この1週間の間に、アメリカの小売売上高が発表されたので見ていきます。
よくアメリカの経済について、消費はまだ強いという表現が使われることがあります。
ですが、個人的には「まだ強い」と言うよりはもはや「悪いわけではない」という表現のほうがあっている気がします。
この記事のポイント
- 5月の小売売上は前月比マイナスが予想されていたが、予想外のプラス成長を遂げた。
- しかし、インフレを除いた実質の成長率は鈍化トレンドの中にあるといえる。
- 消費が上昇トレンドに戻っていないなら、(時期は読めないにしても)リセッションはどこかでやってくる。
予想外に前月比プラス成長をとげたアメリカの小売売上高
小売売上高の5月分の発表がありました。
事前の予想では前月比でマイナスの成長が予想されていたのですが、予想外にプラス成長の結果が発表されています。
- 予想:前月比-0.1%
- 結果:前月比+0.3%
この結果だけ見ると、予想よりもかなり良かったように見えます。
「前月比+0.3%」と書かれると値が小さいので、どれくらい良いのか分かりづらいのですが、このペースが1年間続くなら前年比+4.2%にもなる成長率です。
まだ楽観は早い小売売上高のトレンド
しかし、小売売上高のデータは月ごとにバラツキの大きなデータとしても有名です。
なので、全体の傾向を捉えるために次は前年比のデータを眺めてみようと思います。すると、やはり最近は成長率の鈍化ドレンドがかなり進んでいたことがわかります。
5月は予想外に小売売上が好調だったために、上の前年比のグラフは5月分だけわずかに上向きましたが、それでも全体としては成長鈍化の傾向はまだ脱していないのだろうと思います。
インフレを除く実質で見てみる
また、先月の記事にも書いたのですが、小売売上高のグラフをインフレを除いた実質で見てみると景色が少し変わります。
次のグラフは、小売売上高をインフレの影響を除いた(実質の)成長率をグラフ化したものですが、すでに何ヶ月も前年比はマイナスに落ち込んでいます。
なお、インフレを除いた(実質の)小売売上高が前年比でマイナスになると、過去にはリセッションが近づいているようです。
というわけで、消費でもリセッションの警告サインは薄っすらと点灯している状況なので、決して強気派が言うような「まだ消費は強い」というわけではない気がします。
最近落ち込んでいる企業の投資などに比べると、まだ個人の消費はそこまで悪くないと言ったほうが良さそうです。
まとめ
5月の小売売上高は予想外に好調だったことが前月比の数字からわかりましたが、一方で前年比のトレンドを見てみると全体としてはアメリカの消費は落ち込んでいるトレンドを抜け出せた様子はまだありません。
また、インフレの影響を除いた実質では、前年比成長率がマイナスに落ち込んでいる状況もまだ抜け出せていないので、5月単月が良かったからと言って安心するのはまだ早いと言えそうです。
米国株は好調でもそれを支えるアメリカの消費の復調がまだ見えていないことから、景気後退回避の確率は私の中ではまだ高くありません。
また、景気後退が免れないなら今の株高もどこかで息切れするはずだろうと思って、様子見することにしています。