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2019年株高を支えたマイクロソフトとアップル。ETFが原因で割高感も

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2019年は株価が順調な年でした。この記事を書いている12月24日の時点で、S&P500の2019年の上昇率は+28%を超えています。

でも、気になることがいくつかあります。市場で一番注目を集めているリスク要因は、増え続ける社債だと思いますが、株に焦点を絞っても、これだけの気になる点があります。

この記事のポイント

  • 2019年年末の割高感は過去の株の上昇局面ピーク時に近づく。
  • 2019年末に株高なのは、一部の大型銘柄だけ。
  • S&P500を牽引したマイクロソフトとアップルは実力以上に買われている可能性がある。
  • 助長しているのはETFの可能性もある。マイクロソフトとアップルなどはETFに高い比率で組み入れられやすいく、企業の実力と関係なしに買われている可能性がある。

2019年株高の背景と理由

2019年はアメリカ株が絶好調でした。これは本当に予想外な展開でした。

2018年12月まで、FRBは「政策金利の上げを続けますよ」「中央銀行が買った国債の処分もやっていきますよ」と株に良くない影響を与えるものを2つも宣言していました。

この2つをFRBは鉄の意志を持ってやりとげるから、2019年の株は下がるだろうなと思っていたのですが、その後半年も持たずにFRBは180度方向転換をしました。

政策金利は引き上げではなく引下げられ、国債も処分ではなく購入に動いています。

FRBのおかげで、2019年は想定外の株高な展開になりました。

割高感が過去の株の上昇局面に近づく

ただ、問題は株価が上がっても、今のところ企業の業績がさほど良くなっていない点です。

株価を一株利益で割り算して、株の割高を図るPERという指標があります。PERをみると、過去の株価の上昇局面に迫るほどです。

S&P500のPER(割高感)
2019年12月現在 24.2
2008年1月リーマンショック前 21.5
2000年1月ITバブル前 29.0
1990年1月景気後退前 15.4

Factsetによれば、2020年は9%ほどの利益の上昇が見込まれていますが、この成長がなければあと20%S&P500が上昇するだけで、ITバブル時と同程度の水準にまで、割高になってしまいます。

2019年は株価の上昇スピードが早すぎました。これから先も、株価が上昇を続けるためには、一度10%程度の下落をして上昇スピードを抑えたほうがいいのかなとすら思います。

株高の銘柄に偏りがある


もう一つ懸念していることは、株高になっている銘柄にかたよりが見られることです。

S&P500等の大型株ETFだけ投資していると「アメリカ株が好調だ」としか見えないのですが、よく見てみるとアメリカ株でも12月に最高値を更新している銘柄はそれほど多くありません。好調なのはマイクロソフト・アップル・P&Gなど大型株で、企業の成長率も10%程度に落ち着いた銘柄ばかりです。

例えば,S&P500と小型株ラッセル2000の値動きを比較しても、S&P500ばかり順調で、小型株は2018年の高値を超えられていないことがわかります。

最高値を更新するS&P500(青線)と2018年の最高値を超えられないラッセル2000(黄色)

FRBが金利を引下げたり、国債を大量に購入して市場の資金をふやしても、市場全体にお金が行き渡っていない歪みの状態が見え始めている気がします。

特に買われているのはマイクロソフトとアップル

さきほど「よく見てみると、アメリカ株でも12月に最高値を更新している銘柄はそれほど多くない」と、随分まどろっこしい言い方をしましたが、端的にいうと2019年のS&P500を押し上げているのは、アップルとマイクロソフトです。

アップルとマイクロソフトの直近3年間の売上成長率は、わずかに6%と13%なのですが、株価はこの1年で80%と56%と驚異的な上げを記録しています。

企業 直近3年売上成長 2019年株価 PER
アップル +6.4% +80% 21
マイクロソフト +14% +56% 29
フェイスブック +46% +52% 22
Google +22% +28% 25

売上が40-50%毎年上昇するフェイスブックなら、この株価の上昇率は分かります。しかし、さすがにアップルとマイクロソフトに株高を期待するのは酷かもしれません。

マイクロソフトとアップルが買われる理由は、サブスクリプションの好調とETFの悪影響

じゃあ、「なぜマイクロソフトとアップルがこれだけ買われるか」ですが、2つ理由があると思っています。

  • サブスクリプション・ビジネスの好調
  • ETFの悪影響

マイクロソフトもアップルも近年は定期購入サービス(サブスクリプション・ビジネス)が好調で、安定した収益が得られることを株主が喜んで高い株価でも買っている可能性があります。その詳細は、以下の記事で解説しています。

サブスクリプション・ビジネスの好調は、マイクロソフトとアップルの良い面ですが、良くない理由でこの2社の株が必要以上に上がっている可能性もあると思っています。

ETFの存在です。

近年、日本の米国株投資家だけでなく、海外の投資家をみてもS&P500に連動したETFなど購入している人を多く見かけます。世の中は、ETF全盛期時代と言ってもいいくらいです。

ただ、S&P500に連動するETFを買うと、必然的にマイクロソフトの株が4.5%、アップル株が4.3%も購入されます。

SP500の上位銘柄 比率
Microsoft Corp (MSFT) 4.50%
Apple Inc (AAPL) 4.38%
Amazon.com Inc (AMZN) 2.79%
Facebook Inc (FB) 1.86%
Berkshire Hathaway Inc (BRK.B) 1.66%
JPMorgan Chase Co (JPM) 1.61%
Alphabet Inc (GOOGL) 1.52%
Alphabet Inc (GOOG) 1.51%
Johnson Johnson (JNJ) 1.44%
Visa Inc (V) 1.21%
Procter Gamble Co (PG) 1.17%

また、マイクロソフトとアップルはS&P500以外のETFにもたくさん、高い比率で組み込まれていることが多く、すでに割高なのにETFが買われることでマイクロソフトとアップルの株が、身の丈に合わない水準まで買われている可能性があります。

私も基本的にはS&P500のETFは優良な投資先だと思っています。しかし、構成銘柄上位に割高感が見られるため、2020年はS&P500のリターンはいまいちなものになると思っています。


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