金融政策を決める9月のFOMCが終わった先週の後半から、アメリカでは長期金利(10年国債利回り)がスルスルと上がっています。
長期金利が上がってしまうと割高な株が下がりやすくなるので、投資家によっては警戒が必要です。
この記事では、最近上昇し始めている長期金利について今考えていることを書いていきます。
この記事のポイント
- アメリカではハイテク株がやや売られている。背景にあるのは、長期金利の上昇(金利が上昇すると割高株は売られる)。
- もしも、この傾向が続くなら長期金利は1年以内(2022年半ば頃まで)に2.3%くらいまで上昇する可能性がある。
- 直近では2021年3月に見られたような展開。ハイテク株は上昇しにくく、ダウが上がりやすい。
長期金利の上昇の背景
最近のアメリカで長期金利の上昇ですが、背景にあるのは恐らく9月のFOMCだと思います。
>>9月FOMCは無事に通過。気になったのは2024年の金利見通し。
今月9月にFOMCメンバーの政策金利の引き上げ見通しがまた前倒しされたので、その市場の投資家が反映して長期金利が上昇しているように見えます。
そして、投資家が政策金利の前倒しを意識していることは、データからもわかります。
市場の予想では、ひょっとすると2022年9月にも利上げがあるかもと考えているようです。その確率は47%にまで上がってきて、あとひと押しで確率50%超えのところまできています。
以前の予想よりも早く政策金利の引き上げが起こりそうだと予想を前倒しする中で、長期金利も上昇したように見えます。
今回の長期金利の上昇時の株式市場の動き
以前このブログでは、「市場も予想を前倒しする時に株価は少しギクシャクするかもしれない」と言っていたように、米国株にも少し動きが見られています。
この記事を書いている9月27日のニューヨーク市場は、割高な銘柄が多いナスダックが少しばかり下げています。
ナスダックの下落率はそれほど大したことはないのですが、興味深いのは下落している銘柄と上昇している銘柄の内訳です。
この日のS&P500を見てみると、銀行・保険・石油・化学の株が上昇しています。
この値動きを覚えている人はいるかも知れませんが、今年2021年2月から3月頃に見られた長期金利が上昇したときに見られた動きにかなりに似ています。
このときも割高なハイテク株が売られて、銀行株や石油株が買われる動きが見られました。(以下の記事参照)。
【続編】再び市場の動きから金利上昇に強い銘柄を探していく。
3月3日の市場では金利が上昇して株価が下がりました。金利の上昇による悪影響を受けやすい銘柄、受けにくい銘柄をこの日の市場の動きから見て行きます。
今後の長期金利の予想
FOMCの政策金利見通しの前倒しを受けてアメリカの長期金利が上昇していること、それが米国株にも影響が出ていることを書いてきました。
株にも影響が出ているとなると気になるのは、アメリカの長期金利は先週からの上昇で一段落しそうなのか、まだしばらく続くのかです。
あくまでも私の予想なのですが、来年以降に政策金利の引き上げが待っていることを考えると、1年程度は長期金利が上昇しやすい期間が続くだろうと思っています。
当たるかどうかは自信はないですが、2022年夏までに最大で2.3%程度まで上昇してもおかしくないと考えています。
前回の2016年の政策金利の引き上げ前後では、長期金利は2年間かけて上昇しました。
今回、アメリカの長期金利は2020年7月に底を打って既に上昇に転じているので、2022年7月頃までは長期金利が上がりやすいと思っています。
そして、上のグラフのようにテキトウに線を引いてみると、だいたいこの時の金利は2.3%です。
2022年夏に2.3%に達しても、それ以上の金利上昇は難しい。
予想通りに2022年に2.3%まで長期金利が上昇したとしても、それよりも更に上昇するのは少し難しいとおも思っています。
2022年夏に2.3%まで上がると、1980年代後半から続いている長期金利の下落トレンドに押し戻されると可能性が高いからです。
下図は過去40年分のアメリカの長期金利をグラフにしたものですが、以下のように下落する紫の線の間を上下してきました。
逆にもしも万が一(確率はかなり低いですが)、超長期の下落トレンドの壁を超えて金利が上昇するしてしまう場合には、40年間の下落トレンドがついに終わりを迎えて、今後何十年も長期金利が大きく上昇することになります。
最後に、長期金利の動きをふまえて今のところ私が考えていることを箇条書きにします。
- 米国株:ハイテク株はしばらく動きは鈍いかも。ナスダックよりも、金利上昇で金利収入が増える銀行株を抱えるダウのほうが動きが良さそう。
- とくに銀行株・石油株:2021年の夏は春先の勢いが失速したが、これから金利が上昇すれば再び株価が上昇するかもしれない。
- 国債:10年国債利回りは上昇しやすく、2022年半ばに2.3%くらいまで上がるかも。ただし、それ以降は利回りは下落(価格は上昇)するはず。
- ゴールド:投資のタイミングはまだ。2022年後半に長期金利が下落したら、買っても良い。