10月の雇用統計が発表されましたが、結果は良かったです。
前月までは雇用の伸びが小さくなって少し心配していたのですが、10月はアメリカはやや盛り返したようにも見えます。
これは昨日書いた以下の記事とも一致します。
しかし、今回の雇用データからは強い景気と同時に、強いインフレが続く気配も感じました。高すぎるインフレは景気に逆風が吹くので、やはり少し気になります。
市場の反応を見ると、長期国債が買われるなど景気が悪くなる方向に備えているように見えるのも不気味です。
今のアメリカは景気はよく株もよく買われてますが、先を見通す悲観的な債券投資家の一部では、やがて来る景気の鈍化にも備えているというのが、今の状況のように見えます。
この記事のポイント
- 10月は雇用者数の増加ペースが上がり、失業率も4.6%にまで下がった。景気が回復していることを示している。
- しかし、景気は良いのに労働参加率は低いままで、人手不足は解消されていない。そのため、平均時給は高い伸びが続いてインフレが続く気配が見られる。
- 今は景気が良いが、先行きを警戒している一部の投資家は景気の鈍化に備えて国債を買い増しているように見える。
好調だった雇用統計
10月の雇用を見ていると、「今のアメリカの景気はまだ好調」でも「インフレも圧力も高いな」と感じます。
- 非農業部門の雇用者:+53.1万人(予想+45万人)
- 前回:+19.4万人から+31.2万人へ上昇修正
- 失業率:4.5%(予想4.6%)
- 平均時給:前年比前月+0.4%(予想0.4%)
雇用者の増加ペースは10月に加速しています。前回の結果は上昇修正されて31.2万人増だったというアナウンスがありましたが、それよりもさらに10月は雇用者が増えています。
さすがに一時的ほどの雇用者の伸びはありませんが、この8月と9月に新型コロナの影響で雇用の伸びが鈍化していた頃に比べると、景気は盛り返したようです。
依然として高いインフレ圧力
しかし、少し気がかりなのは、相変わらずインフレ圧力が強いようにみえることです。
新型コロナウイルスで仕事を失った人が、まだ仕事探しを始めていないのか、人手不足で賃金が上昇している動きが見られます。
次のグラフは、今のアメリカの労働参加率(働ける人のうち、既に雇用されているか職探しをしている人の割合)ですが、コロナ前の水準を大きく下回っています。
これを見る限り、コロナで職を失った人の多くはまだ労働市場に戻っていません。
アメリカは景気が強い一方で労働者の数は増えていないので、今は企業の多くが人手不足になっています。
企業は賃金を引き上げてでも人を確保する動きが見られているのか、平均時給は高い伸びを示しています。
上のグラフを見る限り、最近のアメリカの賃金は年率4%以上で伸びていることがほとんどです。
賃金が4%超えで上昇しているうちは、インフレ率が目標の2%を大きく上回っても不思議ではありません。まだまだアメリカの高いインフレ率は続く気がしてます。
市場の反応はいまいち
今回の雇用統計では、予想外に雇用者が増えて失業率も低下しましたが、一方で依然として高いインフレが続く気配を感じました。
投資家はどのような動きをしているのかを知るために市場を見てみると、米国株は特に目立った動きはありませんが、債券市場で長期の米国債が買われて利回りが低下する動きが見られます。
以下のグラフは10年米国債利回りの動きですが、最新の利回りは大きく低下しているのがわかります。
今のアメリカの景気は良くても、一部の警戒心が強い債券投資家は景気の低迷時に強い国債を買い進めて、景気の減速に備えているのかもしれません。
わたしはこれからまだまだ10年国債利回りは上昇するものだと思っていました。なので、この1週間ほどの国債利回りの動きは少し驚いています。
まだ最近見られている長期国債の利回りの低下は一時的な可能性もありますが、これが継続する動きなら投資に影響するので、注意してみてみたいと思います。
例えば、インフレ率が高いまま10年国債利回りが低下を続けるなら、ゴールドにとっては良い投資の機会になるはずです。