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米サービス業の景気悪化サプライズと雇用統計で動いた1月6日の市場

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昨日のNY市場は大きく上昇しました。

注目度の高かった雇用統計に株価が反応したというよりも、多くの投資家が気を止めていなかった12月のサービス業の景気指数が急激に悪化したことで株価が動き出したように見えます。

製造業に続いて12月にサービス業も景気悪化に転じたことで、市場の投資家たちは「2023年に金融引き締めができる余地は大きくない」と考えたようです。喜んだ株式投資家は株を買い、債券投資家は景気後退に備えて国債を買ったようです。

この記事のポイント

  • 注目後の高かった雇用統計は無事に通過した。一方で、予想外に景気悪化に転じた12月の米サービス業を見て市場は反応した。
  • 製造業だけではなく、サービス業も景気悪化に転じたことで金融引き締めに耐えられるほど景気は良くないとの認識が広まり、株も国債も大きく買われた。

雇用統計の結果

まず、投資家が注目していた雇用統計の結果を見ていきます。

  • 非農業部門雇用者数:+22.3万人(予想+20.1万人)
  • 失業率:3.5%(予想3.7%)
  • 平均時給:前年比4.6%(予想4.9%)

数字は予想通り強かったです。失業率は0.2%低下して、再び今回の景気サイクルの最低値に並びました。

ただ、今回の雇用統計で大事な点は平均時給の伸びが鈍化したことでした。この数ヶ月で平均時給の伸びは加速していたのですが、今回の賃金の伸びの鈍化(と前回の賃金の下方修正で)かなり改善したように見えます。

FRBパウエル議長の発言からはたびたび新型コロナ流行前のような賃金の伸びを望んでいる様子を感じますが、コロナ前の賃金の伸びにすこしずつ近づいているようです。

12月米サービス業が景気悪化のサプライズ

ここまで雇用統計の話をしてきましたが、この日、実際に投資家が大きく反応したのは雇用統計ではありませんでした。

市場が大きく上昇するきっかけを与えたのは、ISMから発表されたアメリカサービス業の12月の景気指数(ISM非製造業指数)でした。

この数字が予想外に急落したことで、投資家の間で「アメリカは景気が悪く、金融引き締めを続ける余地は大きくない」という共通認識が生まれたように思います。

  • 予想:55.1
  • 結果:49.6(※50を下回ると景気悪化の水準)

もともとアメリカのサービス業は景気が良いと思われていました。去年からかつての日常を取り戻して人々の消費の関心がモノから体験(サービス)などに変わったこともあって、製造業は景気が悪くても、サービス業が好調な時期が続いていました。

ところが、この日サービス業が景気悪化に転じたというニュースが伝わると、投資家のムードは一変したように思います。

アメリカの景気が弱ければ、投資家を苦しめてきた金融引き締めも長く続けられません。なので、投資家たちは金融引き締めの終わりを感じ始め、1月6日は株も国債も大きく買われました。

この記事を書いてる段階で、市場は2月と3月に0.25%ずつの利上げを予想しています。長いこと苦しんだ利上げはようやくあと2ヶ月のところまで来ました。

それでもまだ株の買い場は来ていない

「金融引き締めがそろそろ終わりを迎えるなら株を買ってもいいのではないか」というのが、株を買っている投資家の考えだと思います。

ただ、これについては私はずっと前から書いている意見をまだ変えていません。つまり、まだ株は買いではないと思っています。

株にはこれから2つの力が働きます。

  • 金融引き締めが終わることで、株価が上昇する力
  • 景気後退が本格化するにつれて利益が悪化し、株が下落する力

下の記事で書いたように、景気後退が起こる時には、利益が悪化して株が下落する力のほうが大きく働くものなので、株はまだ大きく下落する恐れがあると考えています。

>>利上げ停止も利下げも株価を上昇させるが、景気後退にはかなわない

それよりも、金融引き締めで下落圧力がなくなり、企業利益の低下も関係ない米国債に投資したほうが2023年を通じて安定して高いリターンが出せると思っています。


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