株のポートフォリオを考えていて、ふと疑問に思ったことがあります。
コカ・コーラやP&Gなどの古くからあるオールドエコノミー企業は「潰れない企業」・「ずっと永続する企業」として分散して保有しているものがあるけど、それならより潰れる恐れが少なくて、米国株市場全体に投資できるETF(例えばVTIなど)を1つ持てばいいのではないか?と。
つまり頭の中で次のような比較表ができあがり、安定性をとっても、リターンをとってもオールドエコノミー企業を複数分散して持つより、米国株全体に投資できるETFでもいいのでは?と考えたのです。
投資スタイル | 安定性 | リターン |
---|---|---|
オールドエコノミー分散投資 | 何十年も潰れない | 1桁後半 |
米国株ETF | オールドエコノミー以上に潰れない | 1桁後半 |
このようにまとめてしまうと、完全に米国株ETFが上位互換になってしまいます。そうなると、コカ・コーラやP&Gなどの昔ながらのオールドエコノミー株を複数保有するメリットはなんでしょうか。
「ん?なにか変だぞ」となります。
熟練の投資家には一瞬で見抜けるのでしょうが、私はしばらく迷いの森に突入してしまったので、実際に過去20年間のデータをつかって、検証してみることにしました。
実施したバックテスト
さて、これから過去20年間の株価データを使って、「オールドエコノミー分散保有」と「米国株市場ETF」の優劣を比較しますが、比較はこんな感じで行きたいと思います。
- 比較対象は「オールドエコノミー株の分散投資」、「米国株市場に連動するETF(シンボル:VTI)」
- オールドエコノミーはコカ・コーラ(KO)、ペプシコ(PEP)、マクドナルド(MCD)、P&G(PG)、ジョンソン&ジョンソン(JNJ)、ファイザー(PFE)、ウォールマート(WMT)、3M(MMM)の8銘柄に均等に投資
- 検証期間は2000年から2019年までの約20年間
- オールドエコノミー分散投資には保有比率調整(リバランス)を年1回実施
さて、実際にデータを使って検証をしようとする時に、昔ならばネットでダウンロードした株価データをエクセルに入力して、式を作って検証していました。しかし、もはや21世紀も20年目に入ろうという時代なので、エクセルは使いません。
PORTFOLIO VISUALIZERという便利な検証ツールが無料で公開されているので、ありがたく使わせていただきます。
使い方はこちらの記事にまとめています:
【超便利】米国株ポートフォリオ検証ツールPortfolio Visualizerの使い方
PORTFOLIO VISUALIZERの中にでもさまざまなツールがあるのですか、今回使用するのはこちらのツールです。
Backtest Portfolio – PORTFOLIO VISUALIZER
条件設定はこのようにしました。
設定したポートフォリオはこちらです。
検証結果
さて、2つのポートフォリオの資産推移から見ていきましょう。
上の図で、青い線がオールドエコノミー分散投資、赤い線が米国株市場ETFの成績を表しています。オールドエコノミーの8銘柄は適当に思いつくままに有名な企業を入れたのですが、米国株ETFを簡単に上回りましたね。
内訳を見てみるとマクドナルド、P&G、3M、ペプシコが米国株ETFを上回っていたようです。マクドナルドは特に好調、逆にファイザーは絶不調でした。
会社名 | 年間成長率 |
---|---|
マクドナルド | 15.54% |
P&G | 9.42% |
3M | 8.98% |
ペプシコ | 8.32% |
米国株VTI | 8.22% |
コカ・コーラ | 7.65% |
ジョンソン&ジョンソン | 7.41% |
ウォールマート | 5.83% |
ファイザー | 3.52% |
続いて、年率リターンや下落率など、主要な数字を拾っていきます。
オールド分散 | 米国市場ETF | |
---|---|---|
投資額 | $10,000 | $10,000 |
運用後資産額 | $46,157 | $40,085 |
年率リターン | 9.09% | 8.22% |
標準偏差 | 10.94% | 14.45% |
年間最高リターン | 26.58% (2013年) |
33.45% (2013年) |
年間最低リターン | -11.21% (2008年) |
-36.98% (2008年) |
最大下落率 | -26.87% (07年12月-09年2月) |
-50.84% (07年11月-09年2月) |
視覚的にはオールドエコノミー分散投資のほうが、リターンがよく見えてしまいましたが、実はそこまでおおきな年間リターンの差はありませんでした。オールドエコノミー分散投資のリターンは9.09%に対して、米国株ETFが8.22%なので、期間によっては逆転していたかも知れません。
一方で、明らかに2つに違いが生まれたのは、年間最低リターンと最大下落率です。
年間最低リターンはオールドエコノミーがリーマンショックは発生した2008年にマイナス11%にとどまったのに対して、米国株ETFはマイナス36%も落ち込んでしまいました。
また最大下落率はオールドエコノミーはサブプライムリーマン・ショック時に約-25%の下落に抑えましたが、米国株ETFは-50%超えの下落に落ち込んでいます。
つまり、先程「安定性」と比較していましたが、下落耐性という視点を導入するとオールドエコノミーは市場平均に勝っていると言えます。
下落耐性に優れるオールドエコノミー分散投資
先程のオールドエコノミー分散投資と米国株ETFの比較の表は、「安定性」という軸が曖昧だったので、「永続性」と「下落耐性」の2つに分けると次のように、ちゃんと一長一短が見えてきます。
投資スタイル | 永続性 | 下落耐性 | リターン |
---|---|---|---|
オールドエコノミー分散投資 | 何十年も潰れない | リーマンショック時-25% | 1桁後半 |
米国株ETF | オールドエコノミー以上に潰れない | リーマンショック時-50% | 1桁後半 |
ちなみに、もしもETFでオールドエコノミーのような安定した資産形成をしたい場合はVDCというバンガードの商品も有るようです。こちらはリーマンショック時の下落率は-29.37%だったので、上のオールドエコノミー分散投資と同じような効果が得られます。