6月のアメリカの消費者物価の発表があり、予想以上に鈍化していることが示されました。
インフレ抑制はとても順調だと思います。
ただ、それにも関わらずFRBはまだ金利を引き上げようとするなら、一時期にでも低インフレやデフレの状態になる心配をしたほうがいいかもしれません。
この記事のポイント
- 6月のアメリカの消費者物価は予想以上に鈍化した。食品やエネルギー価格を除いたコア指数でも鈍化見られた。
- 注目していた住居費も前月比の伸びは鈍化したが、まだ高い。今後も住居費の伸びは鈍化が見込まれ、コア指数は鈍化傾向をたどる。
- 住居費を除いた消費者物価は前年比0.7%を記録している。(一時的にしろ)低インフレやデフレに陥る恐れすらある。
アメリカのインフレは順調に鈍化へ
6月の消費者物価は、予想以上にインフレ圧力が低下していることがわかりました。
FRBのインフレ抑制はうまくいっているように見えます。
- 前月比:0.2%(予想:0.3%)
- 前年比:3.0%(予想:3.1%)
変動の大きい食品やエネルギーを除いたコア指数でも予想以上にインフレは鈍化しています。
- コア前月比:0.2%(予想:0.3%)
- コア前年比:4.8%(予想:5.0%)
下図に近年のコア指数の前年比のグラフを載せましたが、ちゃんと順調にインフレ鈍化トレンドに入ったような動きを見せています。
消費者物価のコア指数は、しばらく年率5%前後の伸びが続いていましたが、6月にようやくこの高止まりしている状況から脱却できたようです(下図)。
住居費の伸びはまだいくらか高い
ただ、6月のインフレ鈍化が起こった原因は、大きなインフレ鈍化を期待してた住居費ではなさそうです。
もちろん、住居費の伸びも鈍化が見られましたが、まだ比較的大きな伸びが続いています。
細かく調べてみると、6月の物価を押し下げたのは中古車と航空券の価格の低下だったようです。
これからアメリカの住居費の価格の伸びはもっと鈍化するはずだと思っているので、消費者物価のコア指数は今後もしばらく(2023年内くらいは)安定して鈍化すると思います。
低インフレやデフレの懸念
インフレ率が予想以上に低下していることは良いことなのですが、そろそろ懸念しなければならないことがあります。
このままいくとインフレ率が目標2%を大きく下回る恐れがあることです。
先月の記事でも書いたように、アメリカの消費者物価指数を押し上げているものは住居費の項目です。試しに、住居費を除いた消費者物価を見てみると、下図のようにすでに低インフレ状態に陥っていることがわかります。
この消費者物価の住居費は、世の中の住宅価格や賃貸価格に比べて反応がかなり遅いです。世の中の動きに合わせて、住居費はこれから大きく伸びが鈍化することが予想されるので、それならアメリカの消費者物価は目標の2%を大きく下回る展開になるのではないかと思います。
個人的な考えでは、すでにアメリカは利上げの必要がなくなったと思っているのですが、FRBの高官たちは今月もまだ利上げをすると見られています。
これ以上に利上げをすれば、インフレ抑制をやりすぎて低インフレやデフレの懸念も始めないといけないと思っています。もしも低インフレやデフレとなれば、株よりも国債が買われると思います。