11月のアメリカの小売売上高が発表されましたが、結果はあまり良くなかったです。
このままいけば、おそらく月末に発表される個人消費のデータも良くない数字になると思われます。
そもそも前月が良すぎた反動もあるのでしょうが、アメリカの景気拡大の勢いが2021年10-12月にピークをつける兆候が見られたのかどうかを気にしています。
もしも景気拡大ペースが落ちる局面に入ったのなら、私が2021年半ばから伸びることをずっと期待していた生活必需品株などへの投資が今度こそ強さを取り戻すかもしれないと思っています。
この記事のポイント
- アメリカの11月の小売売上の伸びは予想を大きく下回った。
- クリスマス商戦が10月に前倒しされたことが低迷の原因だが、コロナ流行時から増えていたアメリカ人の余分な貯蓄がほとんど残っていないことが関係している恐れもある。
- 10-12月期でアメリカのGDP成長率がピークをつけるなら、今度こそ生活必需品などに資産を振り向けてもいい頃だと思う。
伸び悩んだアメリカの小売
まず11月の小売売上高の前月からの伸びを確認してみると、予想+0.8%に対してわずか+0.3%と低迷していることがわかります。
- 予想:前月比+0.8%
- 結果:前月比+0.3%(前回+1.8%)
前回は絶好調で+1.8%だったので、そもそも前月が強かった反動が11月の伸びの鈍化につながっているとも取れますが、その鈍化は予想以上だったようです。
上のグラフは前月比の成長率にはインフレの伸びも含まれてしまっているので、インフレで売上が伸びた分を除いて純粋に成長分だけ見てみると、下のグラフのようになります。
先日の記事に書いたように11月はインフレ率が高かったのですが、その一方で小売の伸びはいまいちだったので、インフレ調整後の小売売上はマイナス成長に落ち込んでしまっています。
小売上伸び悩んだ原因
11月に小売売上が低迷した背景は次の2点です。
- クリスマス商戦が10月に前倒しされ、消費の息切れが起こった。
- コロナ流行時から蓄えていたアメリカ人の貯蓄の余剰分がほとんど残っていなく、活発な消費を続ける力が残っていない。
今年は船便や航空便などで供給遅延が起こっているので、輸入品のおもちゃなどがクリスマスに間に合わなくなることを心配した小売店が10月から前倒してクリスマス商戦を展開していました。
その影響で10月は小売が好調だった一方で、11月にやや息切れが起こっている模様です。
また、2020年春のコロナ流行時から現金給付の効果もあってアメリカ人は貯蓄をいつもよりも多めに蓄えを持っていましたが、それが無くなってきて消費の余力があまり残っていないことが11月の低迷につながっている恐れがあります。
この2点はすでに1ヶ月前の記事にも書いたのであわせてご覧ください。
>>好調だった10月のアメリカの小売と、それが長続きしない理由。
アメリカの景気はピークをつけたのか
ここまで11月の小売が予想ほど伸びていなかったことについて書いていきました。
その原因がクリスマス商戦の息切れだけなら小売の伸びが今後再び増加する可能性がありますが、気になるのは消費の余力が残っていない場合です。
余分な貯蓄がなくなった場合には、借金をしないかぎり毎月の平均賃金の伸びでしか消費は増えていきません。最近のアメリカの平均賃金の伸びは毎月0.3%〜0.4%ですが、これでは消費物価の伸びに負けてしまいます。
アメリカの人々はクレジットカードのリボ払いや借金をして消費をすることを考えると、すぐに消費が冷えることはないと思いますが、アメリカの景気のピークが過ぎた可能性も考える必要があります。
アトランタ連銀が公表しているGDP成長率予想(GDPNow)を見てみると、10-12月のアメリカのGDP成長率は7.2%とかなり好調ですが、ここでピークをつけて成長率が低くなる可能性は少なくないと思います。
景気の判断にはまだ数か月時間が必要ですが、景気がピークをつけたと考えるなら有望なのは素材、医薬品株、生活必需品株、石油株などの景気拡大終盤に伸びる銘柄です。
これらの業界からインフレにも強い銘柄を探すのも良いかなと思っています。