相変わらず米国株は大きく上がったり下がったりしているようです。
ここで最近の株価の動きを見ながら、考えていることをつらつらと書いていこうと思います。
この記事のポイント
- 10月に入って株価は大きな値動きを見せているが、冷静にみると10月初めの株価に戻っている。
- 株価を決める要因になる「実質長期金利」と「企業利益」を見てもほぼ横ばいなので、恐らく株は値動きが大きくなっただけで投資環境は改善も悪化もしていない。
- まだ実質金利が上がる余地がわずかにあり、7-9月期の企業利益が例年よりも少し低調なので、今後の株価はやや下目線。
値動きが大きい米国株
前日の記事で、消費者物価のデータの発表後に株式市場だけ大きな上昇を見せたことを取り上げました。
>>株式市場だけ盛り上がりを見せた9月のアメリカ消費者物価の発表
株式投資家だけがアメリカ経済の好転の兆しを感じとったことは考えにくいことから、「この日の株価の上昇は一時的かも知れない」と書きました。
その翌日の昨日の米国株は、まさに前日の大きな上昇分を消すような下落が起こっています。
ただ、このところの株式市場は乱高下が大きいですが、落ち着いて見てみると10月に入ってから株を取り巻く状況はそれほど大きく変わっていないと思っています。
最近の株式市場の雰囲気が株価が上がればいつも以上に盛り上がり、下がれば意気消沈しているように見えるので、自戒の念を込めて「投資環境は良くも悪くもなっていない」ということをデータを見ながら確認していきたいと思います。
冷静に見ると2週間前と同じ株価に
日々の株価の上昇と下落に目を奪われていると気づかないのですが、実はS&P500は9月30日の終値と10月14日はほとんど差はありません。
10月が始まってから上昇と下落を経て、2週間の取引が終わってみたら横ばいだったようです。
「ただ単に2週間前と株価が同じだっただけ」といえるかも知れませんが、さらに調べてみると、株価を決める要因になっている「実質長期金利」も「企業利益」もほとんど横ばいだったために、株価が上がっても元の価格に戻されているのではないかという気がします。
実質金利が上がると米国株は下がり、実質金利が下がれば米国株は上がるという関係がありますが、以下のグラフで見るように最近のアメリカの実質長期金利は9月末から横ばいです。
またアナリストが予想する今後12ヶ月間の企業利益も、(個人的にはもう少し下落があっても良いと思っているのですが)大きな変動もなくほとんど横ばいです。
金利が変わらず企業利益も変わらないなら、適正な株価もこの2週間でほとんど変わらなかったはずです。
最近は日々の株価の変動は大きいのですが、そういう時こそ株価を近視的に追いかけずに金利や企業業績を見ながら変化を捉えるようにしたいものです。
今後の動き
さて、日々の株価の変動から離れて少し冷静に見れるようになったところで、今後の株価はどうなるのでしょうか。
先程見た「実質長期金利」と「企業利益」の面から考えると、まだ株価には下落圧力がかかっているように見ます。
- 実質金利:世界金融危機が起こる前(FRBの大規模金融緩和前)の水準(2%前後)を目指して上がっているように見える。
- 企業利益:2022年7-9月期は例年よりも低調な決算で、予想利益が下がる恐れがある。
2022年からFRBは金融引き締めを積極化させていますが、最近の実質長期金利はFRBの大規模緩和がなかった時代の2%を目指して上がっているようにも見えます。
なので、もう少しだけ実質金利はあがり、株価を下げる余地がある気がしています。
また、徐々に始まっている7-9月期の決算ですがですが、例年よりも少し悪い結果が出てきています。
5年平均ではアナリストの一株利益予想を上回る企業は77%に登るのですが、S&P500の7%分の企業の決算が終わった段階で、一株利益で予想超えを記録したのは69%にとどまっているようです。
なので、このままのペースが続くと企業の一株利益も少し下がり、こちらも株価への下落要因になるのではないかと思っています。