)とスキンケア(美容・化粧品)を扱う部門。パンテーンやSK-IIなど。
- グルーミング:シェービングを扱う部門。ジレットやブラウンなど。
- ヘルスケア:オーラルケアとパーソナルヘルスケア(ビタミン、サプリメント、のど飴)を扱う部門。オーラルB、のど飴ビックス。
- ホームケア:ファブリックケア(洗剤やファブリーズ)、ホームケア(食器洗い洗剤、掃除用具)を扱う部門。アリエール、ジョイ、ファブリーズなど。
- ベビー・女性・ファミリーケア用品:幼児や女性、介護用品を扱う部門。ブランドはパンパースなど。
上記の製品の中で、P&Gで最も売上が大きいのはホームケアです。
このホームケアは家で過ごす時間が長くなった2020年は大きなオーガニックセールスの成長率が見られていたのですが、今期(2021年4-6月期)かけて少しずつ成長率が下がっているのが以下のグラフからわかります。
単位B:10億ドル | 売上 | 構成比 | 前年比 |
---|---|---|---|
美容 | $3.5B | 19% | +11% |
グルーミング | $1.7B | 9% | +10% |
ヘルスケア | $2.4B | 13% | +18% |
ホーム | $6.6B | 35% | +5% |
ベビー・女性・ファミリー用品 | $4.7B | 25% | +1% |
Total P&G | $18.9B | 100% | +7% |
まとめ
この記事では、21年4-6月期のP&Gの売上を見ていきました。
今期は予想されたよりも良い業績だったものの、新型コロナウイルスが流行して在宅時間が長くなっていた時期に売上を伸ばしていたホームケア用品の成長率が鈍化して、売上も利益も成長の鈍化が見られています。
P&Gだけでなく他の多くの企業に言えることなのですが、新型コロナウイルスが流行する中で業績が上向いた多くの企業は、既に成長率の鈍化が見られています。
2020年好調だったが、既に成長の鈍化が見られる企業
- アップル(21年1-3月が成長率のピーク)
- アマゾン(21年1-3月が成長率のピーク)
- P&G(20年7-9月期が成長率のピーク)
ちなみに、2020年に業績が悪化した多くの企業は21年4-6月期に*前年に比べて業績が急激に上向きました。(*注:それだけ前年の業績悪化が大きかったようです。)
コロナで大きな売上減少を受け、21年4-6月に大きな成長を見せた企業
- マクドナルド
- コカ・コーラ
- ペプシコ
- ビザ
- マスターカード
- ジョンソン&ジョンソン
- フェイスブック
- グーグル
ただし、P&Gの成長率が鈍化していると言っても、2020年に絶好調だったものが「いつもどおりの成長率」に戻るだけです。
長期投資でなおかつ毎年増える配当に高い期待を寄せていると思いますが、継続保有で何も問題はないと思います。
今のところ配当利回りが2.45%と3%にも満たない状態なので、追加投資や新規投資をするほどの魅力は今はありませんが、せっかく長期で保有しているこの優良企業を手放すような問題は何も見当たりませんでした。