原油生産量1位。アメリカ経済を支えるシェール革命。

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原油年間生産量1位になったアメリカ

2018年は45年ぶりに、アメリカが原油生産量で世界一に返り咲きました。

米国の2018年の原油生産量が45年ぶりに世界最大になったもようだ。シェールオイルがけん引して10年で2倍強に膨らみ、輸入への依存度は30年ぶりの低水準に下がる。 – エネルギー地政学一変 米原油生産45年ぶり首位(日経新聞)

アメリカが原油生産量1位になれたのは、けつ岩(シェールとも呼ばれる岩)からオイルを作る新しい採掘技術を確立した”シェール革命”のおかげと言われています。

これでアメリカ企業は、他国の情勢によらず安定して安い価格でエネルギーを手に入れられることになります。この経済効果はとても大きいです。アメリカ株に投資する投資家にとっても、長らく株価にプラスに働く材料になります。

原油生産量が増えることのメリット

石油の生産量が増えれば、エネルギーの価格は低く抑えられます。(キャベツが取れ過ぎた年は、キャベツの価格が下がるのと同じです)。エネルギーの価格が低く抑えられることは、アメリカ国内のあらゆる会社の業績にプラスに働きます

まず、電力会社は燃料になる石油を安い価格で仕入れることができるので、アメリカ国内の電力価格を下げることができようになります。

すると、化学メーカーは安い原油と安い電力をもとに、安く素材を作れるようになり、その素材をもとにモノづくりを行う製造業も低コストで生産ができるようになります。また電力が安くなることで、モノづくりだけでなく、大量のコンピュータを抱えるようなIT企業のコスト削減効果も期待できます。

また、消費者に目を移せばガソリン価格や光熱費が抑えられることで、自由に使えるお金を増やす効果があります。みんながお金を使うようになれば、景気も上向くようになるのです。

ちなみにアメリカは電力価格を低く保つことの経済効果が分かっているため、従来から発電は原料価格が低い石炭を使った火力発電を主軸に据えるなどして、他の先進国よりも電力価格を低めに抑えてきました。その上、シェール革命によって原油生産量が増えたことで、より有利に電力価格を抑えることができるようになります。

余談ですが、私はある化学メーカと一緒にやった仕事で、検討している工場の取り組みの中で何がもっとも効果があるか試算したことがあります。その中で、もっとも効果があったのは、複数社の化学メーカが隣り合っている石油コンビナート全体で、最適な電力契約パターンに変更することでした。

化学メーカーにとって電力コストはとても大きなものなんだなと、この時、肌で感じた覚えがあります。

アメリカだけがシェール革命を進められた理由

ところで、これだけメリットがあるシェールオイルの採掘は、なぜ米国ばかりで行われているのでしょうか。アメリカだけで採掘できる資源かというとそうでもないようです。

国名 シェールオイル埋蔵量
米国 782億バレル
ロシア 758億バレル
中国 322億バレル
アルゼンチン 270億バレル
リビア 261億バレル
豪州 175億バレル

(日経新聞より)

これを見る限り、日本はそもそもシェール資源がないので諦めるとしても、ロシアや中国などもシェールオイルの元になる岩は大量に保有していそうです。それでも、採掘しないのはなぜなのでしょうか。

アメリカだけがシェール革命を進められた理由

その理由は、アメリカ以外の多くの国ではシェール資源の採掘の費用が高く付き、儲かる見込みがないためです。

「えっ、そんな単純な理由!?」と思うかも知れません。

でもこの視点はとても重要です。人は儲ける見込みがないものには、手を出さないからです

例えば、2017年に仮想通貨の値段が上がったときに、色んな業者が大量の専用コンピュータを新設して仮想通貨を手に入れようとしました。その時、高いマシンと電気代を払っても得られる仮想通貨で儲かるからこそ、業者は次々参入してきたのですが、そのうち仮想通貨の値段が下がると業者は次々と仮想通貨から離れていきました。高いマシンと電気代を払っても、儲からないからです。

では、もう少しだけシェールオイルを掘り下げて考えてみて、アメリカだけがシェール資源採掘のコストを抑えることができたポイントは何だったかを見たいと思います。結論からいうとポイントは、アメリカの地形技術にあります。

シェールオイル採掘に適した地形

シェール資源はもともと他の資源に比べて深いところに眠っているのですが、アメリカは中国などに比べて比較的浅い場所に眠っている点で非常に有利でした。また、アメリカがシェール資源が眠る平野部にはもともとパイプラインなどを保有していて、他の国に比べて安いコストでシェール資源採掘ができたことが大きいです。

一方、中国のシェール資源は山間部にあることも多く、パイプラインの新規敷設や採掘に必要な大量な水を確保するのもコストがかかり、現段階ではシェール採掘で利益が見込めません。ロシアについても、土地が広大すぎることからパイプラインなどの敷設費用がかかりすぎる事情がありました。

こうした地形の面から見て、アメリカは比較的お金をかけずにシェールを開発できる優位な状況だったのです。

シェール資源を効率的に採掘する技術

こうした地形的に有利な状況と、アメリカ人持ち前のフロンティア精神のおかげで、アメリカのシェールガス関連のベンチャー企業が、世界にさきがけてシェール採掘で一攫千金を目指して、採掘低コスト化の技術を磨くことになります。

そして、それが実を結んだのが、リーマンショック前後に訪れた原油高でした。2019年1月現在の原油価格は1バレル50ドル台ですが、当時は倍の100ドル超えて、初めてシェールで儲けが出る状況になったのです。これを機に、大量にシェールガス・シェールオイルが生成されることになります。

しかし、農家がキャベツを作りすぎて、キャベツの値段が下がるのと同じく、シェールブームでオイルを作り過ぎたせいで、せっかくの原油価格が徐々に下がっていきました。

また、アメリカのシェールブームを面白くないと苦々しく思っている、従来型の石油生産国の中東やロシアはシェールオイルで儲けが出なくなるまで、原油の価格を下げる”いじめ”を開始します。これにより、シェールオイル採掘業者は壊滅的なダメージを負います。採算が取れなくなった、シェール業者の多くは規模の縮小や撤退を余儀なくされました。

2015年の原油価格の急落を受けて、シェールブームは終わったかに思えました。しかし、こうした苦境にめげずにアメリカのシェール企業は更にコスト削減に取り組み続け、原油のいじめ価格でも生産をできる技術に磨きをかけていきました。

そして安価で効率的なシェールオイル生産技術を成熟させ、2018年には石油生産量で1位になるほどにまで生産量を伸ばしました。こうした努力の結果、シェール資源関連技術の特許をアメリカ企業が独占する形になったのです。

アメリカ経済を強く下支えする原油生産

アメリカ国内で現在の技術で採掘可能なシェールとその他の石油やガス資源の合計は、200年は耐えられるだけのものがあると言われています。低価格なエネルギー供給が長期的に可能になったことは、アメリカ経済に大きなプラス材料になるはずです。