株価に関する理論
突然ですが、株価って何で決まるか説明できますでしょうか。
今日は株価の式を2つほど紹介します。1つは株価収益率PERを使った式、もう1つは割引率を使った式です。
1つ目は知っている人も多いと思いますが、2つ目の割引率のほうはあまり知られていないのではないでしょうか。でも、低金利になると株価が上がる理由などもこの式から説明できるので、知っておいて損はないです。
この記事では、2つ目の割引率の式をメインに「割引率とは何か」「なぜ低金利になると株があがるのか」の仕組みを説明します。
わりと分量の多い記事になるので、割引率の式について結論から言います。
株価は割引率を使って、以下で表せます。
(株価) = (リターン) / (割引率)
低金利になったときには、企業は借金の返済負担が減って積極的な投資ができるようになり、リターンが増えます。また、低金利になれば割引率も小さくなるため、分子・分母ともに株価を大きくする変化が起こるために株価が上がります。
その仕組を知りたい人は、以下記事を順におってお読みください。
PERを使った株価を求める式
株価の仕組み説明する式はいくつもありますが、一番有名なのは、企業の利益の数倍〜数十倍をすると利益になるという次の式です。
(株価) = (一株あたりの利益) * (株価収益率PER)
この時、株価が利益の何倍になっているかを説明する数字は株価収益率(PER)と呼ばれます。このPERは、企業によっても、その年によっても変化してしまうのですが、一般的に高すぎる場合には買われすぎ、逆に低すぎる場合には売られ過ぎを表します。これはを知っている人も多いと思います。
- 利益が出ている会社の株価は、利益の何倍かが株価になる。この時の倍率は株価収益率PERという。
- PREが高いと買われすぎ、PERが低いと一般的には売られすぎていることを表す。
割引率を使った株価を求める式
これだけでも十分投資はできるのですが、投資家としてもう少しだけレベルアップしたい人は、次の式も覚えておくと、考えに深みが出て楽しいです。
(株価) = (リターン) / (割引率)
なんか、難しそうな言葉が並んでいますね。順におって説明します。
上の式で、「リターン」という言葉を株主がもらえる「配当」に置き換えているモデルだったり、いやいや企業のキャッシュ・フローこそ重要なのだと「キャッシュ・フロー」に置き換えているモデルなど流派がいっぱいあります。要は毎年株主が手にする資産なのですが、面倒なのでこの記事ではこれらを総称して、曖昧な「リターン」という言葉に置き換えてしまいます。
問題は、「割引率とは何か」です。ちょっと具体例を上げて説明します。
割引率とは
突然ですが、お金を貸してほしい言っている友人が2人いて、1人は今すぐATMでおろして確実に1万円返してくれる人と、1年後にもしかしたら1万円返すと言っている人がいたら、どちらにお金を預けますか?
金額が同じなら、今確実に1万円を返してくれる友人ですよね。1年後にもしかしたら1万円返す人でいいという人とは、なんだか友達になれそうな気がします。今すぐ私に連絡をください。
これでわかるのは「1年後もしかしたら返される1万円」は、「今の1万円」よりも価値が少ない(割引される)ということです。
次に、今すぐATMでおろして確実に1万円返してくれる友人と、1年後にもしかしたら1.3万円返すと言っている友人がいたらどうでしょう。
もし悩むようなら「今の1万円の価値」と「1年後に友人から返してもらえるかも知れない1.3万円」は同じ価値を持っていることになります。
つまり、この友人から返してもらえるかも知れないお金の価値は、1年間で30%(0.3)も価値が減ることがわかります。この0.3が割引率です。
(今手にできる1万円) = (1年後1.3万円のリターン) / (1 + 割引率0.3)
- 1年後もしかしたらもらえるお金は、今すぐもらえるお金よりも価値が低い。
- 割り引かれる価値の割合を割引率という
割引率を使った株価の式
株を買うとは「今お金を出すから、(もしかしたら)毎年リターンをくれる」権利を買うことです。なので、今出すお金(株価)は次のように求められます。
(株価) = (1年後リターン) / (1 + 割引率r) + (2年後リターン) / ((1 + 割引率r)の2乗) + ... + (3年目以降も無限に続く)
このままの式ではとても難しすぎるので、「毎年得られるリターンは同じ」と前提を置いてこの無限の足し算を、高校数学の数列の公式(無限等比級数)を使うと、次のようにスッキリできます。
(株価) = (リターン) / (割引率r)
これが割引率を使った株価の式です。
- 株価はリターンを割引率で割った値で求められる
ちなみに「毎年得られるリターンは同じ」という前提は不自然では、という指摘はもっともです。リターンの成長率gが一定という前提をおいた場合には次のような式になります。が、面倒なので上の式でよいと思います。
(株価) = (リターン) / (割引率r - 成長率g)
(※注意:r>gが成り立つような低成長企業ではないとこの式は成り立ちません)
金利が下がると割引率も下がる
当然ですが、割引率は友人によって異なります。親友がいう1年後に1.3万円返すという言葉と、借金まみれでよくわからない人の1年後に1.3万円返すの意味が同じな訳ありません。
絶大な信頼をおける友人は割引率が低く、返済能力に不安がある友人の割引率が高いです。
世の中で一番返済能力が高いは国です。それに比べてたら企業の返済能力には不安があるので、よく企業の割引率は一番返済能力が高い国の割引率(国債金利)を基準にして、次のように分解されます。
企業の割引率 = (国債の金利) + (国債と比べた時の企業の返済能力の危なっかしさ(リスクプレミアム))
株価の割引率ではよく10年国債の利回りが使われます。ただ、この式で一番重要なのは、国の金利が下がると割引率も下がると言うことです。
- 国債の金利が下がると、株(企業)の割引率も下がる
低金利ではなぜ株価が上がるか
すでに冒頭で結論を出していましたが、最後にもう一度次の式を眺めると、低金利で株価が上がる理由がさきほど以上にしっくり見えてくると思います。
割引率という考え方をつかって、株価を将来何十年にも渡って返してもらえるリターンの合計と考えると、株価は次の式で求められることがわかりました。
(株価) = (リターン) / (割引率)
まず、分子のリターンについて見てみると、低金利になったときには、企業は借金の返済負担が減って積極的な投資ができるようになりリターンが大きくなるので、株価も大きくなることがわかります。
次に分子について見てみると、上の説明どおりなら低金利になれば企業の割引率も小さくなるので、分子は小さくなります。分子が小さくなるということは、結果的に株価を大きくすることに繋がります。
よって、低金利になると分子・分母ともに株価を大きくする変化が起こるために株価が上がるようになります。