先週末に金曜日に12月の雇用統計の発表があり、どんな内容だったかは既に以下のブログに書いたとおりです。
しかし、1つだけ書き漏れていたことがあったので、補足をしておこうと思います。アメリカの景気後退入りのタイミングを測るサーム・ルールについてです。
この記事のポイント
- サームルールとは、失業率が一年以内に0.5%ポイント上昇したら景気後退になるという経験則。
- 12月のアメリカの雇用統計では失業率の上昇は見られず、サームルールでの景気後退到来はわずかに遠ざかった。
- 12月の雇用統計は経済の減速を示していたと思われるが、失業率は上がっていないのですぐに景気後退になるわけではない。
12月の雇用統計〜失業率に関する補足
サームルールについて触れる前に12月の雇用統計をざっと振り返っておきます。
一言でいうと、フルタイム労働者が減ったもののパートタイム労働者が増えて、雇用者数は増加した月でした。
決して内容がよかったわけではないのですが、何はともあれ失業率は前月と変わらず3.7%をキープしています。
サームルールについて
12月の雇用統計は経済の減速を示していると思うのですが、内容はともあれ、とにかく失業率が悪化しなかったことは景気後退入りのタイミングを遅らせることになりそうです。
アメリカでは次の基準を満たすほど失業率が上昇したら、景気後退入りしているというデータがあります。
- 【サーム・ルール】過去3ヶ月間の失業率の平均値が、過去12ヶ月間の失業率の最低値よりも0.5%ポイント上昇していたら、景気後退期と判断する。
このサーム・ルールに照らし合わせて考えみます。
- 過去12ヶ月の最低失業率:3.4%
- 過去3ヶ月の失業率平均:3.73%
過去12ヶ月の失業率の最低値は4月に記録した3.4%でした。これよりも0.5%上昇した3.9%になっていたら景気後退入りをしていたはずでしたが、10月から12月までの失業率の平均値は3.73%でした。
ということで、アメリカの景気後退後退入りはお預けになりました。
上の図のようにまとめてみると、3ヶ月の失業率平均が景気後退入りの基準に一番近づいたのは10月で、そこからアメリカの景気後退入りは少しずつ遠のいているように見えます。
さいごに
というわけで、アメリカの雇用統計からは景気後退の突入は遠のいたように見えます。
企業はフルタイム雇用者を減らしているものの、労働者はパートでも良いから賃金を求めているというなら、企業にとってはコストカットがうまく働きやすい時期でもあります。
こうした状況は長続きはしないはずですが、景気後退までの時間稼ぎにはなるはずです。
この時間稼ぎが続いている間に、楽観的な人々は「アメリカ経済はソフトランディングを実現した」と言うかもしれませんが、まだまだ油断するには早いです。
アメリカの景気後退の恐れはまだ去っていないと私は思います。次のターニングポイントは消費者の余分な貯蓄がなくなると思われる2024年5月頃です。
5月以降に消費の減速とさらなるフルタイム雇用の削減が起こらないかが注目されると、今のところは思っています。