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2021年4-5月にアメリカで物価が上昇率が大きくなる理由とその影響

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あと数ヶ月で、アメリカで新型コロナウイルスが流行してから約1年間が経とうとしています。

経済の回復はまだかなり鈍いですが、このままかなり低調な経済が続いたとしても消費者物価(インフレ率)は21年4-5月にも前年比で2%を超えると私は思っています。

ワクチンの効果で新型コロナウイルスの収束が見え始めたり、アメリカの新政府が財政支援(景気刺激策)を打ち出したら、一時的に前年比3%超えも十分ありえるはずです。

この記事では、なぜ2021年4-5月に物価が上昇するのかを書いていきます。

この記事のポイント

  • アメリカの消費者物価(インフレ率)は21年4-5月、前年比で2%後半から3%を超えるほど大きくなる。その理由は、前年4-5月にアメリカはコロナで経済が停滞していたためで、今年の景気が特別良くなくても「前年比」では物価がかなり上昇しているようにみえる。
  • 一時的でも、物価上昇率が3%を超えることになった場合、長期金利が今の1%のまま維持できるかは疑問。長期金利が上昇してしまった場合、コロナで業績を伸ばしたアマゾン、ネットフリックス、ズームなどは特に株価を下げやすい。21年前半は物価と長期金利に注意が必要。

4月から5月にかけて消費者物価が急に上がる理由

今年の景気が特に良くなくても4-5月に消費者物価は前年比で大きく上昇すると書きましたが、そのカラクリは前年の大きな低迷です。

昨年4-5月のアメリカは新型コロナウイルスで経済が大きく停滞していたので、今年の4月と5月は特に景気が良くなくても「前年比」なら簡単に物価上昇率が2%を超えられるのです。

試しに、今後毎月0.1%ずつ(年率1.2%)の低調なペースで物価が上昇した場合の物価上昇率をグラフ化してみましたが、この低調なペースでも4-5月には前年比で一時期3%に迫るほど物価上昇率は高くなりました。

低調な前年の反動で21年4-5月の消費者物価は高い数字が予想される

ワクチンの効果で新型コロナウイルスの収束が見え始めたり、新たな景気刺激策が打ち出された場合には、これ以上にインフレ率は大きくなると思われます。

FRBはこの動きを想定済み

「急激にインフレ率が上昇したら、中央銀行のFRBは今まで株価を支えていた金融緩和を縮小しはじめて、株価に悪影響が出てしまうのでは?」と思われるかも知れません。

ただ、FRBはこの動きをすでに読んでいるようです。

だからこそ2020年のうちから「インフレ目標は2%」ではなく、「平均的にインフレ率2%を目標とする」と変更して、一時的に2%を大きく超えてもそれまでは金融緩和を続ける方針を打ち出してきました。

『平均的にインフレ率を2%』とはわかりにくいですが、一部のFRBメンバーの言葉を借りるなら、年間通じてインフレ率が2%を超えることを言うようです。

>>クラリダFRB副議長、年間2%インフレ達成までは利上げを否定(ブルームバーグ)

たとえば、先ほど上で見たようなグラフのような場合には2021年12月には物価上昇率が1.2%なので、金融緩和はまだ継続するということになります。

まるで「2021年4-5月に一時的に2%超えのインフレが起こっても、すぐには金融緩和はやめないから安心してください」と言っているかのようです。

今まで金融緩和の恩恵を受けて、株高になっていた米国株投資家にとっては安心できる材料です。

関連記事:

インフレ率が上昇しても市場は動揺しないのか

FRBは先を読んで既に手を打っていますが、4月と5月のインフレ率が急上昇した場合に、投資家は短期的にでも動揺しないのでしょうか。

もっと具体的には4月分と5月分の消費者物価のデータが公表される5月や6月に「インフレ率が3%超えです」という大きな数字を目の前にして、それでも投資家は1%程度の10年国債利回りの保有を続けたいと思うでしょうか。

このまま国債を保有をしていると2%分だけ損をしてしまいます。この物価上昇率の3%という数字が一時的だったとしても、売りたいと考える投資家が出てきても。不思議ではありません。

教科書どおりの動きになるなら、国債が売られれば長期金利が上昇して、長期金利が上昇したら株価は下がります。私は2021年前半はコロナ流行による景気悪化と5-6月の物価上昇による影響で、米国株はやや下がりやすい環境にあると思っています。

この流れで株価が下がるとしたら、特に注意が必要なのはアマゾン(AMZN)、ネットフリックス(NFLX)、ズームビデオ(ZM)などコロナで業績を伸ばした企業です。

2020年にこれらの株は以下のような理由で株価が上昇しました。

2020年にアマゾン・ネットフリックス・ズームの株価が上昇した理由

  • コロナで多くの企業の売上が急落する中、売上を上昇させた数少ない企業に投資家の注目が集まった。
  • 低い長期金利(10年国債利回り)の影響を受けて、かなり割高になっても株価がさらに上昇した。

しかし、これと全く逆の現象がこれから起こるかもしれません。

2021年にアマゾン・ネットフリックス・ズームの株価が下落しやすい理由

  • 前年が好調だった分、今年の4月以降は前年比成長率が伸び悩む。
  • 一時的でも長期金利(10年国債利回り)が上昇してしまうと、高い株価を維持できなくなる。

そして市場の投資家はかなり先を見越すのが得意なので、すでにこうした銘柄は他の銘柄よりも買われにくくなっているようにも見えます。

さいごに


この記事では2021年4-5月に消費者物価が前年比でかなり上昇しやすくなっている点についてお話しました。

FRBはこのインフレ率の上昇を見越して、物価が一時的に大きく上昇したとしても金融緩和を続ける方針を打ち出しているので、投資家もそこまで心配する極度に心配する必要はないと思っています。

しかし、2021年5月や6月に発表される急上昇した物価のデータに反応して、一時的でも国債が売られて長期金利が上昇すると恐れはあるかも知れません。

長期金利の上昇は株価にはマイナス要因です。特に、今までコロナで業績を伸ばしていた企業は株価が下がりやすい点には注意です。


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