この記事の要点
2010年代は米国株が目覚ましいリターンを上げた10年でしたが、2020年代は米国株は少し苦戦するかもと思っています。
その理由は2つです。
- (1)2010年代はアメリカの中央銀行FRBの金融政策で、株投資に最適な環境が続いたが、その効果が薄れつつある。
- (2)2020年代のアメリカは、歴史的にも低成長な時代になる可能性がある。
しかし、2020年代に株価が低迷する恐れが高いといって、何も手を打たないのは、大変もったいないです。この低迷期を利用して、保有株数を増やしておけば、次の10年や20年先に株のリターンが回復したときに、ちゃんと報われると思っています。
20代から40代の投資家にとっては、2020年代にちゃんと株資産を蓄えられたかで、今後の人生の豊かさが決まるかもしれません。
2020年代に株価が低迷する理由(1):金融政策の効果が薄れるアメリカ
今までは歴史上にまれにみる低金利や量的緩和で、株投資にとって最高の環境が続いていましたが、すでに日本やヨーロッパでもその効果が薄れているようにアメリカでも今後も効果が見えにくくなると思っています。
リーマンショック後(2010年代)のアメリカで量的緩和などの金融政策がなぜうまくいったのか、それが今後なぜうまくいかなくなるのか、また金融政策が効果をうまなくなった後、なにが起これば再び景気が浮上するのかを書くと、それだけで1つの記事になる分量なので、ここでは詳しく触れません。
詳しく知りたい方はこちらの記事を参照して下さい:
量的緩和について考えたこと。日米欧の経済を見て感じたこと
2020年代に株価が低迷する理由(2):低成長を迎えるアメリカ
2020年代に低成長を迎えると言っているのは、何も私に限ったことではなく、中央銀行のFRBが長期的に今後の成長率は1.9%にとどまるという見方をしています。
過去の100年の経済成長の平均値は約3%程度だったこと踏まえても、1.9%はかなり低調な予測です。
しかし、ほとんど日本のサイトでは取り上げられていないのですが、2019年9月27日の前FRB議長のイエレンさんの発言によれば、FRBが立てているアメリカの成長率予測ですら楽観的なのではないかと懸念するコメントを出しています。
それほど多くを語っていないので情報量は少ないのですが、発言背景と内容はこのような感じです。
- 現在のFRBは今後のアメリカの長期的な経済成長率は1.9%と見ている。
- 過去の100年の経済成長の平均値は約3%程度だったため、1.9%はかなり低調な予測。
- しかし、前FRB議長のイエレン氏は、成長率1.9%でも楽観的だとの見方を示す。その理由は人口動態、教育、生産性の伸びの低さ。
- 人口の伸びは鈍化しており、労働人口の伸びは0.5%程度しかない。(アメリカでは既に女性の労働参加率の急増が、1980年代に起こっている)
- 教育水準は向上しているが、そのスピードは以前ほどではない。
- 生産性の伸びも長年低水準のままだと指摘。
Former Fed Chair Yellen says central bank is being too ‘optimistic’ about US economy(CNBC)
長期的な1.9%の成長も難しいというとのは、個人的には、少し気になっています。成長率が低いと株のリターンも低いというデータがあるからです。
年代毎の経済成長率と株価のリターン
直感的にもすぐにわかるかと思いますが、経済成長率が低くなると株のリターンも低くなる傾向があります。
以下が、年代ごとの経済成長率と株のリターンのデータです。
年代 | 実質成長率 | 米国株リターン |
---|---|---|
1920s | 3.90% | 18% |
1930s | 1.80% | 0% |
1940s | 5.10% | 4% |
1950s | 4.10% | 16% |
1960s | 4.20% | 5% |
1970s | 3.30% | -2% |
1980s | 3.20% | 11% |
1990s | 3.30% | 14% |
2000s | 1.80% | -2% |
2010s | 2.30% | 12% |
この表だとデータの傾向がよくわからないので、グラフにしてみます。以下のグラフを見ると、経済成長率が低いグラフの左側は、株のリターンも低くなっているのがわかると思います。
特に、過去の経済成長率が2%を切っていた時代が、何回かあるのですが、その時代の株のリターンはほぼゼロか、マイナスでした。
年代 | 実質成長率 | 米国株リターン |
---|---|---|
1930s | 1.80% | 0% |
2000s | 1.80% | -2% |
次の10年は大事な仕込みの期間
ただし、株価のリターンが低い年代があることは必ずしもマイナスではありません。
2%を超えて成長できる時代がまた訪れば、再び株のリターンも上がることが予想され、そうすれば株価が低迷していた時代に買っていた株が大きなリターンを生み出すからです。
つまり、次の10年はさらに先の10年や20年で花開くための大事な仕込みの期間になるかなと思っています。
ちなみに歴史を振りかえると2020年代は、1930年代に非常に近い状況になりつつあります。
この1930年代は株にとって非常に厳しい時代でしたが、1941年にアメリカが第二次世界大戦に参戦して、政府が大胆に支出を増やして民間企業が潤ったことで景気脱出をしています。
1930年代では長く続いた株価の低迷期で国債などの安全資産を使って耐え忍びながら、株数を増やした投資家が1940年代以降に報われています。
今後の投資の大方針。米国債を中心に据え、米国株投資の機会を伺う。
2020年代の景気の低迷も戦争が起これば解決されると言っているわけではありませんが、大胆な景気刺激策と金融政策が噛み合えば低迷期を脱却できると思っています。
次の10年はアメリカ株にとって苦しい期間になるかもしれませんが、20-40代でこの時期を迎える投資家にとっては、2020年代の手のうち方が、その後の投資生活を大きく左右することになりそうです。