モノがインターネットに繋がるIoT時代の象徴的な存在だったアマゾンのボタンが、2019月2月28日で販売を終了し、その幕を下ろすことになりました。
ボタンをプッシュするだけで登録されている品物を注文できるアマゾン・ダッシュは、アマゾンのサイトを開いたり、アプリを開いたりする手間すら省いて、思い立ったらすぐ「ポチッ」と買い物ができる便利アイテムでした。
決して需要がなかったからクローズしたわけではなく、ダッシュボタンの便利さを受け継ぐ製品・サービスを出したことで、ボタンの販売を終了したようです。実際、ダッシュボタンに対応していた製品は50種類以上のブランドの2000以上の商品に対応するなど拡大を見せていました。
ダッシュボタンで作り出したお手軽な買い物体験は、今では3つの他のサービスや機械に受け継がれて使われています。「バーチャルダッシュ」「アマゾン・エコー・ショー」「アマゾン・ダッシュ・リプレニッシュメント」の3つです。
この記事では、ダッシュボタンに変わる3つの取り組みを紹介し、アマゾンが変化を起こしてきたショッピング体験をまとめて紹介したいと思います。
アマゾン・バーチャル・ダッシュ
バーチャル・ダッシュは、アプリの中にボタンを好きなだけダッシュボタンを登録でき、アプリに表示されるたくさんのボタンの中から1つを押すことで買い物ができるというものです。
2019年時のアマゾンジャパンのコメントによると「バーチャルダッシュ経由の販売は、世界で2倍に伸びている」そうで、ダッシュボタンの役割を引き継ぐサービスになっています。
バーチャル・ダッシュのおかげで、家中にたくさんのダッシュ・ボタンであふれかえるような事態はなくなりましたが、アプリを開かなくても買い物ができることが売りだったダッシュボタンの利便性は少し落ちてしまったのは残念です。
しかし、その残念な欠点も、近年発売した画面つきのスマートスピーカーのEcho showの登場によって、克服しつつあります。
バーチャルダッシュを搭載したアマゾン・エコー・ショー
アマゾンエコーを発売した2014年当時は、これからは音声でショッピングをするものだと、多くの人が思っていました。しかし、フタをあけて見るとユーザは音声だけで買い物をすることがほとんどなく、2018年のある調査では音声ショッピングをする人は全体の2%だとの結果も上がってきています。
「音声ショッピングはそれほど使われていない? 全体の2%との調査結果(ロボスタ)」
実際に買い物をする場合には、価格だけで判断するのではなく、キャンペーンがあるか、品質は悪くないか、他のユーザの評価コメントを見るだけでなく、他の製品との比較も行う必要があります。それらを抜きにして、音声のアレクサが選んでくれる商品を買うには、まだまだユーザからのアレクサへの信頼が足りていない現実がありました。
そこで、アマゾンはスマートスピーカーに画面をつけたエコー・ショーに、バーチャルダッシュを搭載すれば、ユーザにもっとショッピングしてもらえるだろうと考えたのです。
バーチャルダッシュだけではアプリを開くを手間がかかってしまいましたが、エコー・ショーにバーチャルダッシュを搭載すれば、「アレクサ、バーチャルダッシュを開いて」と言うだけでダッシュボタンを表示でき、あとはタッチ1つで商品を買えます。
このエコー・ショーとバーチャルダッシュの組み合わせによって、アマゾンはEhoを使ったショッピングユーザの数を増やしつつあります。
アマゾン・ダッシュ・リプレニッシュメント・サービス(DRS)
バーチャルダッシュやエコー・ショーなどの取り組みとは、全く異なるアプローチですが、もう一つダッシュボタンを進化させたサービスがあります。それがこのダッシュ・リプレッシュメント・サービス(DRS)です。
2016年1月に発表したこのサービスを使えば、消耗品が使い終わることを見越して、自動で商品を再注文することができます。例えば、コーヒーショップなどを手がけるillyでは、アプリでの初期設定さえしてしまえば、コーヒーカプセルが無くなることを検知して、自動で再注文してくれるコーヒーメーカーを発売しました。
日本でも対応商品は少ないものの、ウォーターサーバーや電動歯ブラシの毛先を再注文することができるDRSが既に始まっています。
Amazon Dash Replenishment日本公式ページ
買いたい時にすぐに買える仕組みづくり
ここまで、アマゾンが変化を起こし続けてきたショッピングサービス・製品を紹介してきました。ここで共通しているのは、買いたい時にすぐ買える仕組みを提供していることです。
アマゾンのライバルはGoogleやネットフリックスと言われることが多いです。確かにそれも事実ですが、アマゾンはもっと大きな天敵がいました。それは、「今は忙しいから、またあとでネットで注文しよう」という決して実行に移されないユーザのサボりぐせでした。
まだ、戦いの最中ではあると思いますが、アマゾンはだいぶ善戦しているように思えます。