2019年第3四半期(3Q)、イギリスは景気後退入を回避しました。もしもGDPマイナス成長だった場合には、景気後退入りになるところでしたが、この危機を乗り切っています。
イギリスのGDPに関しては、「景気後退入りしなかったこと」が最大のニュースだと思います。一方で、「もう少し詳しくみると、結局この国の景気はどうなの?」という疑問もあると思いますので、もう少しだけイギリスのGDPを深掘っていきたいと思います。
- 景気後退はさけられたが、結果はあまり良くなかった。前年比GDP成長率は金融危機以来の低成長になった。
- 7月の景気は良かったものの、8-9月で失速している。
- 業種別では、悪かったのは製造業。ただし、サービス業も良いとは言えない内容。
- 製造業の不振は、世界的な貿易の低迷とEU離脱を巡る混乱。2020年1月末の離脱期限まで注視が必要。
イギリスとドイツの景気が悪化すると、ヨーロッパ全体に影響が及ぶ恐れがあります。今回のイギリスの景気は超低成長の状態だったので、まだ悪化には至ってませんが、12月12日のイギリスの総選挙の結果によっては、またEU離脱の国会審議で揉める可能性があるので、しばらくこの国は様子見が必要です。
予想よりも悪かったイギリスのGDP
前期で2期連続のマイナス成長は避けられましたが、結果は予想よりも悪かったです。
- GDP成長率(前期比):予想0.4%を下回る、結果0.3%(前回-0.2%)
- GDP成長率(前年比):予想1.1%を下回る、結果1.0%(前回1.3%)
上のグラフでは、前期よりは回復しているように見えるのですが、月ごとの内訳をみると7月は調子が良かったのに、8-9月で失速してしまっています。なので、これから景気が上向くというよりは、横ばいや少々の下落基調が続きそうです。
前月比 | 7月 | 8月 | 9月 | 3Q |
---|---|---|---|---|
GDP成長率 | 0.3% | -0.2% | -0.1% | 0.3% |
前期比のグラフでは形がデコボコしていて全体の傾向が把握しづらいと思うので、前年比のGDP成長率のグラフを見てみてみます。
どうにも右肩さがりに下がっています。今回の前年比成長率1.0%は、約10年前の金融危機以来の低成長にまで落ち込んでしまっています。
製造業が低調
2019年の世界の景気を見ていると、低調な貿易の影響を受けて製造業が低迷している国が明らかに多いです。そして、イギリスもれなく製造業が減速してしまっています。
ただし、一方でサービス業は調子が良いかというと、決して良いとは言える内容ではありませんでした。地を這うような低成長を続けています。
前月比 | 7月 | 8月 | 9月 | 3Q |
---|---|---|---|---|
GDP全体 | 0.3% | -0.2% | -0.1% | 0.3% |
サービス業指数 | 0.3% | -0.1% | 0.0% | 0.4% |
鉱工業生産指数 | 0.1% | -0.7% | -0.3% | 0.0% |
– 製造業 | 0.5% | -0.7% | -0.4% | 0.0% |
– 建設 | 1.3% | 0.1% | -0.2% | 0.6% |
– 農業 | -0.1% | -0.1% | -0.2% | -0.2% |
まだ監視が必要なイギリス経済
2019年3QのイギリスのGDPを見てきましたが、7月が良かったものの8-9月は景気が減速していることが見えてきました。その原因は、他の国との例に漏れず、製造業とその設備投資の低迷です。
米中貿易戦争の影響で、製造業と設備投資が低迷しているなら、11月にも署名される部分合意で景気が改善する可能性があります。しかし、この国にはEU離脱というもう一つのリスクがあります。
EU離脱をスムーズにできる見通しが見えないと、企業は安心して設備投資をしないため、しばらくはイギリスは低調な経済成長率が続きそうです。
一つのマイルストーンは12月12日の選挙です。それから1月末までに、EUとの離脱協議でまとめた条件をイギリスの国会で審議。1月末までの離脱の流れです。しかし、EU離脱期限は何度も延期されてるので、ひょっとすると1月末の離脱期限も延期する可能性もあります。
イギリスはヨーロッパ全体に与える影響が大きな国なので、しばらく様子見が必要な状況と言えそうです。