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アメリカでのドルの総量とインフレの関係を調べる

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2021年から始まっているアメリカのインフレ率の上昇ですが、その原因はドルのバラマキにあるとよく言われます。

世の中のドルが多くなればドルの価値は薄まって物価が上がるはずなので、感覚的にはよくわかります。

この記事では、過去のアメリカのデータからドルとインフレの関係を見ていきます。

この記事のポイント

  • ドルが増えても、いつも物価上昇につながるわけではない。過去のアメリカではドルが年間10%を超えるような急増が見られたときに、物価上昇が起こった。
  • 前回ドルの急増で物価上昇が起こったのは1970年代。1970年代では、ドルの急増のピークの3〜4年後にインフレ率がピークをつけた。
  • 同じようなことが起こるなら23年か24年に物価上昇が止まる。(ただし、前提としては金融引き締めが必要)

アメリカのドルの総量とインフレの関係


冒頭で「世の中のドルが多くなればドルの価値は薄まって物価が上がるはず」と言いましたが、この関係はどの時代も必ずそう言えるわけではありません。

例えば、1990年代から2010年代のアメリカを見ても、世の中のドルの総量(下図の青線)は増えた後に、物価(下図の赤線)が伸びている関係はイマイチわかりません。

ドルの総量だけで物価が決まるわけではないので、ドルが増えれば物価が上がるという関係はいつでも起こるわけではないようです。

しかし、ドルが急増しすぎるとそんな呑気なこともいって言っていられなくなります。具体的には、ドルが年10%以上で増えるような状況が生まれると、さすがに物価も上昇するようです。

過去にアメリカでは1970年代にこれが起こりました。

ドルの急増のピークとインフレ率のピーク

さて、上記の1970年代のグラフを見ていると、少し面白いことがわかります。

ドルの急増のピークから3年から4年後しないとインフレがピークをつけないということです。

この原因ですが、世の中のドルが増えた後に景気が良くなって原材料価格が上がり、消費者が買うモノの物価に反映されるまでにタイムラグがあるだけでなく、一度上昇した物価をおさえるための金融引き締めの効果が現れるまでにも時間がかかるのだろうと思います。

1970年代以上にドルが急増した2020年代


過去のアメリカのドルとインフレの関係を見てきましたが、最後に現在のアメリカに話を戻そうと思います。

今のアメリカには不安な点が2つあります。

1つ目はドルのやはり急増が見られることです。2020年から新型コロナウイルス不況の景気対策でドルが増えたのですが、その伸びが1970年代の比ではありません。

上のグラフをみると、2020年代では1970年代以上にドルの急増が起こっていることがわかります。物価の上昇は1970年代以上のものになるポテンシャルも秘めていると思います。

もう一つの不安は、現在は金融引き締めのペースが遅れていることです。

1970年代のフェデラル・ファンド金利(現在の政策金利)は多くの時期で消費者物価を上回っていましたが、それでも物価の上昇を抑えるのに3-4年かかりました。しかし、今は消費者物価よりも大幅に低い金利になっているので、物価の上昇はもっと長く続く恐れもあるのかなと考えてしまいます。

さいごに

私は少し前まで、2022年のどこかで消費者物価の上昇は落ち着くはずだと考えてました。しかし、今回ドルとインフレの関係を調べてみたところ、インフレはそんなに簡単に静まらないという面も見えてきました。

1970年代と同じパターンなら2023年から2024年までインフレが続き、金融引き締めが遅れていることが影響すればさらに長引く恐れがあります。

先日の記事で、コモディティの価格はこれから上がるのかどうかわからないと書きましたが、まだ上がる可能性も見えてきた気がします。2021年から始まったコモディティ買い流れはまだしばらく続くのかも知れません。


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