都市封鎖を解除しても景気低迷が続く理由。

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アメリカでは、新型コロナウイルスの対策で発令した外出制限を解除するための議論が進んでいるようです。

「やっと経済が再開できる光が見えてきた」と安堵が広がる一方、都市封鎖解除後も景気の低迷は長期化すると見る専門家も多いです。

この記事では「なぜ経済活動を再開しても、景気の低迷が長期化する恐れがあるのか」について考えていきます。

この記事のポイント

  • 都市封鎖を解除しても、通常はすぐに景気は回復しない。現金が枯渇する国民がいた場合に、都市封鎖解除後に消費を元通り再開できないため。
  • これを防ぐために「政府が国民に給付金を配る」という手がある。実際に、アメリカや日本でこの方法が採用されている。
  • 給付金のメリットは景気低迷期を短くでき、株などの資産価格が上昇すること。逆にデメリットは長期的にインフレ率が上がりやすくなる土壌が出来てしまうこと。

都市封鎖を再開してもすぐに景気が回復しない理由

新型コロナウイルス対策の都市封鎖が解除されても、すぐに景気が元通りにならない仕組みは、簡単な小さな街を考えてみるとわかります。

ここではAさんとBさん2人しかいない街を考えます。次のような前提をおいたときに、この街で都市封鎖の解除前後で消費額(GDP)がどのように変化するのかを見てみましょう。

前提

  • 世の中にはAさんとBさんの2人しかいない。お互いに最初から100ドル持つ。
  • AとBは互いのお店で商品を毎月$100ずつ購入し、経済を回す。
  • Aさんのお店は新型コロナウイルスで一時閉店するが、Bさんのお店は開店を続ける。(※Bさんのお店はスーパーやコンビニのような生活必需品店だと仮定)
  • 一定期間したら、都市封鎖が解除されてAさんの店も再開する。

上記の前提で「通常時」、「都市封鎖時」、「封鎖解除後」、「通常時」の4段階を経て、この街のGDPがどう変わるかを追いかけたのが下図です。


都市封鎖をした場合にはGDPが減ってしまうのは予想通りだと思いますが、ポイントは封鎖解除直後もGDPが元通りの水準に戻らずに停滞が続くことです。

都市封鎖解除後もGDPの低迷が長引く理由は、都市封鎖でAさんが店を閉めている時でも、開店しているBさんのお店で買物をするので、手元に現金がなくなってしまうためです。そうなると、都市封鎖が解除されても、Aさんは買い物をするお金がなくなるので、消費(GDP)がすぐには元通りにもどらなくなります。

このことから、都市封鎖時にAさんのように収入が絶たれて現金が枯渇するような国民がいた場合には、景気回復に時間がかかることがわかります。

この他、経済がすぐに回復しない理由に、「新型コロナウイルスの流行の第2波が訪れて再度経済活動がストップする可能性があるため」や「治療薬やワクチンが普及していない状態では、人々が警戒して以前のように街で買い物しない」などの理由もあります。

が、この2つの理由はすぐに理解できると思うので、詳細は割愛します。

政府給付金が十分にある場合の景気回復


さて、都市封鎖後に景気をいち早く回復させるためには、Aさんのような現金が枯渇する人を減らす事が重要だとわかりました。

これがわかると、アメリカや日本で休業補償や全国民に給付金を出している目的は、Aさんのような人を減らして景気回復を早めるためとだと理解できるようになります。

政府の給付があれば景気回復が早まるのかを、先程のAさんとBさんの小さな街で検証してみます。

追加の前提条件

  • 都市封鎖時に国民の現金が枯渇しないように、政府が100ドルずつ給付金を出す。

都市封鎖時に政府が100ドル配る場合は、以下の図のように総消費(GDP)の低迷期が1つだけになり、早く景気回復することがわかります。

今回の場合は、封鎖期間中に政府が全員に100ドルずつ給付金を配るので、Aさんの現金が底を尽きることもありません。その結果、都市封鎖が解禁された後に、GDPはすぐに元の水準にまで戻ることが出来ました。

上の例では、わかりやすく政府の給付金で考えましたが、Aさんの現金が封鎖解除後に枯渇しなければ、やり方は何でも構いません。

世の中の現金の量が増えることの影響

さて、政府が給付金を出した場合の図(同じもの)をもう一度以下に掲載します。今後は、AさんとBさんの現金の合計金額が200ドルから400ドルに増えていることに、注目してください。

さて、Aさんの手元の現金はいつも100ドルですが、Bさんは都市封鎖を経て現金が300ドルに増えました。Bさんは毎月100ドルしか買い物をしないのですが、この場合余った200ドルは一体どうなるでしょう。

このブログを読んでいて投資に興味がある人はお気づきだと思いますが、こうして余った現金は投資に回ります。アメリカの現金の総量を見てみると、2020年2月末から4月にかけて急増しているので、余った現金が投資に回る現象が起こる(もしくはすでに起こっている)はずです。

2月末からアメリカの現金・預金(M1)の合計額は急増

2020年の今は新型コロナウイルスの都市封鎖で景気はどん底ですが、数ヶ月から1年程度で景気の底を抜け出せば、カネ余りで発生した投資資金と景気回復の上昇気流で、株が上昇する環境が整いつつあると思います。

一方で、世の中の現金が増えることのデメリットは、インフレが進みやすくなることです。数%程度のインフレなら株にとってプラスなので歓迎ですが、極度なインフレは株のリターンも下げるので注意が必要です。

ただ、米国株の研究で有名なジェレミー・シーゲル教授は、2021年、2022年、2023年に3-4%程度で比較的マイルドなインフレで収まると考えているようなので、個人的にはこの展開を希望します。

>>>Professor Siegel On The Markets(April 20, 2020)

カネ余りの影響

  • メリット:世の中のお金が投資に回るので、株などの資産が上昇する。
  • デメリット:インフレ率が上昇しやすくなる。

まとめ


以上のことから、今後アメリカの経済・市場でどのような動きがありそうか、私なりの考えをまとめておきます。

  • 【現状分析】:都市封鎖を解除しても、現金が枯渇する国民が出てくれば、景気回復には時間がかかる。だからこそ、米政府は迅速に大規模な給付金が配った。
  • 【課題】:問題は、現金が枯渇する国民をどれだけ防げるか。封鎖期間に対して給付金が十分か、封鎖後にスムーズに失業者が職につけるかどうかが今後のポイント。
  • 【短期的なリスク】:都市封鎖解除後のスムーズな経済活動再開に失敗すれば、景気の低迷は長期化して、短期的には(20年-21年年初は)株価がさらに下落する恐れもある。
  • 【中期的展望】:既にアメリカはカネ余りの状態になりつつあるので、景気が底打ちしさえすれば、数年間は力強い株高になる可能性がある。
  • 【長期的なリスク】:長期的にはインフレが進みやすくなっていることに警戒。FRBが利上げをし始めたら上昇するインフレを抑えようとしているサインなので要注意。ただし、現時点では原油安でデフレに近い状況なので、インフレはあくまでも長期的に薄く長い警戒で十分。

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