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2019年7月アメリカが利下げを決めた3つの理由。

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10年ぶりに利下げを決めたFOMCの議事録に眠る情報

前回の記事でアメリカの政策金利を決める会議FOMCの声明文と議事録のダウンロードの仕方を解説しました。

アメリカ金融政策会合FOMCの声明文と議事録のダウンロード方法

自分にとって本当に必要な情報に出会いたいなら、ニュースサイトではなくFOMCの公式情報に触れて情報を確認するのが一番だろうと思ったのが、記事を書いた動機です。

さて、この記事を書いている2019年8月22日の朝は、10年ぶりにアメリカ政策金利を決めた2019年7月のFOMC議事録が公開された日でもあります。

公開された議事録をみながら、私にとってこの議事録の中に眠っている重要な情報は何だろうとしばし考えましたが、やはり「なぜ、10年ぶりにアメリカは利下げをしなければならなかったのか」が一番残しておくべき情報だと思いました。

議事録の中では7月の利下げ決定、今後の連続する利下げサイクル始まりではなく、景気を調整するための利下げだと強調されていますが、それでも利下げは利下げです。

この記事を10年後に見返せるように、2019年7月に利下げを決めた理由を書き残しておくのが、将来の自分にとって役に立つ記事になるだろうと考えました。

FOMC議事録(2019.7.30-31)

利下げを決めた3つの理由

FOMCの議事録から見えて来たのは、利下げをきめた背景には次の3つの理由があったということです。

  • 世界の経済成長の鈍化の影響を受け、設備投資と製造業の減速が見られたため
  • 世界経済のさらなる下振れと難航する貿易交渉が景気に及ぼすリスクを小さくするため
  • 長期インフレ率2%の目標を下回る恐れがあるため

以下では、できるだけ議事録に沿って理由を書き残します。ただし、後々から見返した時に補足が必要と思われる箇所にはカッコで追加説明を足しました。

設備投資と製造業の減速

1つ目の利下げの理由は、アメリカ経済は全体的に良好にもかかわらず、企業の設備投資や製造業で成長の減速が見えたためです。

設備投資と製造業の減速の主な原因は、(おそらくは2018年から米中や欧米などの間で難航している)貿易協議にあるとFOMCのメンバーは指摘しています。

貿易協議の難航と制裁関税の発動の影響を受けて、FOMCの参加メンバーの多くは今のアメリカにとっての適切な金融政策を下方修正せざるを得なくなったと話しています。

世界経済下振れと貿易協議難航のリスク

2つ目の利下げ理由は、今後訪れるかも知れないアメリカの景気の下振れリスクを小さくするためです。

アメリカの景気を悪化させるリスク要因として「世界経済のさらなる減速」と「貿易協議のさらなる難航」の2つ指摘しています。利下げを決定した直前の1ヶ月間、この2つの懸念が小さくなることがなかったと言います。

もしも、2つの懸念が実現してしまった場合には、落ち込んでしまうアメリカ全体の需要を支えるためにFOMCでできる政策の余地がかぎられているFOMCが考えているようです。なので、前もって利下げをすることで景気が下振れリスクを軽くしようとしました。

長期インフレ率2%の目標未達の恐れ

最後の理由は、金利を引き下げないとインフレ率が目標値を下回る恐れがあるためです。

FOMC参加メンバーの多くは、最近のインフレ率が長期的なインフレ目標値の2%を下回っていると認めました。これは、物価変動の大きい食品とエネルギーを除いたインフレ率(コア・インフレ率)でも、全体的なインフレ率でも同様だといいます。

またFOMC参加メンバーの多くは、直近のインフレ率にはFOMCの利下げが既に盛り込まれたはずだと言います。

(筆者注:直近は市場全体でFOMCが利下げをすると事前に予想しており、直近のインフレ率にも利下げが盛り込まれているはずなのに、2%を下回っていることを問題視しているように見えます)

長期的なインフレ率で2%を上回ることが目標ですが、直近でインフレ率の低下が見られており、このままでは長期のインフレ率で目標達成が危ぶまれることから、金利の引き下げを決定したようです。


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